「ねんきん定期便」から読み解く未来
「ねんきん定期便」 の歴史
覚えている方も多いと思いますが、旧社会保険庁の時代、2004年頃から公的年金に絡む不祥事(国会議員の年金未納やグリーンピア事業の失敗など)が相次ぎ、問題となりました。
また、納付者が特定できない年金記録がなんと5,000万件以上もあることが判明し、当時は公的年金の信頼性が大きく揺らいで、私の周りでも年金保険料を払わないと言い出す人が結構いらっしゃったのを覚えています。
結局、2009年末に旧社会保険庁が解体された後、新たに日本年金機構が年金業務を引き継ぎ、クリーンで透明な年金の事業運営の一環として、2009年4月から「ねんきん定期便」が送られてくるようになっています。
ちなみに、2020年9月時点で、当時未解決だった年金記録は未だ約1,800万件(35%)ほど残っている状況です(※参照サイト「日本年金機構:年金記録に関する取り組み」より)。
概要について
「ねんきん定期便」は、毎年、被保険者の誕生月に届きます。
定期便を受取ったら、まずは記載内容(住所、氏名など)が合っているかどうか、年金記録の「漏れ」や「誤り」がないか確認してみてください。転職が多い方や結婚で苗字が変わった方は特にご注意ください。
ねんきん定期便から分かる5つの保障
日本の公的年金制度は老後にもらえる年金だけでなく、これからの人生で、色々な状況に応じて受け取れる保障が用意されています。
(1) 健康に長生きした場合
老齢年金:これまでの加入実績に応じた年金が原則65歳から死ぬまで受取れます。なお、1961年4月1日以前生まれの男性及び1966年4月1日生まれの女性は、65歳よりも早く特別支給の老齢厚生年金が受取れます。
(2) 病気やけがで入院や手術をした場合
高額療養費:病院の窓口で支払う医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分は払い戻しされます。ご自身の「標準報酬月額」によって、自己負担の上限が変わります。
(3) 働けなくなった場合
傷病手当金:病気やけがで仕事ができないときに、4日以上連続で会社を休んだときに支払われます。標準報酬日額(直近12か月の標準報酬月額÷30)の3分の2に相当する額を最長1年6か月受取れます。
出産手当金:妊婦さんの産前産後の休業期間中の生活を保障してくれます。支給額は上記と同じで、出産日以前42日目~出産日の翌日以後56日目までの範囲で、会社を休んだ期間について支給されます。
(4) 重い障害が残った場合
障害年金:障害等級1級、2級又は3級に認定されると障害年金が支給されます。障害等級によって決められた計算式で算出された年金額が支払われます。
(5) 死亡した場合
遺族年金:亡くなってしまった場合は、ご自身が受取ることができなかった年金が、残されたご家族に支払われます。
ねんきん定期便があれば、人生で起こるもしものときの保障やライフプランを考える上で必要なお金がどれくらいもらえるのかを知ることが可能です。ぜひ一度確認してみてはいかがでしょうか。
なお、現行の公的年金制度には色々な問題があり、年金保険料を払ってももらえないのではないかという意見も聞かれますが、個人的には、今後も改善されながら持続可能な形で維持されていくのだと思います。
何らかの理由で未加入や未納状態になっている方は、上で説明した保障がまったく受けられない可能性がありますので、公的年金制度の内容をきちんと理解して、免除や猶予等の手続きを取っておくことをお勧めします。