ナーシングホームが「大変」と言われる理由と現場のリアル
近年、「ナーシングホーム」という名称の老人ホームが急増しています。
これは、医療的ケアが必要な高齢者が増える中で、従来の有料老人ホームや介護施設では対応しきれないニーズに応える形で発展してきた新しい形態です。
しかし、その一方で不正や運営上の問題が取り沙汰され、行政による取り締まりも強化されています。
現場で働く介護職・看護職にとって、ナーシングホームはどのような点が「大変」と感じられるのでしょうか。
一般的な有料老人ホームや介護施設との違いも踏まえ、現場のリアルをわかりやすく解説します。
1.ナーシングホームとは何か
ナーシングホームは、看護師が24時間常駐し、医療依存度の高い入居者にも対応できる体制を持つ介護施設です。
一般的な有料老人ホームが「生活支援」が中心であるのに対し、ナーシングホームは「医療的ケア」と「生活支援」の両方を提供する点が大きな特徴です。
「大変」と感じる主な理由
(1). 医療依存度の高い入居者への対応
ナーシングホームには、胃ろう、たん吸引、インスリン注射、褥瘡ケア、終末期ケア(看取り)など、専門的な医療ケアが日常的に必要な入居者が多く入居しています。
そのため、看護師・介護士ともに高度な知識と技術が求められ、業務の緊張感が他の施設よりも高い傾向があります。
入居者の急変も多く、夜間を含めて迅速な判断と対応が必要です。
これが精神的・肉体的な負担につながります。
(2). 看取りケアの重み
ナーシングホームでは、入居者が最期を迎える「看取りケア」も重要な役割です。
症状コントロールや苦痛緩和など医学的な対応だけでなく、死に向き合う入居者や家族の心理的サポートも求められます。
長く関わった利用者との別れはスタッフ自身にも大きな悲しみをもたらし、精神的な負担が大きくなりがちです。
(3). 多職種連携とマネジメントの難しさ
ナーシングホームは介護職と看護職が密接に連携する必要がありますが、専門性や視点の違いから意思疎通や役割分担で摩擦が生まれやすいです。
看護師をマネジメントできるかどうかが、施設運営の成否を分ける大きな要素とも言われています。
(4). 人材不足と採用競争
介護業界全体で人材不足が深刻化している中、ナーシングホームはさらに医療スキルを持つ人材を求めるため、採用が非常に難しい状況です。
賃金や労働条件の面で他業種に比べて魅力が劣ることも、人材確保を難しくしています。
(5). 責任の重さと孤独感
医師が常駐していないケースが多いため、看護師や介護職が現場で最終判断を迫られる場面が増えます。
「命に直結する業務」へのプレッシャーや、判断ミスへの不安、孤独感も大きなストレス要因です。
2.一般的な有料老人ホーム・介護施設との違い
(1)一般的有料老人ホーム
・看護師常駐は少ない
・介護度が低〜中、医療依存度低
・急変対応は少なめ
・生活支援・健康管理中心
⑵ナーシングホーム
・看護師24h常駐多い
・介護度高・医療依存度高
・急変対応は多い
・医療ケア+生活支援+看取り
ナーシングホームは「医療」と「生活」の両面で高い専門性が求められるため、介護職・看護職ともに「大変」と感じる場面が多くなります。
3.現場でよくある「大変」な事例
・夜間に入居者の容態が急変し、看護師・介護職が即時に判断・対応しなければならない
・医療的ケア(たん吸引、褥瘡処置、胃ろう管理など)が日常的に発生し、ミスが許されない緊張感が続く
・看取りの際、家族への説明や精神的ケアも求められ、業務範囲が広がる
・看護師と介護職の役割分担や指示系統が曖昧で、現場でのトラブルやストレスが生じやすい
・人員不足で一人あたりの業務量が多く、休憩や休日が十分に取れない
・介護職が医療ケアを補助する場面が増え、責任の重さを感じる
・不正や規定違反のリスクも高まるため、コンプライアンス意識や記録業務も厳格に求められる
4.それでも働く価値とやりがい
大変さの裏には、利用者や家族からの感謝や、「人生の最期を支える」という大きなやりがいもあります。
多職種連携や長期的な信頼関係の構築、医療・介護両面のスキルアップも可能です。
5.まとめ
ナーシングホームは、医療依存度の高い高齢者の「生活の場」として、今後ますます必要とされる施設形態です。
しかし、介護職・看護職にとっては、専門性・責任・精神的負担・人間関係・人材不足など、一般的な有料老人ホームや介護施設以上に「大変」と感じる要素が多い現場です。
その一方で、やりがいや社会的意義も大きく、今後の高齢社会において重要な役割を担う存在であることは間違いありません。
介護の三ツ星コンシェルジュ