介護施設での暮らし

看護職がナースキャップで勤務? TV/映画での頓珍漢な介護施設描写

超高齢社会で介護が身近な存在となったこともあり、ドラマや映画の中に介護に関するシーンが登場するケースも増えているのではないでしょうか。もっともヘルパーなどの介護関係者が主役というケースはまだ少なく、サスペンスドラマのテーマが介護施設の建設を巡る汚職事件だったり、被害者や容疑者の肉親が介護職で、刑事が聞き込みで職場の施設を訪れたり、とあまりいい形で登場することが多い気がしますが…
そして、実際に描かれている介護施設や現場の様子をみると、おもわず「え、さすがにそれはないでしょ」と声を上げたくなるような誤りがあることが少なくありません。

例えば、あるサスペンスドラマでは、介護施設の中の様子が描写されました。
ところが働いている看護師は、ワンピースのナース服にナースキャップ姿でした。言うまでもありませんが、今は、衛生面の問題や「動きにくい」という理由から、ナースキャップを被ることはほとんどありません。

また男性看護師の増加やジェンダーフリーの考え方に伴いパンツスタイルのナース服が一般的になっています。ドラマに出てきたのは、一体いつの時代の看護師でしょうか。ましてや、介護施設は医療機関ではない「生活の場」なのですから、「いかにも医療職」といったユニフォーム姿で働くことはあり得ません。
それにもかかわらず、ステレオタイプのナース服姿を画面に登場させたのは、制作側のリサーチ不足なのか、それとも「ナース服姿の綺麗な俳優を映せば視聴者は喜ぶだろう」とでも思ったのでしょうか。

介護事業所の「在り方」自体にとんでもない描写がされたケースもあります。
あるホームドラマの中で、男女が恋仲になりました。
しかし男性はなかなか結婚を切りだそうとしません。その理由を知りたがる彼女を、男性は介護施設に連れていきます。そこには男性の父親が入居していました。スタッフに介護されている父親を見て、男性はこういいます。「父がこのような状態なので、あなたとは結婚できません」
これは、あまりにひどい描写です。仮に父親が要介護であっても、施設に入居をしていれば、新たに息子の配偶者になる人に特段の負担が発生するとは考えにくいです。
面会に行ったり、施設での生活に必要な物を買って届けたりといった役割が生じるケースはあるかもしれませんが、結婚の障壁になるようなレベルの話ではないでしょう。

そもそも、介護保険は、家族の身体的、時間的な負担を軽減し、生活になるべく支障が出ないようにするための制度です。「父親が施設に入っているから結婚できない」というのは、「介護保険サービスが全く役に立たない」と言っているのも同然であり、介護施設の在り方を全く理解していないと言えます。
さすがに、この放送を見たときは、テレビ局に苦情を言おうかと思いました。

なぜ、このように、フィクションの世界では介護に関して頓珍漢な描写がなされているのでしょうか。
その理由のひとつとして考えられるのが、介護業界側の発信力の弱さではないでしょうか。そもそも、一般メディアに介護がとり上げられるのは「人手不足」「虐待」「低賃金」といったネガティブな話題のときばかりです。
こうした中で、メディア側にも知らず知らずのうちに介護に関する変なバイアスがかかってしまっている可能性があります。

「ニュースもないのにメディアに取材してもらう」というのは難しいことかもしれませんが、自分たちの日常の姿を正しく知ってもらうためにも、積極的なアピールなどを行っていく必要があるのでないでしょうか。

この記事へのコメント

下記入力欄より、この記事へのご意見・ご感想をお寄せください。
皆さまから頂いたコメント・フィードバックは今後の内容充実のために活用させていただきます。
※ご返答を約束するものではございません。

この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

掲載PR一覧

  • 老人ホーム入居相談窓口