相続・終活の事前準備

任意後見制度の概要2~見守り契約・財産管理契約・ライフプランについて~

はじめに

司法書士の勝猛一(カツタケヒト)です。
司法書士として登記業務以外に日々、成年後見の業務に携わっています。任意後見制度の概要の2回目です。
今回は、任意後見契約に付随する制度である見守り契約財産管理契約ライフプランについて説明したいと思います。

 

付随契約の内容

任意後見契約の際に、契約の効力が発効する前に必要な業務があります。また、契約終了後に必要な業務を付随業務として加えることができます。
見守り契約、財産管理契約、死後事務契約などがあります。

見守り契約とは、任意後見契約の前段階として、いつ判断能力が衰えるかわからない不安の解消のために契約を結ぶことがあります。
財産管理契約とは、判断能力は、低下していないにもかかわらず体が不自由になり、本人に代わり金融機関に行って欲しい場合、身上監護の等の契約を代理で行ってもらうために財産管理の委任契約をすることが出来ます。
死後事務委任契約とは、本人の死後に、本人の入院中の病院代の支払いや葬儀や納骨のために死後の事務についての契約を結ぶこともできます。

付随する業務は必要な人と、必ずしも必要でない人がいます。どのような制度なのか、詳しく見ていきましょう。

   
 

見守り契約

見守り契約とは、将来の認知症の心配などで任意後見契約をした人(将来型)に必要な場合があります。

契約締結後は、本人の判断能力の状況を誰かが見守っておかないといけません。それは、本人の判断能力の衰退を確認し任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申立てる必要があるためです。
特に身寄りのない方は、誰も気づかないで放置されるリスクが高いのです。

そこで、将来型の任意後見契約に付随して見守り契約を結んでおきます。任意後見受任者に見守りの義務と必要な時が来たら監督人選任の申立を義務付けておくことが望ましいのです。自分が認知症などにならない間は、自分で財産を管理したい、でも、いつ認知症になるか自分ではわからない。そのため任意後見受任者にしっかり見守って欲しいというニーズに合致します。なお、見守り契約は必ずしも公正証書する必要はありません。

私は、任意後見についての相談を受けた際は、必ず見守り契約について説明します。
見守りは、任意後見が発効するまでの間に、本人と受任者との人間性や考え方が合うかなどの相性をみる期間でもあるのです。自分の判断能力が衰えた後に、この期間に受任者に自分が認知症になった後のことを任せて良いかを熟慮するための期間とも言えます。私は、イメージを伝えるための例え話しで、婚約中にこの人と結婚しても良いか、この人に自分の人生を預けて良いかを思案している恋人たちの関係の様だと話をしています。

親族以外の第三者と任意後見契約をする場合は、判断能力がしっかりしている間に任意後見の受任者に自分の生活状況や考え方を伝えることができます。自分の将来の衰えに備えるという意味では大切な期間です。
以上から法定後見では事前に関係を築くことのできない期間です。法定後見と違い、任意後見のみに与えられた大切な期間です。

見守り契約は、任意後見契約をした全ての人に必要とは限りません。子どもなど家族と同居しているような場合は、常に家族が本人の状況を把握できるため、わざわざ見守り契約を締結しておく必要は無いと考えます。

見守り契約書のひな形はこちら
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
 

見守り契約書.pdf ( 101 KB )

財産管理契約

財産管理契約とは、判断能力は、低下していないにもかかわらず体が不自由になり、本人に代わり金融機関に行って欲しい場合、身上監護等の契約を代理で行ってもらうために財産の管理委任契約をすることが出来ます。

財産管理契約は、地代家賃の収入管理とそのための経費支払いだけして欲しいなど限定して委任することができます。要するに、委任の内容を、個別具体的に定めておくことができるということです。身の回りの事やその他日常生活に必要な現金や預貯金の管理は、本人がするので委任しないなどもできます。財産の管理以外に、医療契約や介護契約などの契約手続きを委任するようなことも良いと思います。

実際の財産管理では、預貯金に関する取引が大きな割合を占めます。金融機関の一部では、財産管理契約について職員が正しい理解を欠いている場合もあり、手続きが滞ることもあります。金融機関の中には、確認のために本人の同行を求めることもあります。
任意後見契約と違い財産管理契約は必ずしも公正証書で作成することを義務付けられているわけではありません。しかし私は財産管理任契約を必ず公正証書で作成しています。なぜかといいますと、契約書に継続的に財産管理を委任すると書かれていても、そこはどこまでいっても私文書でしかありません。第三者である公証人が本人の意思確認をしてないのです。そのため金融機関は、毎回本人の意思確認をせざるを得なくなり、当事者が個別に委任状を作成して窓口に持参したのと同じになってしまうからです。
 後見人選任の申立の直前までは、親族や本人が信頼を寄せる友人・知人が事実上の財産管理をしていることがあります。しかし、認知度が進行すると金融機関から本人の意思が確認できないと判断されて通帳がロックされてしまいます。そのとたんお金の出し入れの必要に迫られて法定後見申立の手続きをしなければならなくなります。本人が信頼をよせる親族や知人・友人でなく第三者の専門家が裁判所から選任されるという事態が多く起こるのです。あなたが、信頼を寄せている人があるならば、判断能力が衰える前にその人との任意後見契約をしておく必要があります。そうでないと本人のことを知らない第三者が後見人として出てくるという望まない状況になってしまうのです。
 

ライフプラン

上記の他にライフプランという書類を作成することがあります。
ライフプランとは、本人の希望の中で確定していない事項を中心に書き込んでおくものです。確定していないが故に契約書にしにくいものをライフプランに記載しておくことが多いのです。そのような未確定の事柄については、本人の意向をライフプランに記載しておくとそれを指針に受任者側が判断の材料に出来ます。
ライフプランは、財産管理契約であろうと任意後見契約であろうと、作成しておくことが後々大事になってきます。
例えば、
・在宅で介護を受けたいのか、施設に入りたいのか、施設に入るとすればどのようなところを希望しているのか。
・自宅の処分はどうしたいのか、入院が必要な場合の病院はどこに入りたくて治療の方法はどのようなものか。
・他にも死亡時の連絡先や葬儀、納骨、墓地についての希望など、
現時点では確定していていないものです。確定していないがゆえに契約書に書いておくことは難しいのだけれど、これらの意向や趣味・嗜好などは、本人にとっては重要なことがあります。

任意後見人や財産管理の受任者が事務を行うにおいて、ライフプランがあることは、本人の希望に沿った事務を行うための指針として大きな意味があるのです。ライフプランも判断能力がある間に作成の必要があるため法定後見ではありえない書類です。
本人からすると自分の趣味や嗜好は自分の人生の柱や根本であることがありうるのです。その部分をしっかりと持っている人は、判断能力が衰えて手遅れになる前に、事前準備として任意後見契約をしておく必要があります。
今回は、任意後見契約に付随する契約のうち、生前の付随する契約である見守り契約と財産管理契約について説明しました。次回は、死後の付随契約について説明したいと思います。

この記事へのコメント

下記入力欄より、この記事へのご意見・ご感想をお寄せください。
皆さまから頂いたコメント・フィードバックは今後の内容充実のために活用させていただきます。
※ご返答を約束するものではございません。

この記事を書いたコラムニスト

勝 猛一 (カツ タケヒト)

勝司法書士法人 代表社員

1966年  鹿児島県大島郡 徳之島に生まれる
1999年  司法書士登録
2000年   (公社)成年後見センター・リーガルサポート会員
2003年5月 勝 司法書士法人 設立(大阪・淀屋橋)
2003年7月 東京事務所  設置(東京・虎ノ門)
2009年1月 遺言・相続・成年後見セミナーをスタート
2013年  相続請負人「渡る世間は瀬戸際ばかり」(小説)出版
2017年9月 横浜事務所 設置
2018年3月 大阪市立大学大学院 修士課程終了

私達勝司法書士法人は「想いやり」のある行動を通じて人々の生活に貢献し、
「夢」をもって未来へ挑戦し続ける集団を目指します。

掲載PR一覧

  • 老人ホーム入居相談窓口