食道がんの手術については、初期、早期の場合は、内視鏡による治療が、進行した場合は、外科手術が行われます。
内視鏡による治療は、体の負担がすくなく回復が早いことが特徴です。がんの病巣をワイヤーでひっかけてとる内視鏡的粘膜切除術と電気ナイフで病巣を削り取る内視鏡的粘膜下層剥離術があります。
外科手術は、がんを含めた食道と胃の一部を切除し、同時にリンパ節を含む周囲の組織も切除します(転移を防ぐため)。食道切除後には、胃や腸を使って食べ物の新しい通路を作る手術(再建術)を行います。このため、比較的入院期間(在院日数)が長い治療となります。食道がんの外科手術は、消化器の中でももっとも難しいと言われており、大学病院や公的大病院に手術が集中している傾向があります。
表は主な手術の件数をとったものですが、目安として二種類の手術の合計の多い病院順にならべています。空白になっている欄は、その術式の手術をしていないということではなく、数が少なかったということを意味しています。
在院日数は、その手術の患者さんが平均して何日で退院したかということを示す指標です。在院日数が短い程早く退院できる、その病院の手術・治療の手際が良かったというようにも考えられます。ただし、がんの手術は進行度であるステージ、年齢、併存疾患の有無等がありますので在院日数の単純比較はできません。軽度ながんを多く扱うほど、在院日数は短くなるからです。したがって、今回の在院日数のデータは一つの目安として参考にされることをお勧めします。また、前述しましたように外科手術は在院日数が長いため、この手術を行っている病院は、行っていない病院と比べると平均の在院日数が長くなりますので、単純に平均の在院日数の比較はできません。
大阪は、ずらりと大学病院、公的大病院が並びます。外科手術を多数多く行っている病院も数多くあります。大阪国際がんセンターの件数が抜きんでています。
兵庫県は神戸大学病院が外科手術、内視鏡的粘膜切除術等、いずれもトップです。郡部では、北播磨総合医療センターが外科手術、内視鏡的粘膜切除術も一定数行っています。
京都府では、外科手術を行っているのは、京都大学医学部付属病院と国立京都医療センターです。北部では、福知山市立病院が、内視鏡的粘膜切除術等を多く行っています。
滋賀県では、外科手術を行っているのは滋賀医科大学付属病院のみです。民間病院では草津総合病院が、内視鏡的粘膜切除術等を比較的多く行っています。
奈良県では、奈良県立医科大学付属病院が、外科手術を行っています。内視鏡的粘膜切除術等は天理よろづ病院が数多く行っています。
和歌山県では、和歌山県立医科大学付属病院が外科手術を行っています。内視鏡的粘膜切除術等は日本赤十字社和歌山医療センターも行っています。その他の病院の実績は外科手術、内視鏡的粘膜切除術等ともに数少ないようです。
今回は、手術件数合計数ならびに在院日数のみを比較しましたが、これらの指標ですべてを推し量られるわけではありません。病院の業績・アクティブを見る上では、病床あたりの手術件数、医師一人あたりの手術件数も、重要な指標となります。このようなことを踏まえて、皆さんが病院選びの参考としてこのコラムを活用していただけば幸いです。
(注1)
手術件数データは厚生労働省の「平成30年度DPC導入の影響評価に係る調査」ならびに株式会社ケアレビューが運営している「病院情報局」のサイトから引用しています。
(注2)
各府県とも原則上位5までとしましたが、京都、大阪、兵庫は病院数が多いため、京都については上位7位(件数100件以上)、大阪・兵庫については上位10件まで選びました。
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前関西電力病院事務局長
病院経営
関西電力入社後、労務畑を経て関西電力病院に14年間あまり勤務。
診療報酬制度をはじめ病院経営のことについて一から勉強し、診療情報管理士の資格取得。
着任時大きな赤字を抱えていた病院を、退職時には黒字体質に変換。
黒字化を前提に、築40年の老朽病院の建て替えという一大イベントにも携わり成功に導く。
関西電力病院退任後、㈱関西レコードマネジメント代表取締役社長に就任、経営改善に尽力。
病院経営改善に従事した経験、また、企業人、経営者としての経験をいかした、企業経営の観点にもとづいた実戦的な病院経営支援を実施します。