「介護は北欧に学べ」が後退する中で 新たな注目先はアメリカ?
21世紀初頭の「日本の介護マーケット草創期」とも呼べる時期は、デンマークやスウェーデンなど北欧諸国の福祉・介護の仕組みや考え方が理想とされ、日本の介護関係者たちが多数視察に訪れました。
以前にもこのコラムで書きましたが、私自身も北欧を視察したことがあります。
高齢者住宅で生活をする女性がピンヒール姿であることに大きな驚きを受けました。
しかし、日本と北欧諸国では税制度、宗教観や家族観など異なる部分が多数あります。
人口も1国500万人程度と日本の25分の1しかいません。
このため「北欧諸国の福祉・介護の『考え方』は素晴らしい。
しかし、具体的な仕組み・制度をそのまま日本に導入するのは非現実的ではないか」という考え方が強くなりました。
今では日本の介護事業者の「北欧熱」は以前に比べると低くなっているのではないでしょうか。
そして、その後は、認知症ケア手法の「ユマニチュード」を生み出したフランスや、「認知症村」「世界で初めて安楽死を法制化」などの取り組みで知られるオランダなどに日本の介護事業者の関心は移っていきました。
こうした中で、アメリカは完全に蚊帳の外でした。
「介護保険どころか公的な医療保険もなく、国民の平均寿命は主要先進国の中では最も短いレベル」ということもあり、日本の介護関係者の中には「アメリカに学ぼう」という考えはほとんどありませんでした。
アメリカの高齢者に関する施策や制度、サービスで、日本でも注目をされたものと言えば、高齢者を中心とした大規模コミュニティの「CCRC」ぐらいではないでしょうか。
それですら、日本にしっかりとしたものが入ってきているとは言い難い面があります。
しかし、先日アメリカを視察した日本の介護事業者一行は「ほとんど注目されていないアメリカだが、これからの日本の介護を考える上では非常に参考になる」と語ります。
アメリカには公的な医療・介護保険がありません。
民間の保険に加入していない限り、病気やケガをすると多額の費用を負担しなければなりません。
私もアメリカ旅行中に軽い食あたりを起こしてクリニックを受診したことがあります。
簡単な問診とビオフェルミンのような薬を1日分処方されただけで3万円もかかり、非常に驚きました。
こうしたことから、アメリカ国民は「自分の健康は自分で守る」という意識が非常に強いです(もちろん、それだけの経済的な余裕がある国民に限った話ですが)。
スポーツジムに通ったりジョギングやエクササイズをしたりは当たり前です。
また、病気や介護になったときに、病院や介護サービスではなく家族や近隣コミュニティが関わる割合も、日本よりずっと高いといえます。
これは、「自助・互助・共助・公助」の中の「自助・互助・共助」に該当します。
日本で介護保険制度が誕生して25年になりました。
この間日本の社会情勢は大きく変化し、制度創設時には想定していなかった事態がいくつも起こっています。
例えば出生数の減少です。
2024年の出生数は1899年に統計を取り始めてから初めて70万人を割りましたが、これは国の予測よりも15年早くなっています。
このような国の想定と異なる事態が多く発生すれば、遅かれ早かれ介護保険制度の大幅な見直しが行われる可能性は高いと思われます。
そして、それは「今のように気軽に利用できない」ものになることは想像に難くありません。
介護保険に頼ることができず、高額な自費サービスを利用したり、家族の手を借りたりする必要がある、というのはまさしく現在のアメリカの社会です。
「今のアメリカが日本の将来の姿。これから参考にすべきはアメリカではないか」と前述した視察団の代表はコメントしていました。
介護の三ツ星コンシェルジュ



