施設運営

【介護集客コラム】選ばれる事業所になるためのマーケティング戦略とブランディング

1. 序章:なぜ今、「介護 集客」と「ブランディング」が不可欠なのか

介護経営者の皆様、自施設の「稼働率」を維持・向上させることに、難しさを感じていませんか?

高齢化社会の進展に伴い、介護サービスの需要は高まっていますが、その一方で、介護保険制度の規制緩和により新規参入が増加し、介護業界は厳しい「過当競争」の時代に突入しています。

多くの事業者が「ただ存在する」だけでは、利用者に選ばれることはできません。

今こそ、漫然とした営業活動ではなく、自施設の強みを明確にし、それを効果的にアピールする戦略的な「介護集客」と「ブランディング」が不可欠です。

本コラムでは、利用者やその家族、そして地域から「選ばれる介護事業所」になるための具体的なマーケティング戦略と、その土台となるブランディング手法について深く掘り下げていきます。

2.稼働率向上の第一歩:自社の「強み」を見つけ出す

効果的な利用者獲得戦略を立てるには、まず自社の強みと弱みを客観的に分析することが重要です。

このプロセスは、マーケティング戦略の基本であり、自事業所の独自性(USP:UniqueSellingProposition)を明確にする上で欠かせません。

2.1強みを特定する「SWOT分析」

まずは、自事業所の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を整理する「SWOT分析」から始めましょう。 

・Strength(強み)
他の事業所にはない独自のサービス(例:認知症専門ケアに特化、リハビリ専門スタッフが常駐)、職員の高い定着率、地域での長年の信頼など。

・Weakness(弱み)
立地が駅から遠い、施設の老朽化、ウェブサイトがない、職員のITリテラシーが低いなど。

・Opportunity(機会)
近隣に競合が少ない、地域の高齢化が急速に進んでいる、国や自治体からの補助金制度が充実しているなど。

・Threat(脅威)
近隣に大型施設が新規オープン、物価高騰による運営コスト増、人材不足の深刻化など。

この分析で最も重要なのは、「強み」を活かし、「機会」を最大限に活用する戦略を立てることです。

例えば、「認知症ケアに強み」がある事業所が、「地域の認知症高齢者が増加している」という機会を捉え、専門的なセミナーを開催するといった戦略です。 

2.2独自性(USP)で差別化する

分析で見つかった強みは、そのままあなたの事業所が「選ばれる理由」となります。
これを明確なメッセージとして打ち出すことが、効果的なブランディングの第一歩です。

例えば、ライザップの「結果にコミットする」のように、たった一言で顧客の心を掴む独自性(USP)は絶大です。

あなたの事業所にとってのUSPは何でしょうか? 

「医療依存度の高い利用者への専門対応」、「最新の見守りシステムを導入した安心の夜間ケア」、あるいは「職員の定着率が高いアットホームな雰囲気」など、利用者やその家族が抱える課題を解決する独自性を具体的に言葉にすることで、競合との差別化を図ることができます。 

3.デジタルとリアルを融合した「集客」実践術

自社の強みが明確になったら、次はターゲットにその魅力を伝えるための具体的な「マーケティング」手法を実行します。

介護集客には、インターネットを活用した「デジタルマーケティング」と、地域に根ざした「リアルマーケティング」の両方をバランス良く組み合わせることが重要です。 

3.1デジタルでリーチを広げる

ウェブサイトとブログで信頼を築く

ウェブサイトは、事業所の顔であり、24時間365日情報を発信してくれる最も強力なツールです。
施設のサービス内容や料金、職員の雰囲気、日々の活動などを写真や動画で分かりやすく掲載することで、利用希望者やその家族に安心感を与えることができます。
 
・SEO対策
ターゲット層が検索するであろうキーワード(例:「デイサービス〇〇市」)を調査し、ウェブサイトやブログのコンテンツに適切に盛り込むことで、検索エンジンからのアクセスを増やせます。
 
・ブログの活用
介護に関する役立つ情報や、日々の施設の様子、職員のコラムなどを定期的に発信することは、潜在的な利用者の興味を惹きつけ、信頼関係を構築する上で有効です。
ただし、安易にリニューアルすると、かえってアクセス数が激減するリスクもあるため、専門家の助言を仰ぐことも重要です。
 
Googleマイビジネス(MEO)で地域にアピール

「Googleマイビジネス(MEO)」は、Google検索やGoogleマップであなたの事業所を上位に表示させるための無料かつ強力なツールです。

まだ取り組んでいる介護事業所は少ないため、今から始めることで大きな差別化効果が期待できます。

写真や営業時間、サービス内容を充実させるだけでなく、利用者やその家族からの口コミに丁寧に返信することで、信頼性を高めることができます。口コミは、利用者が事業所を選ぶ際の重要な判断材料の一つです。

SNSで親近感を醸成する

TwitterやFacebook、InstagramといったSNSは、職員の日常や施設の雰囲気を手軽に伝えるのに最適なツールです。
特に若年層の家族や、介護業界に興味を持つ求職者(コラム1で解説した「介護人材」)にアプローチする上で有効です。 

定期的に情報を発信し、コメントに返信することで、ユーザーとの直接的なコミュニケーションを促し、親近感を醸成することができます。

3.2リアルで地域との繋がりを深める

・ポスティング・チラシで地域に根ざす
デジタルが苦手な高齢者層や、近隣住民に直接情報を届けるには、ポスティングやチラシが依然として有効です。
事業所の理念やサービスへの想いを込めたチラシを、ターゲットとなる戸建てやマンションに投函することで、地域の認知度を確実に高めることができます。

・ケアマネ連携で紹介を増やす
介護業界における集客において、居宅介護支援事業所のケアマネージャーとの連携は不可欠です。
彼らは利用者の介護サービスを計画し、事業所を紹介する重要な役割を担っています。
定期的に事業所を訪問し、施設のパンフレットを渡したり、サービス内容を説明したりする「介護施設営業」を通じて、信頼関係を築くことが紹介に繋がります。
ただし、集中減算制度があるため、特定の事業所に偏った紹介はできない点に留意が必要です。

・地域イベントや健康セミナーの開催
施設見学ツアーや、地域の高齢者向けの健康セミナー、介護相談会などを開催することは、潜在的な利用希望者やその家族と直接交流できる貴重な機会です。 
参加者は、施設の雰囲気や職員の人柄を直接感じることができ、入居への不安を解消できます。
イベントが好評であれば、参加者の口コミによる集客効果も期待できます。

4.集客の土台となる「インナーブランディング」

どれほど外部に向けた集客活動(アウターブランディング)に力を入れても、職員が自社のサービスに誇りを持てなければ、その効果は限定的です。

そこで重要になるのが、組織内部に向けたインナーブランディングです。

4.1「車の両輪」としてのインナー・アウターブランディング

インナーブランディングとは、「事業所の理念や価値観を職員に浸透させ、組織の一体感を醸成する活動」です。

一方、アウターブランディングは「外部の顧客や市場に向けて、事業所のブランドイメージをアピールする活動」です。 

この二つは、「車の両輪」の関係にあり、どちらか一方が欠けても十分な効果は発揮されません。 

例えば、外部に「私たちは最新のテクノロジーを活用した質の高い介護を提供しています」とアピール(アウターブランディング)しても、現場の職員が「テクノロジーに苦手意識がある」「面倒くさい」と感じていては、そのメッセージは嘘になってしまいます。

職員が自社のサービスに自信と誇りを持ち、「自分たちは価値のある仕事をしている」と認識すること、それが自然と外部への魅力発信に繋がるのです。 

4.2インナーブランディングの実践例

・理念の共有
施設のロゴや制服を一新したり、法人理念を職員全員で再確認する機会を設けることで、組織の一体感を高めることができます。
 
・職員の巻き込み
職員が自ら施設の魅力を発信するチームを結成し、SNSやYouTube動画の制作に携わってもらうことも有効です。 

・コミュニケーションの活性化
介護記録の電子化やチャットツールの導入は、業務効率化だけでなく、職員間の情報共有をスムーズにし、チームワークを向上させます。 

5.持続可能な「地域連携」とブランド構築

介護集客は、単に利用者数を増やすための手段ではなく、地域社会全体での信頼を築き、強固な地域連携体制を構築するためのプロセスでもあります。

5.1地域包括ケアシステムにおける役割

2025年、そして2040年に向けて、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で生活を続けられる「地域包括ケアシステム」の深化が推進されています。

これは、介護事業所が医療機関や自治体、地域住民と一体となって高齢者を支えることを意味します。

地域のイベントに積極的に参加したり、ボランティア活動に貢献したりすることは、直接的な売上には繋がらなくとも、地域に根ざした事業所としての信頼を築き、強固なネットワークを構築するための不可欠な投資となります。 

5.2信頼性の「見える化」

2024年4月から、介護事業所の「財務諸表の公表」が義務化されました。

収益性の低い小規模事業所にとっては、経営の弱みが公になるリスクもありますが、これは同時に、適正で健全な経営を行っていることを、利用者や地域社会に「見える化」する絶好の機会でもあります。

この透明性の確保は、長期的な信頼関係の構築に大きく寄与します。 

6.結論:マーケティングは未来への投資

介護事業における利用者獲得とブランディングは、もはや後回しにできる課題ではありません。

それは、事業所の経営基盤を強化し、職員のモチベーションを高め、ひいては利用者へのサービスの質を向上させるための、未来への「投資」です。

本コラムで解説したように、デジタルとリアルを組み合わせた戦略的なマーケティングと、職員一人ひとりの意識を変革するインナーブランディングは、相互に補完し合い、強力な相乗効果を生み出します。

この厳しい時代を生き抜くために、まずは自事業所の強みを徹底的に分析し、ターゲットに響くメッセージを明確にすることから始めてみませんか。

そして、それを一貫した戦略として実行していくことで、あなたの事業所は必ず「選ばれる介護事業所」となり、地域社会に不可欠な存在として、持続可能な成長を遂げることができるでしょう。

介護の三ツ星コンシェルジュ

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