看取り体制を強化したい、でもこんな問題が・・・

令和3年度の介護報酬改定では、多くの介護保険サービスを対象に、看取りに対する評価が行われました。

例えば介護付きホーム(特定施設)では、中重度者や看取りへの対応の充実の観点から、看取り介護加算の算定要件を、
①「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うこと、
②看取りに関する協議等の場の参加者として生活相談員を明記すること、

に見直しました。
また、現行の死亡日以前30日前からに加え、死亡日45日~31日前まで算定可能な1日72単位の新区分が設けられました。

さらに、看取り期において夜勤又は宿直により看護職員を配置している場合に算定可能な「看取り介護加算(Ⅱ)」が新たに設けられました。
単位数は、死亡日当日がこれまでの1280単位から1780単位など、全体的に引き上げられています。

終末期ケアに横槍を入れるのは誰か

こうした状況の中で、どこの介護事業者も、本人の意思を最優先に位置付けながら、理想的な看取り環境の構築を目的に、家族・介護職・医師・看護師など関係者が連携したチーム作りを進めています。

しかし、その実現には思わぬ障壁も存在します。

例えば、本人や家族は「延命措置は不要」という意思を持っていても、最期の最期になって、親戚など当初の意思決定の場には参加していなかった人が横槍を入れるケースがあります。
介護付きホームの運営者に聞くと「高価格帯のホーム」にそうしたケースが多く見られ、横槍を入れてくるのは「本人の甥」が多いそうです。

高価格帯ホームの入居者は元経営者や元一流企業勤務であったりします。
甥は若い頃に就職で世話になっているなど、入居者に恩を感じていることが少なくありません。
そのため「今度は自分が伯父(叔父)に恩返しをする番だ」と考えてしまうのです。
その結果として「医療的には、これ以上行うことがない」という医師の言葉に対し「そんなことはない。私の知り合いの医師なら腕がいいので、この病気を治せるはずだ」などと反論して、場を引っ掻き回すことになります。
また、甥自身が会社や組織の中で幹部的な立場にいる場合には「自分に相談や報告がなく物事が決定し、進められている」こと自体が面白くなく「反対することが目的の反対」をしてしまっているケースもあります。

こうした事態を防ぐためにも、医療・ケアの決定プロセスに関わる人は事前にしっかりと厳選し、後で周囲から横槍が入ってこない様にする必要があります。

看取りが介護スタッフのモチベーション低下に?

また、介護職のモチベーション低下にも注意が必要です。

言葉は乱暴ですが、医師・看護師は仕事柄「死に慣れて」います。
家族も当人のこれまでの病歴・身体状況・年齢などから、看取ることについてある程度は覚悟ができています。
しかし介護スタッフの中には看取りの経験が少ない人もいます。
特に若い介護スタッフの場合はまだ祖父母などの親戚・知人も健在で「人の死に接したことがない」というケースもあります。
それに加えて、長い時間生活を共にしたという「家族のような想い」が強くあるため、入居者の死に大きなショックを受けてしまう可能性があります。
特に仕事熱心だった介護スタッフほど「自分はこんなに懸命に介護をしたのに命を救えなかった」という自責の念にかられ、「自分がしてきたことは無駄だったのでは」「もう、こんなつらい想いはしたくない」と考えてしまいがちです。

看取りの経験が離職などにつながらないように「スタッフのグリーフケア」にも力を入れていく必要があるでしょう。
これは医療業界の話ですが、ある看護師が「入院中に親しくなった患者の葬儀に顔を出したい」と勤務先の病院に伝えたところ「看護師が患者の葬儀に顔を出したら『医療ミスを詫びに来たと思われる』から」との理由で認められなかったそうです。
しかし、それが本人の気持ちに区切りをつけ、モチベーションの維持につながるのであれば、葬儀への参列の容認も含め、様々な方法を検討する余地があると言えそうです。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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