高級老人ホームは「けしからん」? まだまだ強い高齢者向けサービスへの誤解
近頃は、介護事業者がSNSで広告を打つケースも増えてきました。
Facebookの広告にも、首都圏で約30棟の高齢者住宅を運営する民間介護事業者が広告を打っています。
その広告のコメント欄にある人が「金持ち専用。貧乏人には入れない」と書き込んでいました。
Facebookですから、原則として実名でしか書き込みできません。
私はこれを見て「なぜこの人は、わざわざ実名をさらしてまで、こんな書き込みをしたのだろう」と正直理解に苦しみました。
この会社が運営する高齢者住宅は、物件にもよりますが横浜市あたりですと、入居金ゼロプランなら月35万円程度・入居金1000万円程度を払うプランなら月に19万円前後です。
確かに安価な高齢者住宅ではありませんが、特に超高級物件というわけでもありません。
まあ、いくらからが「金持ち専用」なのかは個人的な尺度の違いもありますから、ここでは深く考察はしません。コメントをした人が、この会社の高齢者住宅を「金持ち専用」と判断するのは自由です。
しかし、それをわざわざコメントする必要があるのでしょうか。
高齢者の中には富裕層から生活互保護受給者まで様々な資産状況の人がいます(それは、高齢者に限った話ではありません)。
そうした多様性のあるマーケットの中で、どこの層を対象にした高齢者住宅を供給するかは、民間企業であれば全くの自由です。
仮に間にある高齢者住宅が、全てのこの会社の価格帯ならば、「庶民は高齢者住宅に入れない。けしからん」という意味でこうしたコメントをするのは理解できます。
しかし、実際には、低所得の人には特別養護老人ホームがありますし、民間の高齢者住宅でも生活保護受給者を受け入れているところはたくさんあります。
住んでいる地域によって多少状況には差があるでしょうが、「所得・資産に応じて複数の高齢者住宅から選択ができる」というマーケットは整備されています。
もし、このコメントをした人が「この高齢者住宅は金持ち専用」と思うのであれば、黙って他社が運営する高齢者住宅に入ればいいだけの話です。
それにも関わらず、わざわざコメントするというのは「高いのはけしからん」という思いがあるのではないかと思います。
しかし、世の中には、マンション、ホテル、外食、車、家電製品、服などあらゆる商品・サービスにおいて、庶民的なものから高価格のものまで幅広く供給されています。
このコメントをした人は、帝国ホテルや三越、三ツ星レストランについても「金持ち専用。貧乏人は買えない、利用できない」とSNSで文句を言っているのでしょうか?おそらくそんなことはないかと思います。
このコメントにあるように、世の中には富裕層向けの商品やサービスがたくさんあるのに、こと高齢者向けとなると「高齢者から金をむしり取るのはけしからん」という論調になりがちです。
しかし、金のない高齢者に借金をさせてまで利用させているのであればともかく、資金力のある高齢者自身が「高い金を払っても質の高いものを買いたい・利用したい」と思っているのですから、何の問題もありません。
富裕層向けの商品・サービスがあれば、それを提供するスタッフは接遇マナーや身だしなみなど一流のものを求められます。そうした人たちが同業他社に転職することで業界全体の質が上がります。
また、サービス業界が高級ホテルのリッツ・カールトンを目標にするように、富裕層向けのものがある業界は各社の切磋琢磨も進みます。
介護の業界だけがいつまでも「高級はけしからん」という風潮では、サービス品質の向上も進みませんし、就業したいという人も増えないのではないか、と個人的には感じています。
介護の三ツ星コンシェルジュ