介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

スポーツチームを作って人材募集 「アスリートのセカンドキャリアは介護職で」

「体力がある」「明るく元気」と好評

最近続けて「自社でスポーツチームを持っている介護サービス事業者」に会う機会がありました。

1社は女子野球チーム、もう1社はサッカーチームです。いずれも社内の同好会などといったレベルではなく、企業チームとして公式大会などに参加しています。

介護に限らず、企業は学生時代に部活動などでスポーツ経験がある人たちを積極的に雇用する傾向があります。その理由としては「体力がある」「明るく元気で、礼儀正しい」「組織やチームで活動することの重要さを理解している」などが挙げられます。

一般企業では「運動部はOB会など縦の繋がりが強く、そのコネクションを営業などに活用できる」という理由もあるでしょう。
私が会った2社ともこれと同じ様な理由を口にしていました。しかし、それ以上に「スポーツチームは人材採用の重要なツールになる」と期待しています。

25代半ばで引退が現実

世の中には様々なスポーツがありますが、どのアスリートもどこかで引退しなくてはなりません。

引退後に監督やコーチ、解説者、競技団体職員などそのスポーツに関する働き口があるのは非常に限られた一部の人たちで、多くのアスリートにとって「引退後のキャリアをどうするか」が大きな課題となります。
アスリートのセカンドキャリア形成支援を専門に手掛ける会社もあるほどです。

ちなみに女子野球選手の平均引退年齢は20代半ばだそうです。

他の女性たちが社会に出てようやく1人立ちしようとしている頃に早くもセカンドキャリアの問題が発生します。
むしろその年齢まで本格的に野球をできるのは恵まれている方で、学校の部活動以外にほとんど活動の場がない女子野球選手は、卒業と同時に野球との縁が切れてしまうのが現実です。

地域のクラブチームなどで野球を続ける道もありますが「仕事との両立が困難」「活動費用の負担が大きい」「練習・競技環境が十分でない」などの問題がついて回ります。

こうした状況に対し、会社がチームを運営していれば、その会社の社員として収入を得ながらレベルの高い競技を続けられます。
女子野球チームを持つ介護事業者では、週に1日練習日があるので勤務時間は短いですが、本人が希望すれば夜勤も行うなど、ほかの社員と同じ仕事をしているそうです。

もちろん、現役引退後も多くがその会社で働き続けますので、企業としても人材不足の解消につながります。

男性ワーカー増やすきっかけに

サッカーチームを持っている介護事業者は、それに加えて「介護業界での男性の就労者を増やすのが狙い」とその目的を語ります。
こちらの会社も、チーム所属選手は通常は介護の現場で働いています。

現在、介護業界で働く人の約7割が女性と言われています。

この会社の社長は「この状態が介護業界の低賃金構造につながっている」と指摘します。
「もちろん、自分が家庭の大黒柱になっている女性もいます。しかし、多くの場合は配偶者が家計を支えていますので、自身の『給与額』や『給与が上がること』に対して関心が低いのです。

今の日本では男性が家計を支えるケースが多数派です。
自分の収入に敏感な男性が多く働くようになることで、介護事業者もその声に応えようと収益性の高い事業に注力するなど意識も変わるでしょう」

ちなみに、この会社は地方都市にありますが、夜勤ありの正社員で年収500~700万円ぐらいの給与水準を実現できる事業モデルの確立に向けて動いているそうです。
 
もちろん、こうしたスポーツチームの運営には多額の費用が掛かります。
しかし、チームが活躍すれば企業の知名度は自然にあがりますし、そのスポーツの経験者が就職を希望する流れもできるでしょう。

学校への求人活動も、そのスポーツの強豪校に絞って行うなど効率化が図れます。
また、そのスポーツのファンや経験者が利用者として集まることも期待できますので、結果として営業コストも少なくて済むというメリットが生じます。

企業側の体力は必要ですが、面白い取り組みと言えそうです。

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