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令和3年度介護報酬改定の主な事項について⑨~介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進~

CHASE・VISIT情報の収集・活用とPDCAサイクルの推進

これまで厚労省が取り組んできた「科学的介護の取り組みの推進」。「CHASE・VISIT情報」を収集し活用するPDCAサイクルの推進を行うことで、介護サービスの質の向上を図る。
今回は、その取り組みに対し実施に応じた事業所、具体的に実施しPDCAサイクルを回した事業所について、加算が設けられました。

具体的には、
①施設系サービス、通所系サービス、居住系サービス、多機能系サービスについて、CHASEの収集項目の各領域(総論(ADL)、栄養、口腔・嚥下、認知症)について、事業所の全ての利用者に係るデータを横断的にCHASEに提出してフィードバックを受け、それに基づき事業所の特性やケアの在り方等を検証し、利用者のケアプランや計画への反映、事業所単位でのPDCAサイクルの推進・ケアの質の向上の取組を評価する加算を創設する。
その際、詳細な既往歴や服薬情報、家族の情報等より精度の高いフィードバックを受けることができる項目を提出・活用した場合には、更なる評価を行う区分を設定されています。
※ 提出・活用するデータについては、サービスごとの特性や事業所の入力負担等を勘案した項目を設定。

② CHASEの収集項目に関連する加算等において、利用者ごとの計画書の作成とそれに基づくPDCAサイクルの取組に加えて、データ提出とフィードバックの活用による更なるPDCAサイクルの推進・ケアの質の向上を図ることを評価・推進することになりました。
※ 認知症対応型通所介護について記載。このほか、通所介護や特別養護老人ホーム等の個別機能訓練加算における新たな区分の創設や、リハビリ、栄養関係の加算における要件化を実施。

③ 介護関連データの収集・活用及びPDCAサイクルによる科学的介護を推進していく観点から、全てのサービス
(居宅介護支援を除く)について、 CHASE・VISITを活用した計画の作成や事業所単位でのPDCAサイクルの推進、ケアの質の向上の取組を推奨。居宅介護支援については、各利用者のデータ及びフィードバック情報のケアマネジメントへの活用を推奨。

施設系サービスの加算は、科学的介護推進体制加算(Ⅰ) 40単位/月(新設)、科学的介護推進体制加算(Ⅱ) 60単位/月(新設)(※介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は50単位/月)。

通所系、居住系、多機能系の加算は科学的介護推進体制加算 40単位(新設)。

②の認知症対応型GHの加算として、
(現行)個別機能訓練加算 27単位/日 ⇒(改定後) 個別機能訓練加算(Ⅰ) 27単位/日(現行と同じ)、個別機能訓練加算(Ⅱ) 20単位/月(新設)※(Ⅰ)・(Ⅱ)は併算定可。

となっています。
ここでも認知症対応型GHの加算が増えています。
データを収集し活用することで、今後増加する認知症の高齢者に対応したい厚労省の考えがよくあらわれていますね。
認知症GHで①②全て満たせば87単位/月・人ですから大きな加算です。

ADL維持等加算の拡充

科学的介護と言えば、やはり思い浮かべるのが機能訓練。
数値の情報を収集し分析して活用する。
やはりこの使い方がしっくりきますよね。

今回、通所介護系、特定施設入居者生活介護系、介護老人福祉施設系には、ADL維持加算が大きく見直されています。
具体的には、
・ クリームスキミングを防止する観点や、現状の取得状況や課題を踏まえ、算定要件について、
ー 5時間以上が5時間未満の算定回数を上回る利用者の総数を20名以上とする条件について、利用時間の要件を
廃止するとともに、利用者の総数の要件を10名以上に緩和されています。
ー 評価対象期間の最初の月における要介護度3~5の利用者が15%以上、初回の要介護認定月から起算して12
月以内の者が15%以下とする要件が廃止されています。
ー 初月のADL値や要介護認定の状況等に応じた値を加えて得たADL利得(調整済ADL利得)の平均が1以上の
場合に算定可能としています。
ー CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用によるPDCAサイクルの推進・ケアの向上を図ることを求められています。
※ ADL利得の提出率を9割以上としていた要件について、評価可能な者について原則全員の ADL利得の提出を求めつつ、調整済ADL利得の
上位及び下位それぞれ1割の者をその平均の計算から除外する。また、リハビリテーションサービスを併用している者については、加算取得
事業者がリハビリテーションサービスの提供事業者と連携して機能訓練を実施している場合に限り、調整済ADL利得の計算の対象にする。
・ より自立支援等に効果的な取組を行い、利用者のADLを良好に維持・改善する事業者を高く評価する新たな区
分を設けられています。

単位数については、
(現行)ADL維持等加算(Ⅰ) 3単位/月 ⇒ (改定後)ADL維持等加算(Ⅰ) 30単位/月 (新設)
(現行)ADL維持等加算(Ⅱ) 6単位/月 →(改定後)ADL維持等加算(Ⅱ) 60単位/月 (新設)
※(Ⅰ)・(Ⅱ)は併算定不可。現行算定している事業所等に対する経過措置を設定。

機能訓練を重視し、専門スタッフを配置していた施設系事業所には大きなプラスとなっています。
特にリハビリ系のデイサービスには嬉しい加算となりましたね。

その他、在宅復帰・在宅療養支援等評価指標と要件について、介護老人保健施設の在宅復帰・在宅療養支援機能を更に推進するため、指標の取得状況等も踏まえ、以下の見直しが行われています。
・ 居宅サービス実施数に係る指標において、訪問リハビリテーションの比重を高くする。
・ リハビリテーション専門職配置割合に係る指標において、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士の3職種の配置を評価する。
・ 基本型以上についてリハビリテーションマネジメントの実施要件が求められているが、医師の詳細な指示に基づくリハビリテーションに関する事項を明確化する。
となりました。

2025年問題への対応、介護職員不足への対応のためにも、科学的介護の取り組みは欠かせないもの。
もう少し、単位を増やし、各事業者が前向きに取組むようにする必要があると思われます。

次回は、「介護人材の確保・介護現場の革新」についてご説明します。

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