「レクを再開したい」と考える施設は増えているのに レク提供者の提案が通らないのはなぜ?
新型コロナウイルス感染症の拡大が落ち着いたことを受け、高齢者施設では集団形式のレクリエーションを再開するケースが増えています。その中には、外部から講師を招いて行われるものもあります。
また、そうした動きを受けて、音楽、体操、美容・エステ、カルチャーなどの高齢者向けレクリエーションの専門家が、施設に対する新規導入・再開の提案を活発に行なっています。
しかし、実際にそうした人たちに話を聞いてみると「思っていた以上に提案が進まない」といった声が非常に多く聞かれます。
優れたレクリエーションの導入は入居者のADLやQOLの維持・改善には欠かせないはずなのですが、なぜ施設側の反応は鈍いのでしょうか。
それには以下の事情があるようです。
①意思決定権者がはっきりしていない
例えば、本社に提案すると「レクのことは各現場で判断している」と言われ、それではと施設長に提案すると「スタッフの意見を聞いてみないと…」となり、たらいまわしにされてしまうケースが多いそうです。
また、社長は非常に乗り気でも、現場スタッフからの「レクを増やすと、利用者の誘導などで私たちの仕事が大変になる」と反対されることが少なくないとか。
中には社長に提案したが、創業者である社長の親の反対で導入にいたらなかったケースもあるそうです。
レクに限ったことではありませんが、「この件についての権限は誰が持っているのか」というルールがしっかりと確立されていないのは「介護事業者あるある」かもしれません。
②レク担当者の退職
施設の中には、介護スタッフの業務負担を減らそうと、レク専属のスタッフ、レクがメイン業務のスタッフを配置しているところもあります。
しかし、コロナ渦中で数年間レクができなかったこともあり、そのスタッフが退職してしまっていたり、通常の介護スタッフの業務に戻っていたりするケースがあります。
その後、後任が決まっておらず、以前導入していたところに再開を提案しても「レクのことがわかる者がいないので…」と話が進まないそうです。
私が取材する中でも「コロナが第5類になって、以前の状態にすっかり戻りました」とコメントする高齢者住宅がありますが、実際にはこうした細かい部分でコロナ前とは体制が違ってしまっているケースは多いかもしれません。
③提案に対して何の反応もなし
誰かの紹介を受けて社長や施設長に挨拶や提案のメールを送っても、そのことに対して何の反応もない事業者が多いそうです。
これは、私自身も取材のオファーに際してしばしば感じます。「○○の紹介で…」といった形でメールが来た以上は(おそらく紹介者からも何らかの連絡が行っているはずなのですが)、それに対していい返事ができなくても、何らかの形で返信をするのがビジネスマナーかと思うのですが、残念なことに介護事業者ではそれができていないケースが多いようです。
せっかく間を取り持ってくれた人の顔に泥を塗ることにもなりかねません。
もっとも、これには「施設長レベルでも1人1台のパソコン、個人のメールアドレスが付与されていないことがある」という介護事業者のICT化対応の遅れもあるようですが。
あるレクの専門家によると「異業種企業の子会社などで社長や施設長が介護業界以外の出身の場合は、比較的メールのレスポンスが良いが、介護事業専門の会社は残念なことに反応が無いか、きわめて遅いことが多い」とのことです。
今回はレクの導入提案に関する話ですが、こうした姿勢の事業者は、重要な情報入手の機会を逃すことにもなりかねません。
自分のところに寄せられた情報については「まずは確認してみる」という姿勢が大事なのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ