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学生シェアハウスを高齢者施設に併設 30時間アルバイトすれば家賃負担ゼロ

 どこの介護事業所でも「多世代交流」に力を入れています。新型コロナウイルス感染症の状況が深刻な時期を除いては、近所の保育園や幼稚園の園児、小学校の児童などがイベントなどでデイサービスや老人ホームを訪れて交流しています。

 こうした取り組みには、高齢者には元気を与える、子どもたちにとっては情緒教育や病や命について考えるきっかけになるなどの様々な効果が期待できます。
しかし、高齢者・子どもたち双方にとって、訪問(来訪)・交流は「非日常」の出来事です。
それとは異なる「日常的・恒常的に交わる取り組みが必要」という考えが重要視されています。
また、新型コロナのような状況が再び起きれば、たちまち交流は中断されてしまうでしょう。そうした中で、「要介護の高齢者と高齢者以外の人が同じ建物内で生活する」というスタイルの施設が注目を集めています。

広島県に昨年春オープンした。2ユニットの高齢者グループホームと看護小規模多機能型居宅介護支援事業所の複合施設もその一つです。そこに8室の学生専用シェアハウスが併設されています。
ポイントはシェアハウスという点にあります。

シェアハウスは個人のプライバシーが確保されているのは寝るだけの機能の居室内のみで、キッチン、風呂、トイレ、リビングなど生活に必要な場所の大半は、他の入居者と共有します。
つまり「他人との交流が苦にならない」人でないと生活が難しいのです。学校行事のように全員参加で高齢者との交流を図ると、そうしたことが苦手な子どもがいた場合は苦痛に感じ、高齢者や介護について嫌悪感を抱くリスクも考えられます。
シェアハウスの入居者であれば、そうした心配は無用です。

 このシェアハウスの家賃は月3万円(水道光熱費は別途固定費を徴収)で、併設されている介護事業所でアルバイト(直接的な介護は行いません)をすることが入居条件です。
アルバイト代は時給1000円。つまり、月に30時間働けば実質家賃はタダになります。
もちろん、ほかにアルバイトをして家賃に充当することもできますが、通勤時間がゼロなどの効率性を考えれば、こちらで働く方にメリットがあるといえます。そのため8人の入居者全員が30時間以上の勤務を希望します。
つまり、介護事業所側は求人広告を出すこともなく、30時間×8人=月240時間の労働力を確保できる計算になります。

 また、シェアハウスは共同生活の場ですので、生活に必要なルールなどを入居者同士で話し会って決めるという、一種の「自治」が行われるケースが多くあります。「誰がどの時間に施設でアルバイトをするか」というシフトの作成も、入居者1人ひとりの学校のスケジュールやプライベートの予定を配慮して、全員で話し会って決めるそうです。

介護事業所にとって面倒な業務のひとつがシフト作成。各従業員が勤務希望日をバラバラに提出すると「この日は働ける人が全然いない」ということもあり、調整や交渉をして勤務に入ってもらう必要が生じます。
そのことが「希望をしていない日に無理矢理シフトを入れられた」などの不満につながり、退職の原因になることもあります。
働く人同士が話し合ってシフトをつくることで、事業所の手間やリスクは大きく軽減します。

また、建物の設計にも工夫を凝らしています。シェアハウスのリビングと看多機は小さな中庭を挟んで向かい合っており、そこに面した窓は敢えて大きくとってあります。
互いの日常生活の様子が自然に目に入るため、相互理解の促進やアルバイトに入ったときの会話のきっかけづくりなどに役立っているそうです。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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