外国人介護人材、都市部への流出が課題 「給与に不満で転職」は日本よりも一般的
11月21日、関西経済連合会アジアビジネス創出プラットフォームと大阪外国人材採用支援センターが主催するセミナー「外国人介護人材の行方」が大阪市内で開催されました。
当日は厚生労働省社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室の吉田昌司室長が「外国人介護人材の現状と今後について」による基調講演のほか、吉田室長に2名の介護事業者を加えてパネルディスカッション「日本の介護が選ばれるために」が行われました。
今回は、その中から、外国人介護人材に関するトピックスをいくつか紹介します。
まず、外国人介護人材と言えば「訪問系サービスへの就労が可能とする」ということが近年の大きなトピックスといえます。
「いつからスタートするのか」「訪問サービスでの就労に際して、日本語能力などの要件を課すのか」などの詳細は未定です。
これについてパネリストの1人は「外国人の場合、運転免許を持っていないことが大半と思われる。 自動車での訪問が基本となる地方では難しいのではないか。自転車で訪問できる都市部の介護事業者、もしくはサービス付き高齢者向け住宅など以外にはメリットがないのでは」と、効果はかなり限定されるとの見方を示しました。
また、地方の介護事業者にとっては「外国人人材の都会への流出」も懸念されます。
特定技能、そして技能実習制度に代わり新たに設けられる育成就労制度では、一定の要件を満たせば他の職場に移ることが可能です。
「異国の地で苦労してでも稼ぎたい」と考える彼らにとって、給与の低い地方から給与の高い都会へ転職することはごく自然な考えです。
日本人にはちょっと理解しにくいのですが、外国人介護人材はお互いの給与明細を見せ合うそうです。
その結果として「なぜ、自分は同じ国の仲間に比べて給料が低いのか」などという不満を募らせることにもなります。
このセミナーで出た話ではありませんが、ベトナムではボーナスが出た直後に「同僚よりも少なかった」「去年よりも減っていた」などの理由で転職をする人が非常に増えるそうです。
彼らは金銭に関してはかなりシビアですし、転職に関しても日本人ほどネガティブな印象は持っていないため、待遇面の不安は転職に直結します。
今後外国人人材を本格的に活用していく際には、待遇面を含めた「定着支援策」をいかに講じていくかが重要になると言えそうです。
パネリストの1人によると、来日した外国人のうち、およそ1割が3年で帰国をします。
残りの9割のうち3分の2は、転職も含めて何らかの形で働き続けますが、残り3分の1は結婚や出産などといった個人的な事情で帰国をするそうです。
しかし、それら帰国者の中には再来日を希望する人も一定数います。
例えば、EPA介護福祉士候補生のインドネシアからの受け入れが始まったのは2008年度。もう16年も前になります。出産で帰国をした人の中には「育児が一段落した」というケースも少なくないでしょう。
今後はこうした「再来日希望者」を日本に迎え入れ、働いてもらえるようなスキーム作りも必要といえます。
ただし、来日就労経験のある外国人は日本語が話せます。そのため帰国後は日系企業などで比較的高給で働いているケースもあります。
そうした人は、日本で働きたいが、肉体的にきつく、給与もそう高くない介護現場での就労を希望しないことも考えられます。
現場ではなく本社スタッフとして日本と母国の橋渡し的役割を担ってもらったり、就労している外国人の各種サポート(通訳やメンタルケアなど)に従事してもらったりなど、新たなポストを用意する必要もあるのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ