介護施設のちがい

特定施設入居者生活介護、居宅介護支援事業所… 行政の用語は、なぜここまでわかりにくいのか?

大手新聞社は、全て「老健」と呼称

私が東京で新聞記者をしていた頃の話なのでだいぶ前ですが、グループホームとデイサービスの複合施設の見学会に招待されました。

一般紙・誌も多数招かれていましたが、ある大手新聞社の記者がしきりと「この老健は…」と質問をしていました。
その記者は、私が介護専門紙の記者と知り「教えていただきたいのですが、この老健は…」と話しかけてきました。

私は思わず「ここは老健(介護老人保健施設)ではありませんよ」と指摘しましたが、彼はその意味が理解できないようでした。
というのも、この新聞社では特養も、有料老人ホームも、グループホームも、デイサービスも、高齢者介護関連施設は全て「老健(老健施設)」と呼称していたのです。
この呼称は一般企業では珍しくないようで、建設会社や住宅設備機器メーカーなどの中には、介護・医療・福祉業界が対象の部署を「老健事業部」としているところもあります。

この様に、介護に関する用語は、業界外の人に正しく理解されているとは言い難いのが現状です。
このためか、一般紙の記事などには「高齢者ホーム」など不正確な言葉が出てきますし。
ある新聞では「地域密着型サービス」を「地域に密着してサービスを提供している会社」という意味で誤って使用していました。

呪文かお経の様な法律用語

もっとも、「業界内の人が使っている言葉が、業界外の人には意味不明」ということは、他業界でも普通にあります。
しかし、介護の場合は、そこに「行政(厚生労働省・自治体)用語」が加わる点が、さらに問題を複雑にしています。例えば以下の様な例があります。

① 行政用語「特定施設入居者生活介護」
② 介護業界での用語「介護付き有料老人ホーム」
③一般消費者の用語「老人ホーム」「老健施設」
(※厳密には特定施設入居者生活介護=介護付き有料老人ホームではないのですが、話が複雑になるので同一として扱います)

つまり、介護保険サービスを知ろうとして、介護保険法の解説本などを読んだ人は、「居宅介護支援事業所」「介護老人福祉施設」「特定施設入居者生活介護」「認知症対応型共同生活介護」など、呪文やお経のような言葉に接することになります。
これでは「介護保険は面倒だ、難しい」という印象を持たれてもしかたありません。

そして、実際に利用する段階では、介護事業者やケアマネジャーの口から出てくるのは、それらとは全く異なる「ケアプランセンター」「特養」「介護付き有料老人ホーム」「グループホーム」などの言葉です。せっかく覚えた難解な用語は何だったのでしょうか。

最近では年間10万人が親などの介護が原因で離職をすると言われており、大きな社会問題になっています。
介護業界関係者は「介護保険サービスを利用すれば離職せずに済むのでは?」と考えますが、私たちが思う以上に一般消費者にとっては「介護は難解」なようです。

せめて愛称の併記はできないか

せめて、実際にはほとんど使用しない介護保険法上の呼称をもっとわかりやすく改称できないものでしょうか。
特定施設入居者生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護など、おそらく実際にそこで勤務しているスタッフだって正しく呼称できないでしょう。

居宅介護支援事業所はケアプランセンター、認知症対応型共同生活介護はグループホーム、通所介護はデイサービス、短期入所生活介護はショートステイなど、介護保険に関する用語の中には比較的人口に膾炙した「愛称」を持つものが多数あります。
厚生労働省や自治体の文書に「居宅介護支援事業所(ケアプランセンター)」などの愛称を併記するだけでも一般の人の理解度は大分違うと思うのですが。
それをしないのは介護保険給付を増やしたくないという意向がはたらいている…というのはうがちすぎでしょうか?

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