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運営ガイドライン制定から10年 「お泊りデイサービス」の現在の姿は?

 10数年前に「お泊りデイサービス」が介護業界でちょっとしたブームになりました。

 デイサービスの終了後に利用者がそのまま保険外サービスで宿泊できるというもので、「ショートステイがいっぱいで利用できない」「葬儀などで家族が急に家を空けなくてはいけなくなった」などといったニーズに対応していました。

 その多くが一般の民家を改修して運営するというモデルで、初期コストの低さもあり、参入する経営者が増加しました。

 介護保険法上は単なる通所介護(もしくは地域密着型通所介護)であり、お泊りデイとして指定を受けることはないため、正確な数は誰にも把握できませんでしたが、最大手のフランチャイズ加盟店だけで一時期800を超えていました。

 当然、それ以外のお泊りデイもありましたので、かなりの存在感を示していました。

 ただし、宿泊サービスについては保険外で、自治体のチェック機能がはたらかないため、「男女が一緒に大部屋に雑魚寝」などというケースもあり、「プライバシーの確保や安全性の面などでの問題点があるのでは」と指摘する声もありました。

 これを受けて厚生労働省は2015年4月に保険外での宿泊サービスに関するガイドラインを定め
①宿泊時間帯には介護職員または看護師・准看護師を常時1名以上確保
②宿泊室は定員1名の個室。利用者の希望があれば2名も可。4名までの相部屋も認める
③宿泊室の面積は7.43平米以上(1名部屋の場合)などを求めました。

 各都道府県もこれに準拠したガイドラインを作成して指導を行っています。

 ガイドラインができたことで、今までのような一般住宅を活用する形式での運営が難しくなったこともあり、お泊りデイはその後話題にのぼることがめっきり減りました。

 先日、久しぶりにお泊りデイの現場を取材する機会がありました。

 今回は、その様子を紹介します。

 そこは、関東地方のある小さな市にあるデイで、開設は2017年。定員18名の地域密着型で、1日の平均利用者は14名程度です。

 宿泊室は7部屋。
ガイドライン制定後なのでもちろん全室個室になっています。

 宿泊費は1泊1500円。ほかに朝食代330円、夕食代750円が発生します。

 もし、丸々1ヶ月宿泊するとなれば、デイの自己負担分に昼食代も含めて従来型の特別養護老人ホームよりも高くなりますが、「特養に入居していたが自分には合わない」などの理由で利用を希望する人もいるそうです。

 ただし、こちらのデイでは長期宿泊は特養などの入居順番待ちの人に限定しています。

 「お泊りがついていることは、デイの運営にプラスにはたらく」と運営会社の社長はコメントします。

 レクリエーションや入浴の時間以外は宿泊室で休むことができるので、普通のデイを利用することが難しい重度の人にも対応できます。ちなみに利用者の平均要介護度は3.8です。

 また「宿泊スペースが個室」という点は、利用者に対するアピール材料としては効果的です。

 同じ市内には別の事業者が運営する、いわゆる「雑魚寝スタイル」のお泊りデイもあるそうですが、利用者の数は全然違うそうです。

 お泊りデイについては「個室の宿泊スペースを確保したら施設の面積が広くせざるを得なくなり、算盤があわなくなるのではないか」という意見もありますが。

「収益性という面では全く問題がない」と社長は語ります。
とは言っても、課題が無いわけではありません。大きな課題は、お泊りデイについてケアマネジャーの理解が十分でないことです。

 「お泊りデイを知らない」ならまだしも、国のガイドラインに適合していても「お泊りデイは安全性に問題がある」などの先入観を持っており、ケアプランに組み込みたがらないケアマネもいるそうです。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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