介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

コロナ第5波収束で介護業界の人手不足深刻に 人材市場に出てこない人たちの活用が今後のポイント

介護人材は慢性的な不足が続いており、今後さらなる深刻化が予想されます。
国内の新型コロナウィルス感染症の新規陽性者数が激減し(もちろん、この先どうなるかは予断を許しませんが)、会食・イベント・旅行など国民生活は徐々に日常に戻りつつあります。
コロナ禍で大きなダメージを受けた、飲食・レジャー・宿泊などの業界から介護業界へ人材が流入する動きもありましたが、それも止まりました。
今後、これらの業界との間での人材獲得競争はさらに激しくなるでしょう。

85歳の現役ヘルパー

こうした中で、介護事業者は人材確保に向け何をすべきでしょうか。
給与をあげる、労働環境を良くするなどはもちろん重要ですが、これでは体力のない事業者は脱落してしまいます。
また、所詮は限られたパイを奪い合うだけです。
そこで求められるのは「これまで雇用対象としてこなかった人材に注目する」という視点です。

例えば高齢者です。
移乗介助・入浴介助などは体力の問題で難しいでしょうが、食事介助やレクリエーション、その他の補助的業務であれば十分に戦力になります。
筆者が知っている限りでは、85歳の男性が老人ホームでヘルパーとして働いていたのが最高齢です。
入居者と同世代で活発にコミュニケーションを図れることが大きな武器になっていました。
こうした「高齢者だからこそ役に立てる」という部分をうまく利用することで、高齢者の「働いてみようか」という気持ちを喚起できます。

ただし、今は、高齢者人材も取り合いの状況です。
多くの企業が定年延長及びその後も嘱託での継続勤務を可能としたことで、70歳前後の人たちの就労率は上昇しています。
こうした中で介護事業所が高齢者を確保するには他産業との差別化が重要になるでしょう。

1日1時間労働で社会復帰を支援

「1日1~2時間の短時間で働きたい人」をうまく活用しているケースもあります。
ある大手介護事業者では「1日8時間働ける正規雇用者1人を確保するのは難しい。
1日1時間働ける人を8人雇用する方が現実的」との考えのもと、この取り組みを進めています。
介護現場では食事など短時間に介護ニーズが集中する傾向がありますので、こうした短時間就業者を活用できればメリットは大きいでしょう。

では「1日1~2時間働きたい人」とは、どのような人でしょうか?
主婦が真っ先に思いつきますが、収入面を考えるともう少し長い時間を希望する人が多いかと思われます。

この大手介護事業者が雇用しているのは、いわゆる「ニート・引きこもり」や精神的な問題を抱えている人たちです。
つまり「働きたい気持ちはあるが、長い時間は不安だ」という人に「まずは1日1時間から働きましょう」と呼びかけています。
慣れてくれば長時間就業にもつながる可能性があります。

この手法は、携帯電話販売店スタッフを派遣する人材サービス会社でも用いられています。
彼らは家の中で1日中スマートフォンをいじっているので機器の機能や扱いに関しては十分な知識を持っています。
社会復帰のファーストステップとして、「自分が好きなスマホを扱う仕事をしませんか」と呼び掛けているのです。

また、「1日1~2時間の就労」は、「病気療養明けで、まだ長い時間働くのに十分な体力がない」などといった人にも適していますので、応用範囲は広いでしょう。

LGBTQが働きやすい介護業界

最後に、「LGBTQの人」があげられます。
LGBTQの人は、職務遂行能力は劣っていません。
しかし、雇用側の理解が不十分なことや「トイレや更衣室、制服などはどちらを使用してもらうか」など現実的な対応の難しさもあり、一般的な職場での雇用はなかなか進んでいないのが現実です。

それに対し、介護現場は「男女兼用の広いスペースのトイレがあり、更衣もそこで可能」「制服デザインが男女一緒」などLGBTQの人が就労しやすい環境が整っているケースが一般的です。
こうしたメリットを活かして積極的に採用していた介護事業者もいました。
正確な統計データはありませんが、LGBTQの人たちは全人口の8%程度と言われています
(※近年定義がどんどん広がっていますので、割合も増えていくかと思います)。
人手不足に悩む業界としては、決して無視できない数字ではないでしょうか。

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