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介護事業所を悩ます「ローカルルール」 ワンルームマンション規制をサ高住に適用した例も

「文書ローカルルール」是正巡り、内閣府で議論

4月27日、内閣府の規制改革推進介護「第7回医療・介護・感染対象ワーキンググループ」が開催されました。

当日、議題のひとつとなったのが「文書ローカルルール」の是正です。自治体(保険者)により書類様式が異なっていることが介護事業者にとって業務効率化の面で大きな課題になっており、その是正が狙いです。

今回は「文書ローカルルール」がテーマとなりましたが、これ以外にも事業所の開設・指定の際の条件面などで、自治体ごとに、ひどい場合は同じ自治体でも担当者ごとにルールが異なることは珍しくなく、複数の自治体にまたがって展開する介護事業者にとっては悩みの種となっていました。

例えば以下のような「ローカルルール」が見受けられました。

サ高住にも住民用駐車場義務化

都内のある自治体では、ワンルームマンションに住む地方出身学生などの中には住民票を地元に置いたままの人が多く、「税金を支払わないのに、ゴミ収集などの行政サービスだけを受けている」という住民がいることが悩みでした。

また、そうした人は、周囲に人が多い場所・集合住宅での生活が初めてというケースも多く、夜中に大きな音を出すなどのトラブル発生も懸念されました。そこで、その自治体が打ち出したのがワンルームマンションの建築規制です。具体的には「ワンルームマンションの新設時には一定数のファミリー用の部屋を併設すること」を条件としました。

そして、そのルールをサービス付き高齢者向け住宅にも課したのです。
確かに、サ高住入居者の多くは1人で部屋に住んでいますが、一般的なワンルームマンションとは明らかに居住実態が異なります。
ワンルームマンション用のルールをサ高住に適用することが果たして正しい判断と言えるでしょうか。

一方、自家用車が生活必需品となっている地方では、マンション新設に際しては住戸数に応じた駐車場を設けることが求められているケースがほとんどです。
ある自治体では、このルールをサ高住に対しても適用し、住民用駐車場の設置を課しました。

しかし、サ高住に入居をしている人が車を所有・運転するとは思えません。
あまりにも実情を無視した杓子定規なルール運用の一例と言えます。

大浴場のカランは3人に1個以上

自立高齢者を対象とした有料老人ホームやサ高住には大浴場があることが一般的です。
首都圏のある自治体では、その大浴場に設置する個人用の洗い場(水道のカラン)の数を「入居者3人に対し1つ以上設置する」という条件を課しました。

理由についてこの自治体は「入浴したいときに『洗い場がふさがっていて利用できない』という事態を防ぐことが目的。社員寮などでの洗い場の設置数を元に数を決めた」と語ります。

しかし、夜仕事が終わって帰宅してから就寝までの短時間に入浴する社員寮と、日中でも入浴可能な時間がある入居者が多いサ高住とでは、浴場の利用が集中する度合いが全然違います。

社員寮と同じ割合の洗い場が必要とは思えません。

最後に、ある自治体ではサ高住の新規開設自体を制限していた、というケースがあります。
サ高住は特定施設や認知症グループホームと異なり、自治体の介護保険事業計画の対象になっていませんので、本来ならば開設自体を自治体で規制することはできません。

しかし、この自治体では「既に十分な量が供給されている」「市民からは特養の新設を求める声は多いが、サ高住を求める声はほとんど出ていない」などを理由に、新設を認めていませんでした。

噂によると、ここの市幹部の関係者が介護事業所を経営しており、そこの利用者が奪われることを懸念したからとも言われていましたが…

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