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介護業界団体の理事長 議席獲得ならず 「処遇改善方法」で同床異夢か

7月20日に投開票が行われた参議院議員総選挙に介護業界団体の理事長が自民党公認候補として全国比例区から出馬しましたが、当選には至りませんでした。

これまでにも介護や福祉事業の関係者が国会議員になったケースはあります。

しかし、特定のサービス種別団体が擁立する候補だったり、どこかの介護事業経営者だったりで、介護関係者・介護の専門家ではあっても「業界全体の代表者」という立ち位置ではありませんでした。

それに対し、今回の候補者はサービス種別や法人種別の枠を超えた大同団結を目的に活動している団体の代表です。

外部の介護事業者団体からの推薦・協力も取り付けるなど、おそらくこれまでに例を見ない規模で介護・福祉業界が一丸となって取り組んだ選挙であったと言えます。

しかし、結果としては当選できませんでした。

部外者の私がその原因を分析するのはおこがましいのですが、いくつか私見を述べたいと思います。

まず、今回の選挙全体が自民党・公明党に大変厳しい結果になったことからもわかるように「自民党候補」というだけで逆風が吹いたことは否めません。

次に、彼は処遇改善による介護・福祉サービスの充実を主張しました。

しかし、今回の選挙では、福祉政策は大きな争点にならず、「物価高などの中で庶民の暮らしをどうするか」「増え続ける外国人に対する施策」などに関する政党・候補の主張が有権者の投票行動に大きく影響しました。

特に外国人施策に関しては選挙が始まってから急にクローズアップされた感もあります。

この部分で有権者に刺さる公約や主張を持っていなかった候補者は厳しい戦いを強いられました。

彼の大きな主張である「介護・福祉・保育・学童職員の年収500万円の実現」に関しては業界内では誰も反対する人はいないでしょう。

実際に現場で働いている人にも受け入れられやすい主張と言えます。

彼は、介護であれば介護報酬を決める審議会や分科会の委員に当の介護事業者がほとんどおらず、学者や保険者(自治体)、医師など直接関わり合いのない人たちが多いことを問題視していました。

「自分たちの報酬は自分たちで決める」という仕組みをつくることで従事者の処遇改善を目指しました。

一方で、従業員の処遇改善は介護業界の労働組合も以前から訴えていますが、彼らが支持するのは野党ですから自民党候補への投票は非現実的です。

また、労組という性格上「介護報酬や処遇改善交付金などは経営者層のところで搾取されてしまい、末端の従事者まで行き届いていない」と、経営陣に問題があるという主張をしがちです。

つまり「介護人材の処遇改善は絶対に必要だ」という考えは一緒でも、介護職が低所得な理由やその是正方法に関する認識には、事業者団体の代表である候補者と、労組組合員である介護職員の間には大きな差があったかもしれません。

彼が再チャレンジをするにしても、彼の志を継ぐ別の人物が挑戦するにしても、この「処遇改善に関する同床異夢」の解消は不可欠かと思います。

実際、介護現場のスタッフで報酬改定に関する審議会の議論の様子を細かくチェックしている人はほとんどいないでしょうし、自分が働いているサービス種別の報酬がどのように改定されたかを正しく把握している現場職も少数かと思われます。

そもそも「介護報酬は国が決め、3年ごとに改定される」こと自体を知らないスタッフもいるでしょう。

これでは「自分たちの所得を増やすにはどうしたらいいか」という思考には至りません。

事業者がマナーや介護技術だけでなく、「介護報酬が決まる仕組み」や「報酬改定をめぐる議論の方向性」などに関してもスタッフに教育をしていかないと、業界が一丸となるのはなかなか難しいかもしれません。


介護の三ツ星コンシェルジュ

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