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アンケート調査「超高齢社会×デジタル社会」に見る② 高齢者のデジタルツール利用度

前回のコラムでは、一般財団法人AVCCが実施したアンケート調査「超高齢社会×デジタル社会」の結果をもとに、高齢者は年齢が高くなるにつれて社会的孤立が進むという実態について解説しました。今回は、スマートフォンやパソコンといったデジタルツールがその問題の解消にどこまで寄与できるか、といった点について検証します。

 「デジタルツールを利用することはあるか」では、60代後半や70代前半では約80%が「情報収集やコミュニケーションを行っている」と回答しており、インターネット検索やSNSなどを日常的に使いこなしている様子が伺えます。
一方で70代後半は38%、80代は前半・後半ともに25%と低くなり、90代ではゼロとなりました。

ただし80代後半では19%、90代以上では33%が「使いたいが、サポートがないのでできない」と回答していますので、使い方を学ぶ機会があったり、使い方を教えてくれる人が身近にいたりすれば、利用率はもっと上昇することが考えられます。

とは言っても、前回のコラムで書いたように年齢が高くなるほど外出自体が難しくなるため、公民館などでスマホ教室が開催されていても、そこまで行くことができないケースもあります。

オンライン形式での教室も、スマホ・パソコンが使えなければ、そこにアクセスすること自体が難しいでしょう。
デイサービスセンターなど高齢者が集まる場所へ出張するスタイルの講座が効果的かと思われます。
 

「普段、情報をどこから得ているか」では、60代後半は「スマホ・パソコン」が47%で、「テレビ」の34%を上回りましたが、それ以外の年代は全て「テレビ」が1位でした。
前の質問の回答と照らし合わせると「スマホ・パソコンは使ってはいるが、まだまだメインのツールではない」と言えるでしょう。

これは、スイッチを入れるだけのテレビと異なり、スマホやパソコンは検索をし、その結果出てきた情報の中から自分に必要なものを取捨選択することが必要であるなど、「自分から動いて情報を取りに行く」タイプのメディアであることが理由の一つであると言えるでしょう。高齢になるとそうした行動自体が面倒になり、受動的なメディアに依存する傾向が高くなると言えます。

 また、スマホやパソコンを利用していても、実際にそこからどのような種類の情報を選んでいるのでしょうか。
「健康に関する情報はどこから得ていますか」という問いでは「スマホ・パソコン」は60代後半でも33%に留まりました。

70代では「テレビや新聞」が最も高く、80代以降は「医者や看護師」が最多で「スマホ・パソコン」はゼロでした。

 これからもわかるように、健康・病気など自分の命に関わるような問題については「自分のことを良く知っている専門家に直接相談したい」という意識が強いといえます。
最近は自分でさまざまな情報を入力すると、そのひとの健康状態や栄養状態、認知症の可能性まで診断してくれるアプリケーションや、医師・看護師・薬剤師などにオンラインで相談できる仕組みも登場していますが、高齢者にとってはまだまだハードルが高いと言えそうです。

これからもわかるように、デジタルツールにより、高齢者の社会的孤立を防ぐこと自体は可能でしょう。ただし高齢者がそれを使いこなせるようにするサポート体制の整備と、「安心して利用できるコンテンツ」がどれだけ充実しているかがポイントになると言えそうです。

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