訪問介護事業所の倒産件数過去最多 107の自治体が「訪問介護ゼロ」
民間信用調査機関の東京商工リサーチの調査によると、2025年上半期の訪問介護事業者の倒産件数は45件。
前年同期比12.5%増で過去最多となりました。
2022年は22件でしたから3年で2倍以上に増加しています。
倒産件数の推移をみてみると、2019年は32件、2020年は31件と高い水準で推移していた倒産件数が、2021年、2022年はともに22件と急減しています。
そして2023年以降増加に転じています。
新型コロナウイルス感染症が日本で本格的に広がり始めたのは2021年上半期です。
これを受けて政府は各分野の事業者に対し融資や助成などの支援を行いました。
2021年・2022年の倒産件数が少なかったのは、これらの「カンフル剤」が効果を発揮したと言えます。
しかし、その効果が次第に薄れてきたことが、ここ3年倒産が増加している一因と考えられます。
また、ガソリン代・水道光熱費をはじめとする各種物価の上昇、採用・給与などの人件費の高騰で、運営コストが増加していることも経営を圧迫しています。
2024年10月に最低賃金が50円引き上げられたことも大きいでしょう。
もちろん2024年4月の介護報酬引き下げも影響として考えられます。
このように、訪問介護事業者の経営的な苦境が続く中で、問題になっているのが「訪問介護空白地帯」の多発です。
2024年末時点で全国107の町と村で「訪問介護事業所が1つもない」という事態になっています。
また、全国の市区町村の22%が「訪問介護事業所が1つしかない」という「空白地帯予備軍」となっています。
こうした、空白地帯または空白地帯予備軍は「移動に時間がかかる上に利用者が少なく採算が取れない」「ヘルパーが確保できない」などという理由から、離島や中山間地域などが多くなっています。
そして、一概には言えませんが、こうした地域では小規模多機能型居宅介護や定期巡回随時対応型訪問介護看護など、訪問介護の代替となるような介護保険サービスの数も十分とは思えません。
訪問介護が無い=要介護になったら在宅生活の継続が難しくなる、というのが現実です。
先日、ある地方都市の話を聞きました。
そこは、現在は合併して市になっていますが、20年前までは1つの村でした。
旧村域には在宅医療資源が無く、住民には「医療的な対応が必要な状態になったら病院か介護施設に行き、そこで最期を迎える」以外の選択肢がなかったそうです(今は、訪問看護事業所ができました)。
介護施設があるのは、かつては別の自治体でしたから、旧村民にとっては馴染みの無い場所です。
そこで人生を終えることを幸せと感じる人は少ないでしょう。
今後も訪問介護事業所の倒産が続けば同じような状況の自治体が増えていくと思われます。
2025年6月より従業員の熱中症対策を講じることが企業に義務付けられました。
訪問介護事業所も対象になります。
各種予防グッズを携帯させるだけでなく、「移動中に十分な休憩時間を確保できる」「入浴介助業務が連続しない」などヘルパーの健康に配慮した訪問スケジュールの作成も求められます。
当然、これまでに比べると経営効率は低下します。
しかし、こうした「ヘルパーにやさしい働き方」を打ち出していかないと、ヘルパーの新たな就労にもつながりません。
ヘルパーの不足=売上不振=倒産という結果になってしまいます。
「訪問介護報酬の引き下げは業界に大きな影響を与えている」として東京都品川区が独自の補助金を制定するなどの動きもありますが、全ての自治体にその余力があるわけではありません。
当面、訪問介護事業所は厳しい経営を強いられるでしょうし、消費者側も「訪問介護が地域から無くなるかもしれない」ということを想定した上で、介護に向き合う必要性がありそうです。
介護の三ツ星コンシェルジュ



