在宅医の4割が「訪問先で身の危険を経験」 どうする?訪問医療・介護職の安全対策

「刃物で脅される」「軟禁」などの被害も

ある在宅医の団体が今年2月に会員などに実施したアンケート調査によると、在宅医の4割が、患者やその家族とのトラブルが原因で身の危険を感じた経験があるそうです。
具体的な経験としては「暴言を吐かれる」「脅迫電話」などのほかに「刃物で脅される」「訪問先で長時間軟禁される」「物を投げつけられる」「暴行を受ける」などの身体・生命に危険が及ぶ可能性のあるケースが報告されています。
また、そうした場合に備えて「複数名で訪問する」「防犯ブザーや催涙スプレーなどの護身具を携帯する」「護身術を身に付ける」など、相当の費用や手間を要する対応を強いられています。

この結果にもあるように、利用者宅を訪問する医療職が危険な目に遭う可能性は決して低いものではありません。
また、同様のリスクは介護職にもあります。

精神疾患を持つ人を対象に訪問看護を行っている会社では「訪問したら、利用者が一心不乱に包丁を研いでいた」ということもあるそうです。
こうした場合に備えて、なるべく屈強な男性看護師を担当させるようにしていますが、それにも限界があります。
「ドアを開けた瞬間に普段と異なる雰囲気を感じたら、そのまま戻ってくるように」とこの会社では指導しているそうです。

高齢者介護の場合は、利用者は力が弱く、身体が十分に動かないことから、直接ヘルパーに危害を加える可能性はまだ少ないと考えられます。
しかし、それ以外の人がヘルパーに害をなすケースがあります。

ある介護会社では、夜間帯の訪問は移動時の安全面を考慮して車を利用していました。
しかし、それに対し利用者宅の近隣住民の1人が「うるさい」「路上駐車が迷惑だ」と苦情を言うようになりました。
利用者宅の近くにはコインパーキングが無かったため、ヘルパーは集落から少し離れた路上に駐車して対応しましたが、その住民はわざわざ車を探し出し、その前で訪問先から戻って来るヘルパーを待ち構え、長時間暴言を吐くようになりました。
結局、この会社では2人で訪問し、1人はヘルパーを下した後に離れた場所まで移動して車中待機するという対応を取らざるを得なくなりました。

このように、訪問ヘルパーや訪問看護師、在宅医は訪問先で様々な危険な目に遭う可能性があります。
事業者としては、その安全対策を十分に講じていく必要があります。

老いや死に対する理解不足がトラブルの原因に

同じような課題を抱えていたのが賃貸住宅の仲介店です。
物件の内見時に女性スタッフが内見客に暴行される事件が発生していました。
その対策として、女性スタッフには防犯ブザーなどを携帯させるほか「内見先で、内見者の友人などを称する第三者が合流した際には、内見を中止して帰社する」「訪問先では玄関のカギは閉めない・可能であればドアを開放しておく」「屋内では常に相手よりも入り口に近い位置にいるようにする」などの詳細な対応マニュアルを作成しました。
介護業界の場合はベッドの位置などもありますので、屋内で自分が常に逃げられる場所に滞在するのは難しいこともありますが、こうした他業界のマニュアルなども参考にして対応策を考えていきましょう。

冒頭で紹介したアンケートは、今年1月に埼玉県内で在宅医が患者の家族に殺害された事件を受けて実施されたものです。
この事件では、母親の死を受け入れることができなかった息子が在宅医を逆恨みしたことが原因といわれています。
このように利用者本人・家族が老いることや死ぬこと、介護や終末期医療について十分な知識や正しい認識を持っていないことがトラブルの原因になることは十分に考えられます。
サービスを開始する前に介護・診療方針や、今後予想される事態などについて、書面などで十分に説明をしておくことも求められます。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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