ヘルパー不足よりも深刻なケアマネ不足② 就労者増にむけ、資格要件の見直しも視野に
コラム①で紹介したように、2018年以降はケアマネジャー試験の合格者数が年1万人前後と、以前の3分の1程度の水準に落ち込んでおり、将来のケアマネ不足が懸念されています。
この背景には、ケアマネの仕事に以前よりも魅力を感じる人が減ったことが考えられます。
厚生労働省ではこうした事態を受け、有識者による「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」を立ち上げました。会合は2024年4月から合計6回開催され、12月12日に、それまでの議論の中間整理を発表しました。
検討会の主な議題は以下の通りです。
それぞれに、議論の中でどのような意見がでてきたのか、簡単にまとめてみました。
議題1 ケアマネジャーの業務の在り方について
「近年では、独居高齢者や認知症の人への支援の増加、本人や家族が抱える課題の複合化・複雑化などにより、ケアマネが本来の業務以外の幅広い相談・依頼に対応せざるを得ない」という現実が示されました。
これにより、ケアマネの業務量が増え、本来の業務に支障を来しているという問題が生じています。
こうした事態への対策として「法定以外の業務については、地域課題として地域全体で対応を協議すべき」としています。
しかし、ケアマネとしての業務経験が浅い場合には「自分の地域にどのような専門家がいるのか」などといった情報もまだまだ十分でなく、相談・要望を地域につなぐための業務自体が大きな負担になることも考えられます。
議題2 人材確保・定着に向けた方策について
ケアマネ試験の合格者が減少している現状に対し「他産業・同業多業種に見劣りしない処遇の確保とともに、書類の様式の見直しなど事務負担の軽減を図ることが重要」との意見が示されました。
しかし、コラム①でも書いたように、現状ではケアマネが担当できる利用者数には上限があり、処遇改善には限界があります。「ケアプラン作成時の自己負担導入」は処遇改善について一定の効果がありそうです。
しかし、これについては10年以上前から介護報酬改定の際に議題になっていますが、当のケアマネから「かえって公正なケアプランを作れなくなる」といった反対も強く「継続して議論」の状態が続いています。
また、ケアマネ試験の受験要件が「実務経験5年以上」なっていることが、受験ハードルの高さや、ケアマネの高齢化につながっているという指摘から、「一定要件を満たした場合は実務経験年数を見直す」との考え方も示されました。
しかし、これによるケアマネの質の低下を防ぐことも需要であり、合格後の研修が増加することも考えられます。研修については、このあと詳しく述べます。
議題3 法定研修の在り方について
「研修は経済的・時間的な負担が大きい」というケアマネからの声が多いことを受け、法定研修の負担の軽減を図ること考え方が示されました。 特に更新研修については大幅な負担軽減の必要性を認めています。
オンラインによるオンデマンド研修の実施などについても言及しています。議題2であがったように、資格要件が緩和されれば、その分は研修でカバーせざるを得なくなります。受講者の負担の少ない研修の実施は急務であるともいえます。
このように、ケアマネ不足解消策については、現実的には様々な課題があります。また、本人や家族との関りでいえば、いわゆるカスタマーハラスメントの問題もあり、精神的な負担が理由でケアマネが離職してしまうケースもあります。
制度の改革などで対応できることは早急にすべきですが、利用者がケアマネと正しい付き合い方ができるように、介護業界全体で消費者に対する啓発を行っていくことも大切なのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ