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グループホーム 全地域で3ユニットの開設可能に

2021年度の介護報酬改定では、認知症対応型共同生活介護(以下グループホーム)のユニット数について、弾力化が図られました。 

これまで、ユニット数については「原則1又は2、地域の実情により事業所の効率的運営に必要と認められる場合は3」とされてきましたが、「1以上3以下」となりました。
これまでは、大都市圏など広い土地の確保が難しい地域などを除いて3ユニットのグループホームの開設はできなかったのですが、今後は全地域で3ユニットまでの開設が可能となります(もちろん地域密着型サービスですので、自治体が『1事業所当たり3ユニットまで』の条件で公募を行うことが条件ですが)。

また、サテライト型事業所の基準も創設されました。
具体的には、本体事業所との兼務等により、代表者、管理者を配置しないことや、介護支援専門員ではない認知症介護実践者研修を修了した者を計画作成担当者として配置することができるようにするなど、サテライト型小規模多機能型居宅介護の基準を参考にしています。
また、サテライト型事業所のユニット数については、本体事業所のユニット数を上回らず、かつ、本体事業所のユニット数との合計が最大4までと規定されています。

ユニット数多い程加算算定率も高く

独立行政法人福祉医療機構が発表した「2019年度 認知症高齢者グループホーム経営状況」によると、「看取り介護加算」を算定している事業所の割合は、1ユニットのグループホームが40.9%、2ユニットが51.8%、3ユニットは57.0%と、ユニット数が多くなるほど高くなります。
同様に「医療連携体制加算Ⅰ」は、1ユニット63.0%、2ユニット75.5%、3ユニット77.9%。「サービス提供体制強化加算はⅠ(イ及びロ)」についてはユニット数が少ないほど算定率が高くなっていますが、「同加算Ⅱ」は1ユニット16.6%、2ユニット21.3%、3ユニット24.4%とユニット数が多いほど高い算定率となっています(※同加算Ⅲは3ユニット→1ユニット→2ユニットの順で算定率が高くなっています)。
また、「介護職員処遇改善加算Ⅰ」もユニット数が多いほど算定率が高くなっています。

このようにユニット数が多いグループホームほど、より幅広い入居者のニーズに対応できる体制が整っているという現状があります。
これが、今回国がユニット数を緩和させた理由の一つと考えられます。

しかし、経営効率をみてみると。
赤字施設の割合は、2ユニットが29.9%と最も低く、3ユニット以上は32.6%、1ユニットは41.9%となっています。
これは「利用者10人当たりの介護従事者数」が、2ユニットが一番低く、結果的に人件比率が最も低くなっていることが理由です。
こうした点を考えると、自治体が3ユニットで公募を行ったとしても、収益性の問題などから手をあげる事業者どれだけがいるか、というのは未知数の部分が大きいと思われます。

近年の新設 1ユニットは減少

また、同じ福祉医療機構の2017年度調査によると、調査時点で開設1年以上を経過したグループホームのユニット数は、2ユニットが55.6%で最も多く、1ユニットが40.2%、3ユニットが4.2%ですが、調査時点で開設1~3年と新しいグループホームに限定すると77.4%が2ユニットであるなど、近年では1ユニットのグループホームの新設数が少なくなっています。

グループホームは規模が小さく、小資本・少人数で開業ができることから、家族経営に近い形態など文字通りの「家庭的な雰囲気」のところも多く、それがユーザーの人気を博すポイントの一つになっていました。
しかし、近年の開設動向や今回の介護報酬改定の内容などをみると、今後「グループホームの大規模化」がさらに進むことは間違いないでしょう。
こうした流れの中で、担い手も小規模・零細事業者から資金力のある大手事業者へと移行していくと思われます。
大手事業者が主体となる中で、グループホームのいい意味での「緩さ」がどこまで保たれるのか、注目したいところです。

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