介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

「うちの職場はだめだ…」 新入社員が会社に見切りをつけるとき

多くの職場で新入社員を迎えたことと思います。
企業にとっては大切な人材であり「ずっと働いて欲しい」と思うのは当然です。
新入社員も厳しく辛い就職活動を経た結果の入社です。「長く働きたい」と思うのが自然でしょう。

しかし、実際には短期で退職する社員もいます。
退職理由としては「ここで長く働くことに価値を見いだせない」が挙げられるでしょう。

今回は「介護・医療業界の新入社員が職場に失望したエピソード」を紹介します。

この職場にいたら「女性としての楽しみ」はゼロを覚悟

大病院に就職したある女性看護師の退職理由は「先輩を見て、自分の女性としての未来に不安を感じた」からだそうです。

「看護の仕事で『女性』を必要以上に前面に出すべきではないことは理解しています。しかし、私はお洒落も恋愛も結婚もしたいと思っています。職場のベテラン看護師の多くが、プライベートでもお洒落や女性らしさには全く無縁で、結婚していないか結婚に失敗しているのを見ると『ここで長く勤めるには女性としての楽しみ・喜びを捨てなくてはいけない』と感じました」と彼女は語ります。

もちろん「結婚が女性の幸せ」「女性はお洒落しなくてはならない」ではありません。
生き方や価値観は人それぞれですし、今は「女性とは…」で物事を語ること自体が性差別です。 

しかし、この病院のように上司があまりにも同じタイプの人ばかりだと「この職場に長くいると、こうなってしまうのか」という印象を新入社員に与かねません。「職場の個性・風潮」と言えば聞こえはいいですが、離職防止の面からは要注意です。

上司の質素すぎる昼食に「給料安いのでは…」

ある介護事業者では、本社に配属された男性新入社員が早々に退職を申し出ました。

理由は「上司の昼食」だったそうです。
この会社の本社の周囲には様々な飲食店があるにも関わらず、上司の昼食は毎日牛丼や立ち食い蕎麦などの安価なものでした。「役職者でも、こんな昼食しか食べられないぐらいにうちの会社は給料が安いのか」と失望したのです。

様々な事情で食事を安価にせざるを得ない人もいます。
また、食に興味がなく、十分な所得があっても食生活が質素な人もいます。
この上司もそうだったのかもしれません。しかし、新入社員にはそうした上司の事情や嗜好まではわかりません。
話を聞いたこの会社の経営者は、管理職以上に対し「それぞれに事情や理由はあるだろうから強制はできないが、食事や身に付ける物など部下の目に付く部分は上司としての品格・尊厳を損なわぬ様にして欲しい」と注意をせざるを得ませんでした。

これに類する取り組みをしているのがある地方の介護事業者です。
地方ですから社員の多くは車通勤です。本社機能がある施設の駐車場には役員をはじめ中間管理職から新入社員までの車がずらりと並びます。もちろん誰がどの車かは皆が知っています。

先ほどの昼食の話ではありませんが、もし、それなりの地位にある人があまりにもオンボロの車に乗っていたら「こんな車にしか乗れないぐらいに給料が安いのか」と思ってしまいます。
そこで、この会社では一定以上の役職者に対して、車の購入費用に使うことを条件に手当を支給しています。「役職や年齢にふさわしい車に乗る」ことで、若手に夢を持たせるのが目的です。

「介護は奉仕…」で若者の夢と希望を粉砕

最後に、ある社会福祉法人の失敗例です。

この法人では毎年、介護専門学校の実習を受け入れていました。
ある年の実習初日、実習担当のベテラン職員は開口一番こう言ったそうです。
「介護の仕事は奉仕の心が大事です。給料のことを考えてはいけません」。
この発言は「高給取りとはいかなくても、仕事に見合った給料をもらえたらいいな…」と考えていた学生の「夢と希望」を打ち砕くのには十分でした。
この年、専門学校50名の卒業生のうち、介護の道に進んだのは約半数だったそうです。

もちろん、この法人が奉仕の心を大切にし、それを職員に求めるのは自由です。
しかし目の前にいるのはこの法人の入職者や入職希望者ではありません。
多くの若者を介護業界から遠ざけた、という点では非常に問題のある発言だったと言えるでしょう。

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