がんシリーズ5. がんの治療について(薬物療法編)
「医師×福祉×経営」で感じたことを発信します、レギュラーコラムニストの柏木です。がん(悪性腫瘍)シリーズの5回目です。今回からはがん(悪性腫瘍)の治療についてお話ししていきます。今回は抗がん剤治療に代表される、薬物療法についてお話しします。
がんをやっつける薬を中心とした治療
前回は手術について書きましたが、今回はその対極にあるようなイメージの薬を中心とした治療です。一般的には「抗がん剤」なんて呼ばれます。がんに抵抗するための薬ってことですね。がん細胞は様々な手段を使って、勝手に増え(増殖)、体のあっちこっちに行ってしまう(浸潤・転移)のが問題でした。世界中の研究者たちが、がん細胞のこういった困った特性が、どのような仕組みで作られているのかを調べています。がん細胞を詳しく研究することで、より効果的にがん細胞をやっつける治療を開発するヒントがえられるのですね。
薬物療法において、細胞障害性抗がん薬と呼ばれるがん細胞を攻撃するような薬剤が中心でした。がん細胞がじゃまなら直接やっつけてしまえば良い!と言う発想で、先ほど述べたがん細胞が増える仕組みなどを攻撃する薬です。この効果でがん細胞は増殖できなくなり、我々が本来持っている免疫細胞などにやっつけられていきます。その他にはがん細胞を増殖させる特定のホルモンの働きや分泌を邪魔するホルモン療法、がん細胞を攻撃する免疫に作用する分子標的薬免疫療法などがあります。
最新の薬がたくさんあります
皆さんはノーベル医学賞を受賞した、本庶佑先生をご存知でしょうか?オプジーボ®︎と言う薬が一躍有名になりました。この分野は本当に日進月歩で、毎年のように新しい薬が開発されます。もちろん、その影には大量の日の目を見ることのなかった薬候補たちがいるのですが。新しい薬が皆さんの元に届くまでも果てしない道のりなんですね。
そして、新しい薬が患者さんに届く段階となっても終了ではありません。もともとあった薬と、新しい薬のどちらがより効果があるのか?安全なのか?といった研究をするのが一般的です。そして、問題となるような副作用が報告されたら・・・その薬は消えていきます。過去にも「これは新しい治療薬だ!」と期待され、市場に出た後に消えていった薬もあるのです。新しい薬の開発は患者さんに理解いただき、協力も重要です。こういう新しい薬の開発について、少し興味を持っていただければと思います。
支持療法って聞いたことはありますか?
がんの薬物療法はどんな薬剤であれ、一定の副作用があります。代表的なのは脱毛や免疫力の低下などです。これは薬ごとによっても異なり、その反応の強さは個人差もあります。副作用が強すぎると、せっかく有効な治療であっても、続けることが困難です。そのため、副作用にしっかり対処する治療を最近では支持療法(サポーティブ・ケア)と呼ぶことが増えてきました。もし治療に関連した副作用が心配な場合は、担当してくれている医師や看護師、薬剤師などに相談してみることも大切です。
まとめ
第5回はがんの薬物療法について述べてきました。次回は放射線治療についてお話ししたいと思います。引き続きよろしくお願いします。