相続・終活の事前準備

その人らしく最後まで生きるために 成年後見制度

成年後見制度 ~法定後見~ とは

法定後見制度は、認知症の方、知的障がいのある方など、判断能力が十分でない方の日常生活を、ご本人の意思を最大限尊重しながら支援していく制度です。

ご本人の財産を守るだけでなく、大切な財産を生かし、ご本人の生活や健康を維持しながら、よりいっそう質の高い生活を送れるようにサポートしていきます。

どのような場合に法定後見制度を利用するのですか?

次のような場合は、 ご本人やご家族のために法定後見制度を利用しましょう。
●認知症の母の不動産を売却して老人ホームの入所費用にあてたい。
●同居している長男が認知症の母の年金を勝手に使っているようだ。
●同居している次男が母に身体的虐待をしているようだ。
●一人暮らしの母が悪徳業者と様々な契約を結ばされているようだ。
●父の遺産について、認知症の母と遺産分割協議ができない。
●父が借金を残して亡くなったが、母は認知症なので相続放棄ができない。
●認知症の母に代わって銀行で預貯金を払い戻そうとしたところ、「成年後見制度を利用するように」と銀行に言われた。
●寝たきりの母からお金の管理を頼まれて、きちんと管理しているのに兄や姉に勝手にお金を使っていると疑われている。
●アパート経営をしている父が病に倒れ、父のかわりに家賃などの管理をしたい。
●私たち両親が死亡した後、生まれつき知的障がいを持っている子供のことが心配だ。
●身寄りがいないので、介護サービスや治療行為を受ける契約ができない。

法定後見制度の申立から後見の開始まで

ご本人の判断能力が不十分になってから、家庭裁判所に法定後見申立をする場合、調査・審査などを経て、後見人等による実際の援助が始まるまで半年近くかかります。

法定後見制度には3種類あります

法定後見制度には3タイプあり、医師の診断書や鑑定をもとに、ご本人がどれに該当するかを家庭裁判所が決定します。後見人等の権限もタイプによって異なります。

ご本人の判断能力が全くない
例:自己の財産を管理・処分することができない。 日常的に必要な買い物も自分ではできない。 誰かに代わってやってもらう必要がある。(認知症)
おすすめ:後見
後見人は、財産管理についての代理権、取消権(日 常生活に関する行為を除く)を付与されます。
 
ご本人の判断能力が著しく不十分
例:自己の財産を管理・処分するには、常に振動が必要である。 日常的に必要な買い物は自分でできる。 重要な財産行為(不動産の売買など)は自分ではできない。
おすすめ:保佐
保佐人は、財産管理に関わる重要な行為(※)についての同意権、取消権を付与されます。
 
ご本人の判断能力が不十分
例:自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある。重要な財産行為(不動産の売買)は自分でできる可能性もあるが、判断に危惧があるので、誰かに代わってやってもらった方がよい。
おすすめ:補助
補助人は、財産管理に関わる重要な行為(※)の一部についての同意権、取消権や、特定の法律行為についての代理権を、申立によって付与されます。
 
(※)民法13条1項に規定のある行為

法定後見についてよくある質問にお答えします

Question1 申立に必要な書類や費用はどんなものですか?

法定後見の申立に必要となる、おもな書類や費用は右のとおりです。
 (詳しくは、ご本人の所在地を管轄する家庭裁判所にてご確認ください)
申立書の作成は、当事務所でも請け負っておりますので、お気軽にご相談ください。
 
またご本人の判断能力を医学的に確認するために、
家庭裁判所の指示により医師による「鑑定」を行うことがあります。
鑑定人は精神科医である必要はありませんので、
診断書作成を主治医に依頼する前に、鑑定書作成もあわせて依頼しておくとよいでしょう。
この場合、家庭裁判所から鑑定人に「鑑定書作成の手引き」が送付されます。
【私たちができるリーガルサポート➡「法定後見の申立書類作成」】
 
NOTE 申立に必要となるおもな書類と費用
①申立書(用紙を家庭裁判所にて入手)
②医師の診断書(成年後見用/ 用紙を家庭憲判断にて入手)
③申立手数料
④登記手数料
⑤鑑定料(家庭裁判所が、医師による鑑定が必要と判断した場合にかかります)
⑥ご本人の戸籍謄本
など

Question2 成年後見人にはだれが選ばれるのですか?

家庭裁判所が、もっともご本人にとって適任だと思われる方を選任します。
申立の際に候補者を申立人があげることは可能ですが、必ずしも候補者が選ばれるとは限りません。

場合によっては、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職の方を家庭裁判所が選任することもあります。

当事務所でも、成年後見人を受任することができますので、適任者が見つからずにお困りの場合はお気軽にご相談下さい。

Question3 成年後見人の役割はなんですか?

成年後見人が果たす役割には、①身上介護と②財産管理の2つがあります。
①【身上介護(しんじょうかいご)】…………………………………………
介護サービス契約や診療契約、入院入所契約、介護保険の要介護認定申請など、ご本人の生活と健康を維持しながら質の高い生活が実現できるよう、ご本人に代わって必要な契約を行います。
成年後見人自身が、実際に食事の世話をしたり介護サービスをご本人に対して行うものではありません。
 
②【財産管理】…………………………………………
ご本人に代わって、財産の管理(預貯金の出し入れ)をしたり不動産の売却などの契約を結びます。
ご本人の利益のために、ご本人の利益を守り、その財産を適切かつ厳格に管理する義務があります。
成年後見人がご本人の財産を私用した場合、成年後見人を解任されるほか、損害賠償請求を受けたり、業務上横領などの罪に問われることがあります。
したがって、たとえ親族であっても、成年後見人はあくまでも「他人の財産を預かって管理している」という自覚が重要となります。

Question4 ご本人が失う資格はありますか?

法定後見制度のうち「後見」におよび「保佐」がスタートすると、ご本人には以下のような資格の制限が生まれます。
①印鑑証明(成年後見の場合)
②会社の取締役、医師、税理士等の資格、公務員の地位など(成年後見、保佐のみ)
※ご本人が会社の取締役になっている場合は、すみやかに退任の登記を行う必要があります。

これらの資格を失われる理由は、ご本人の判断能力が不十分であることです。

「後見」であれば、後見人は預貯金の取扱い、不動産の購入など財産に関する行為を、ご本人の代理で執り行います。
これらの行為を、ご本人が後見人を介さず単独で行った場合、後見人はその行為を取り消すことができます(日常の買い物などは取り消せません、)

「保佐」であれば、財産に関する「特定の事項」(民法13条1項が定める行為)は保佐人の同意が必要となります。
同意なく本人が単独でこれらの行為を行った場合は、保佐人は取消権を行使できます。
「後見」とは違い、保佐人の権限は、財産に関する重要な行為のみに制限されています。

 

Question5 成年後見の任期はいつまでですか?

成年後見人の任期は、ご本人が病気などから回復し判断能力を取り戻したり、亡くなるまで続きます。
遺産分割協議が終わったり、不動産の売却が完了したなど、成年後見制度を利用した当初の目的が達成されれば終わるものではありません。

成年後見人を辞任するには、家庭裁判所の許可が必要になり、正当な理由がないと認めてもらえません。
成年後見人には、最後まで責任を果たす覚悟が必要です。

成年後見人の具体的な仕事とは

●後見人に就任後すぐにすること(1ヶ月以内)
①財産目録を作る
ご本人の財産の状況を明らかにして、成年後見人に選任されたのち1ヶ月以内に、家庭裁判所へ報告書を提出します。
 
②今後の収支の予定を立てる
ご本人にとってふさわしい暮らし方や支援の仕方を後見人が考え、財産の管理や介護、入院など今後どのような契約をおこなっていくかを計画します。とくにお金の使い道は念入りに計画を立てる必要があります。ご本人にとって不利益にならないよう収支予定をたて、財産目録とともに1ヶ月以内に家庭裁判所へ提出します。
 
 
●毎日の生活ですること
③ご本人の財産を管理する
ご本人の預貯金などを管理し、収入や支出を記録します。ご本人の財布と成年後見人の財布を必ず分けて管理し、ご本人のために使ったお金を家計簿につけるほか、領収書やレシートも必ず保管しておく必要があります。
 
●必要に応じてすること
④本人に代わって契約を結ぶ・法律行為を行う
・ご本人がより質の高い生活を送れるよう、ご本人に代わって必要な契約を行います。介護サービスの利用契約や施設への入所契約などです。
・ご本人に代わって預貯金の出し入れをします。
・ご本人名義の不動産を売却する必要が出た場合、ご本人の居宅である場合には家庭裁判所の許可を得る必要があります。
・ご本人の配偶者が亡くなり他の相続人たちと遺産分割協議を行う場合、協議に参加できないご本人に代わって成年後見人が遺産分割協議に参加します。この場合、成年後見人はご本人に代わって法律行為を行いますので、ご本人が不利益を受けないような協議を行う必要があります。
 
●家庭裁判所との連携
⑤家庭裁判所へ報告書を提出する
成年後見人は、行った業務を報告書にまとめ、家庭裁判所に提出することが義務付けられています。
報告書には必要に応じて、収支明細書、預貯金の残高証明書、通帳の写しなどを添付します。
家庭裁判所は、成年後見人の業務内容を点検し、必要とあれば「後見監督人」を選任することもあります。

判断能力の不十分な方の権利と財産を守るために、後見人が果たすべき責任は重大です。
法的知識を備えた司法書士なら、安心して後見人をまかせることができます。

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この記事を書いたコラムニスト

国本美津子 (クニモトミツコ)

国本司法書士事務所

司法書士、家族信託専門士、家族信託コーディネーター
大学卒業後、弁護士事務所での勤務を経て、平成9年司法書士試験合格。
平成16年国本司法書士事務所を開業、平成20年事務所を神戸市東灘区にある現在の事務所に移転
(JR神戸線・摂津本山駅から南へ徒歩1分)。
 一般社団法人家族信託普及協会 認定会員
 一般社団法人日本財産管理協会 認定会員
 公益社団法人 後見センター・リーガルサポート会員

司法書士のモットーは、お客様の顔の見える信頼関係の中で、「心かよいあう、暮らしに近いリーガルサポート」を提供すること。不動産登記、商業登記、債務整理、少額裁判など幅広く豊富な実績を持つ中でも、特にこれからの社会で重要になるであろう、相続・遺言・家族信託のサポートに力を入れています。女性ならではの気配りや思いやりを大切に、お客様にほっと心を開いていただけるような親しみやすい存在でありたいと願っています。

大阪府立高津高校卒業
関西学院大学 法学部法律学科を卒業

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