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ヘルパー不足よりも深刻なケアマネ不足① 試験合格者数は一時期の3分の1

 介護業界の人手不足が叫ばれるようになって久しいですが、不足しているのは直接的に介護を提供するスタッフだけではありません。
それと同じぐらいに今後深刻になると予想されているのが「ケアマネジャー不足」です。

 高齢化や家族の介護力の低下に伴い、今後も介護保険サービスを利用したい人の数は増えていくことが考えられます。それに対してケアマネジャーの数が不足していれば「待っているのにケアプランを作成してもらえない人たち」が出てくることも考えられます。

 ケアマネ試験の受験者数は2006年度から2017年度までは概ね13万人~14万人程度で推移していました。しかし2018年度は約5万人と一気に4割近くまで落ち込み、現在も回復していません。

 合格者数も同様で、2017年度までは概ね3万人前後でしたが、2018年度以降は1万人前後で推移しています。

 仮に35歳でケアマネになったとすると、2006年度に合格した人は今年53歳。介護事業者に雇われているケアマネは、もう7年もすると定年退職です。

 自分で居宅介護支援事業所を経営している場合は、もう少し長く活動するでしょうが、それでも10年もすると年齢的にも引退を考える人が増えてくると思われます。
つまり、なるべく早く合格者数を増やさない限り、近いうちにケアマネ不足が起こることは避けられないのです。

 では、なぜここまで急速にケアマネ試験の受験者数が減ってしまったのでしょうか。

 理由の一つが「ケアマネでは食べていくのが難しくなった」ことです。

 ケアマネの場合、1人が担当できる人数には上限が設けられています。同じ医療・介護関係の専門職でも訪問医や訪問看護師、訪問リハビリ職などは、自分の体力や時間が許す限り患者・利用者を抱えることができるのと比べても、実に不思議な話です。

 理由としては「担当高齢者一人ひとりにしっかり向きあい、質の高いケアプランを作成するため」言われていますが、なんとも納得しがたい話です。このため居宅介護支援事業所を開設したとしても売り上げの上限が決まってしまいます。

 そうしたところに、昨今の各種コスト増が加わり、ケアマネとして働くことの「うまみ」が以前に比べて少なくなっています。

 また、近年は国の処遇改善加算や介護事業者独自の努力により介護職員の処遇改善が急速に進んでいます。

 例えば、①大手介護事業者、②夜勤のある高齢者住宅勤務、③勤続10年、④介護福祉士資格あり、などの条件であれば、年収で500万~600万円程度などという話も出てきています。

 こうした中で、ケアマネの処遇改善は置いてきぼりとなっている感があるのは否めません。この結果として、若手介護職が自身のキャリアアップとして、ケアマネよりも「介護の現場業務を極める」を選択するという動きが強まっています。

 そして「ケアマネの業務の複雑化・多様化」です。

 ケアマネの本来の業務は、担当する高齢者の身体状況などを正確に把握して、本人にあったケアプランを作成することなのですが、ときには担当の高齢者やその家族などから「今度来るときでいいので、○○を買ってきて欲しい」「病院まで行くならついでに車で乗せていって欲しい」などの本来の業務外のことまで要求されるケースがあります。

 そして、それらを断り切れず、報酬にならない業務の量がどんどん増えてしまっている、という現実があります。

 ケアマネを取り巻くこれらの問題の解決に向け、厚生労働省は有識者会議「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」を立ち上げました。

 2024年4月の第1回から合計6回の会合を行い12月12日に「中間整理」を発表しました。
次のコラムでは、この内容について詳しく見ていきます。


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