介護業界 嚙み砕き知識・ニュース

デイ利用者が大手カフェチェーンで勤務 コロナ後の人手不足の中で貴重な戦力に

ここのコラムでも何回かテーマにしましたが、「利用者が仕事をする」ことをテーマにした介護事業所が近年増えています。
単なる体操や脳トレ、リハビリテーションに比べて「行動するための目的・目標を持ちやすい」「行動が金銭などで評価される」という点が、高齢者の高いモチベーションにつながっていると言えます。

首都圏のある市では、市議会議員の呼びかけにより、市内の複数の飲食店・物販店が、介護事業所の利用者を有償ボランティアとして受け入れています。
また、市も「介護サービス利用時間内に、事業所外で有償ボランティアをしても問題ない」とそれに対して理解をしているそうです。
数名の利用者が有償ボランティアとして大手カフェチェーンに仕事に行っているというリハビリデイサービスに、実際の様子などについて話を聞きました。

 このカフェチェーンでは、複数の介護サービス事業所から有償ボランティアを受け入れており、このリハビリデイの利用者が働くのは毎週火曜日の1時間。
仕事内容は、店舗内外の掃除や植栽への水やりなどが主ですが、ときには厨房に入って試飲用のコーヒーを作ったりもします。中には歩行に杖が必要な高齢者もいますが、自分のできる範囲で無理なく働いているそうです。

 有償ボランティアですので労働に対しては報酬が支払われますが、このリハビリデイでは「少額のお金をやり取りするのはお互いに面倒だろう」との考えから商品券での報酬受け取りを選択しました。
10回働くとチェーン店の3000円分の商品券がもらえます。利用者の中には、これを孫にプレゼントして感謝されている人もいて、それがますます働く意欲につながっているということです。

 さて、こうした仕組みは、介護事業所やそこの利用者だけでなく、受け入れるカフェチェーン側にも大きなメリットがあります。
 新型コロナウイルス感染症に関わる各種制限・規制がなくなり、飲食店には以前のような客足が戻ってきています。

しかし、その一方でスタッフ不足が深刻です。
先日前を通りかかったラーメン店には「スタッフ不足で注文をさばききれないので、当面は席数を半分にして営業します」と張り紙がありました。
コロナ禍が一段落し、飲食・レジャー産業などで一気に求人が増えたこと、特に若い人の中に3年以上に及ぶコロナ禍の中で「飲食店などでアルバイトをする以外に稼ぐ方法を確立できた」ケースがあることなどが人手不足の原因でしょう。
このためアルバイト・パートの時給も上昇傾向にあります。

 こうした中で、飲食店の中には「使用済みテーブルなどを拭くなどの単純な業務を、高い時給を支払っているアルバイトやパートにやらせるのは効率が悪い」と考えるようになりました。安く働いてくれる高齢者の有償ボランティアは非常にありがたい存在と言えます。

最近では、ファストフード店など、これまで「若い人が働く店」のイメージだった店舗でも、高齢者が働く姿をよく目にするようになっています。高齢者は貴重な戦力ですが、店側にとって「どうやって高齢者を募集するか」がネックでした。
今は、採用はネット(アプリ・SNS含む)で行うことが一般的です。しかし、高齢者はそれらをあまり活用していません。
結局のところ、折り込みチラシ、店頭での張り紙、紹介などに頼らざるをえません。

 介護事業所には大勢の高齢者がいます。また、その高齢者がどれだけ身体が動き、どの程度の仕事ならできるかという点は、介護事業所が一番よく理解しています。
今後は、介護事業所が、そうした強みを活かして働きたい高齢者を社会に供給する窓口としての役割を果たすことになるかもしれません。

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