デイサービスは1回1万円? 介護離職の理由は「費用に関する情報不足」か
先日、たまたま同じ日に「介護離職の防止」を目的に企業向けにセミナーやコンサルティングなどの活動をしている人の取材が重なりました。
改正育児・介護休業法の施行により、4月1日から企業に介護離職防止対策が義務化されることを受け、問い合わせも増えているそうです。
現在、介護離職者は年間10万人と言われています。
この中でも親の介護が理由で離職する人は40~50代が主でしょう。
彼らは部署やプロジェクトを取りまとめる責任ある立場であったり、熟練技術者であったりします。
こうした人たちが抜けることは企業、特に中小規模の事業者にとっては大きな痛手です。
また、離職者にとっても、現在の職場に不平不満があるわけではなく、今後も働き続けたいと思っていたところでの無念のリタイアです。
当然、本人のモチベーションも高くありません。
地域などとのコミュニケーションがうまく取れずに孤立していくなどといったことが懸念されます。
「なぜ介護離職をするのか」については、2つの理由があると言われています。
1つは「介護保険サービス、インフォーマルな支援制度の存在を知らない。使い方がわからない」というものです。
しかし、これについては介護保険制度ができて25年もたった今では、かなり少なくなっています。
「介護医療院」などのマイナーなサービスはともかく「老人ホーム」「デイサービス」「訪問介護」ぐらいは、どんな人でも知っているでしょう。
また、今の40代~50代ならネットでいくらでも介護保険の申請方法ぐらいは調べられます。
2つ目は「自分が介護をしなくてはいけない」という義務感です。
これには「息子や娘(嫁)が介護をするのが当たり前だ」という要介護者本人や周辺からの圧力のようなものもあります。ただし、これも都市部など地域によってはかなり薄れてきています。
このように、原因は以前よりも減っているにも関わらず、なぜ介護離職の道を選択せざるを得ない人が一定数いるのでしょうか。
先日取材したうちの1人は「介護保険サービスを利用する際の費用についての知識がほとんど無い」ことを原因として挙げていました。
例えば、要介護度や、加算の算定状況などで違いますが、1日型のデイサービスを1回利用すると自己負担は概ね1000円程度です。
しかし、一般の人はこれをほとんど知りません。
ですから、家族はどうしても自分が朝から夕方まで外で一日過ごした時の費用をもとに想像してしまいます。
大型テーマパークで1日遊んだら1万円ではすまないでしょう。
カラオケやインターネットカフェならもう少し安いですが、やはり中で飲み食いをしたら、それなりの額になります。
その結果「デイは1回1万円ぐらいするだろう」などという勝手な相場観が形成されてしまいます。訪問介護も同様です。例えば、家事代行サービスを頼むと1時間5000円程度かかります。
ビジネスの現場でバリバリと働いてきた人ほど「プロが動けば相応のコストがかかる」ということを理解していますから、「家族が介護になった」となると「訪問介護を頼んで、デイサービスに行って…となったら、給料を丸々つぎ込んでも足りないぐらいの金がかかる。ならば自分が退職して介護をした方が、生活できる…」と考えてしまうと言えます。
高齢者住宅では、家賃など介護保険以外の費用の差が物件ごとに大きく、それが差別化につながるため、パンフレットなどでは費用を前面に出していることもあります。
デイサービスなどでも同様に「知っていました?デイサービスって1日1000円で利用できるんですよ」など、消費者に対してまずは費用面を大きく打ち出すことが、結果として介護離職も減ることになるのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ


