「2040年のサービス提供のあり方検討会」中間とりまとめ② 大都市部ではICT活用した見守りが必須
前回に続き、厚生労働省が設置した有識者会議「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」が2025年4月10日に発表した、議論の中間とりまとめ(以下:まとめ)について見ていきます。
今回は、大都市部における需要急増を踏まえたサービス基盤整備のための適切な対応についてです。
前回のコラムでも触れたように、日本では高齢者人口及び介護サービスニーズのピークは2040年と言われています。
しかし、実際には地域ごとに大きな差があり、中山間・人口減少地域の多くでは既にピークを過ぎています。
それに対し、現在生産年齢人口の多い大都市圏では、2040年以降にピークが来ると予想されています。
その間、高齢者人口・介護ニーズともに増加が続いていくと思われますので、それ以外の地域に比べて、より長期的な視野に立ったサービス基盤の整備が必要になると言えます。
まとめでは、大都市部の特性について、以下のように言及しています。
まず、人口密度が高く、施設や住まい、在宅サービスが一定の範囲内に集中して存在しているという点です。
このためコンパクトなサービス提供が可能になるというメリットがあります。
また介護事業者も複数存在しています。それらが連携して多くの種類のサービスを提供する体制の構築も比較的容易といえます。
一方で、大都市部は一つの都市の中に、若者が多く住む地域、子育て世帯が多く住む地域、高齢者が多い地域など、高齢化の状況や地域コミュニティーの強さなどが異なるエリアが混在しているという特徴があります。
それぞれの地域課題に見合ったサービス体制の構築が求められます。
例えば、地域コミュニティーが希薄な地域では、高齢者の孤独死の防止や早期発見が難しいといった課題があります。
このため、まとめでも「大都市部においてはICTやAIを活用した24時間・365日の見守りを前提として、緊急時や利用者のニーズがある場合に、訪問や通所などの在宅サービスを組み合わせるような仕組みを考える必要性がある」と言及しています。
ちなみに、介護保険サービスの1つである定期・巡回随時対応型訪問介護看護や夜間対応型訪問介護は「人による夜間の見守りサービス」の側面も持っています。
まとめではこのサービスについて「夜間の負担が多く、人材確保が困難」「夜間の定期的な訪問のニーズは少ない」などのデメリットがあるとし「テクノロジーを活用しつつ、必要なときにサービスを提供する方が利用者のQOL向上につながる」といった意見があったことに言及しています。
今後、何らかの形でこれらのサービスについては見直しが行われる可能性も否定できません。
最後に、大都市部の課題として、土地・建物価格の高さから、サービス基盤の整備に多くの費用がかかる点についても言及しています。
介護報酬は地域ごとに差が設けられていますが、正直なところ大都市部と地方の土地・建物価格の差をカバーできるほどではありません。
このことがサービス基盤整備の上でのネックになっています。
これを受けて、まとめでは「設備の基準等について実態に即して考えていく必要がある」とコメントしています。
例えば、東京都では、手頃な価格で入居できるサービス付き高齢者向け住宅の供給を促進するために、居室の最低面積について国とは異なる独自の基準を設けています。
一般に自治体の「独自ルール」は開設準備や運営の煩雑化を招くため、介護事業者にとってはありがたくない存在です。
しかし、基盤整備を行いやすくするものであれば受け入れやすく、自治体側も導入しやすいのではないでしょうか。
もちろん利用者へのサービス品質が担保されることが条件です。
介護の三ツ星コンシェルジュ