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「2040年のサービス提供のあり方検討会」中間とりまとめ① 人口減少地域では提供体制維持が最優先

 厚生労働省が設置した有識者会議「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」が2025年4月10日、議論の中間とりまとめ(以下:まとめ)を発表しました。

 2040年には65歳以上の高齢者数がピークとなり、介護のニーズも最も多くなると思われます。

 一方で日本の人口減少は今後も続く見込みであり、高齢者を支えていく体制をどのように構築していくかが課題となっています。

 この検討会はその課題解決に向け2025年1月から検討を重ねてきました。

 今回より数回にわたり、まとめの内容を紹介します。

 まとめでは、まず日本を大きく「大都市部」「一般市等」「中山間・人口減少地域」の3つに分け、それぞれの実情に見合ったサービス体制を構築する必要性について言及しています。

 冒頭で2040年が高齢者人口のピークと述べましたが、これはあくまで日本全体での話です。実際には、全国の市町村の約50%は2020年以前に高齢者人口のピークを迎えています。

 その一方で、都市部を中心とした約15%の市町村では2040年以降に高齢者人口のピークを迎える見込みです。

 これは介護のニーズにおいても同様です。

 例えば在宅介護サービスでは、約30%の保険者が2024年以前にサービス需要のピークを迎えてしまっています。

 一方で、政令市や東京23区、道府県庁所在地などの大都市では、43%の保険者が2045年以降にサービス需要のピークを迎えると予想されています。

 このように、高齢化や人口減少のスピードは地域によって大きな差があります。

 介護サービスの提供体制についても、地域ごとの現状や課題に即したものでなければ意味がありません。

 では、前述した3つの地域では、それぞれどのような体制が望ましいのでしょうか。

 まとめでは以下の様に言及しています。

 まず「中山間・人口減少地域」については、すでに介護サービス需要のピークは過ぎています。これはサービスを提供する介護事業者の事業継続という点では大きなマイナス材料です。

 しかし、介護サービス需要は減少しつつも、ゼロになっているわけではありません。

 つまり、市場全体が縮小する中でも事業者がサービスをしっかり提供できるような取り組みが必要になります。

 まとめでは、
①事業者に対するインセンティブの設定
②事業者の多機能化
③事業者間の連携による経営・業務の効率化
④市町村間の連携や都道県による市町村の支援

などを例として挙げています。

 具体的な施策としては、ICTの活用、人員配置基準の弾力化、複数事業所による人材シェア、地域内でのタスクシフトやタスクシェアなどが考えられます。

 また、小規模多機能型居宅介護のように複数のサービスを包括的に提供できる事業所の計画的な整備の必要性についても触れています。

 特に地方部の訪問系サービスでは、利用者宅間の移動に関する事業者の負担が多いことも問題となっています。

 これを受けて「現状のような『回数』を単位とした報酬体系ではない包括的な評価の仕組みを設けることも検討の方向として考えられる」と、介護保険制度の仕組みそのものにまで踏み込むような議論も行われたようです。

 先日、ある介護業界団体の理事長が山陰地方を視察したときの様子を自身のSNSにアップしていたのですが、複数の自治体で介護サービスを提供する事業者が1社しかないという状況だそうです。

 その事業者が存続できなくなったら、住民は介護保険サービスを受けることができません(自治体が提供すれば別ですが)。

 中山間・人口減少地域においては、介護という社会インフラの維持を最優先し、柔軟性を持たせた仕組み・制度運用が求められると言えそうです。

 次回は大都市部のサービス提供のあり方について、まとめの内容をお伝えします。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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