介護業界の離職率は過去最低を記録。優良事業者はどんな努力をしているか
介護業界における人材確保と定着は長年の課題でしたが、令和5年度介護労働実態調査の結果から、介護職の離職率が過去最低を更新したことが明らかになりました。
この結果は業界全体にとって朗報であり、その要因を探ることは今後の人材戦略に重要な示唆を与えてくれます。
離職率の低下傾向
令和5年度の調査によると、介護職員の離職率は13.1%となり、前年度から1.3ポイント低下しました。
これは2007年度以降で最低の数字であり、全産業平均の15.0%を下回っています。この結果は、介護業界が人材定着に向けて着実に進歩していることを示しています。
離職率低下の主な要因
1. 職場の人間関係の改善
離職率低下の最大の要因として挙げられているのが、職場の人間関係の改善です。調査結果によると、離職率が低下傾向にあると回答した事業所の63.6%が「職場の人間関係がよくなったため」を理由として挙げています。
人間関係改善のための取り組みの主なものとしては
①上司との定期的なミーティングや意見交換会の実施
②チームワーク強化のための研修や活動
③メンター制度の導入等が挙げられています。
2. 労働環境の改善
次に重要な要因として、労働環境の改善が挙げられます。
具体的には
①残業削減
②有給休暇の取得促進
③シフトの見直しに各事業者が取り組んだ結果、ワークライフバランスが改善され、職員の満足度向上につながっています。
3. 介護の質向上への取り組み
職場全体で介護の質を高めるための意識共有も、離職率低下の重要な要因となっています。介護職員が自身の仕事に誇りを持ち、専門性を高められる環境づくりが進んでいることがうかがえます。
介護の質向上のための取り組みとして各事業者が取り組んでいることは
①継続的な研修制度の充実
②キャリアパスの明確化
③資格取得支援等が挙げられています。
4. 賃金水準の向上
介護職の待遇改善も離職率低下に寄与しています。36.3%の事業所が「賃金水準が向上したため」を離職率低下の理由として挙げています。
政府の処遇改善加算などの施策が、徐々に効果を表しているといえるでしょう。
職種別の離職率の違い
介護職全体の離職率が改善傾向にある一方で、職種によって状況が異なることも注目に値します。
特に看護職員の離職率が15.3%と高く、採用率も19.6%と最も高くなっています。これは、看護職員の需要が高く、転職機会が多いことを示唆しています。
一方、サービス提供責任者や生活相談員は内部異動で着任することが多いため、採用率が低くなっています。
職種別の離職率.pdf ( 7 KB )
今後の課題と展望
介護職の離職率低下は喜ばしい傾向ですが、依然として課題は残されています。
1. 看護職員の定着率向上
看護職員の高い離職率に対応するため、キャリアパスの明確化や専門性を活かせる職場環境の整備が必要です。
2. 継続的な労働環境の改善
人間関係や労働条件の改善は一朝一夕には実現しません。継続的な取り組みと、定期的な従業員満足度調査などを通じて、常に改善を図る姿勢が重要です。
3. 介護の社会的評価の向上
介護職の社会的地位向上や、やりがいのある職業としての認知度を高めることで、新規人材の確保と既存職員の定着率向上につながります。
4. テクノロジーの活用
介護ロボットやICTの導入により、業務効率化と身体的負担の軽減を図ることで、より働きやすい環境を整備することができます。
令和5年度介護労働実態調査の結果は、介護業界の人材定着に向けた取り組みが実を結びつつあることを示しています。
職場の人間関係改善、労働環境の整備、介護の質向上への取り組み、そして待遇改善が相まって、離職率の低下につながっています。
しかし、職種によって状況が異なることや、依然として人材不足が課題であることを考えると、今後も継続的な改善努力が必要です。
介護業界全体で、これらの成功事例を共有し、さらなる改善に向けて取り組むことが、質の高い介護サービスの提供と、働きがいのある職場づくりにつながるでしょう。
介護の三ツ星コンシェルジュ