東京都が相談窓口を開設 介護職員のカスハラ被害はなぜ起こる?
東京都が4月21日、介護職員からのカスタマー・ハラスメントに関する相談を受け付ける窓口を開設しました。
近年、小売店やサービス業では来店客などからの執拗なクレーム、不当な要求、直接・間接的な暴力といったカスタマー・ハラスメント(以下:カスハラ)が大きな問題となっています。
介護現場でも同様で、カスハラが原因での職員の離職・休職も少なくありません。
経営面でのダメージも大きいため、カスハラ対策に取り組むことは介護事業者にとっても必要不可欠と言えます。
1. 運営母体の実績や他施設の評判を徹底的に調べる
一般的に日本人は「自分の意見を強く主張しない」「マナーがよい」と言われています。
このような国民性の日本で、なぜカスハラが多発しているのでしょうか?それにはいくつかの理由が考えられます。
まず、「商品やサービスに対して要求する水準が高い」という点があります。
日本を訪れた外国人が驚くことの1つに「鉄道が数分遅れただけでお詫びのアナウンスが入る」があります。
つまり、多くの日本人にとっては「商品やサービスが完璧な形で提供されるのが当たり前」なのです。
その分、小さなミスに際して不寛容になりがちです。
2. スタッフの研修体制やサポート体制を具体的に質問する
また「サービス=無料」という考え方が強い点も挙げられます。
例えば、国によっては通常の料金で提供される以上のサービスを受ける際にはチップが不可欠です。
それに対して日本にはチップの習慣がありませんので「金を払っているのだから、これぐらい対応しろ」と対価以上のサービスを求めがちです。
この他にも、企業側の行き過ぎた「お客様第一主義」の考え方、国民の間では裁判がそれほど一般的ではないため「多少トラブルになっても企業から訴えられないだろう」と高をくくっていることなどが理由として挙げられるのではないでしょうか。
3. スタッフの離職率や入れ替わり状況を確認する
これらの理由に加えて、介護現場のカスハラには次のような特徴があります。
まず、カスハラの当事者がサービス利用者の場合は、認知機能の低下などにより「自分の行為がカスハラだ」と認識できていないことが多い点です。「これはカスハラです」「止めて下さい」などと直接注意しても改善は殆ど期待できません。
次に、介護の場合は利用者本人に加えその家族もカスハラをすることがあるという点です。
例えば「施設で虐められている」という訴えが原因で、利用者の家族がカスハラに走ることがあります。虐めは利用者の妄想かもしれませんし、「『施設を出て家に戻りたい』という願望からくる嘘かもしれません。
しかし、利用者の日々の様子を常に見ていない家族は真偽を確かめようがありません。
そこに「本人(利用者)の言っていることが正しいはず」という信念が加わりますから、虐待をしていないことに施設がどれだけ客観的な証拠を示しても納得せず、問題が解決しないケースがあります。
また、介護事業者が利用者を獲得したいがために、契約前に「当社はどのような方にも対応可能です」などと大風呂敷を広げてしまい、実際の利用が始まってから「話が違う」とトラブルになり、カスハラに発展することもあります。
4. トラブル発生時の対応フローや相談窓口の有無を確認する
カスハラの原因には、事前の説明不足、従業員の教育不足、クレーム初期対応の誤りなど、企業側に起因するものもあります。
企業側の努力や工夫で防げるものは防ぎ、その上で「カスハラには毅然と対応する」という姿勢を消費者に示す必要があります。
特に介護事業者の場合「自分たちはどんなに大変な思いをしても、利用者を助ける」という自己犠牲の精神が強いケースもあり、カスハラに対しても「私たちが我慢すればいい」という考え方に陥りがちです。
「自社に対する正当な要求・要望なのかどうか」をしっかりと見極めて、適切に対応することが重要なのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ