失敗しない老人ホームの選び方~人員配置の考え方~
介護付有料老人ホームの人員配置の考え方
そもそも介護付有料老人ホームとは何か?
介護保険法上では、特定施設入居者生活介護というサービスの許認可を受けた有料老人ホームもしくはサービス付高齢者向け住宅のことを言います。
特定施設入居者生活介護とは民間版の特養です。
特に都心部では、地価の値上がり等もあり、公だけでは必要な数の特養が整備できる状況ではありません。
そんな状況に対応して「民間で特養的なサービスを提供できる介護施設を作ってください」ということで作られました。
ですので、施設の基準(建物、設備等)、サービスの基準(1週間あたりの入浴の回数、看護体制)、サービス提供人員の基準(入居者数:直接処遇職員数)は特養に準じて規定されており、その基準を下回る場合は介護報酬の返還を命じられたり、最悪の場合、指定取り消しにもなりかねません。
また、許認可を付与される法人の経営状況も厳しく審査されます。
ですので、介護付有料老人ホームは大手事業者か社会福祉法人が多いのが現状。
一般的に住宅型有料老人ホームより介護付有料老人ホームの方が人気があるのは、こう言ったことが影響しているのかもしれないですね。
人員基準(入居者数に対する直接処遇職員の数)は特養は3:1。
加えて管理者、生活相談員、計画作成担当者(一般的にケアマネ)、看護職員(日中、最低1名)の配置が義務付けられています。
介護付有料老人ホームの場合、最低3:1をクリアしていますが、それ以上配置するのはホームの自由。
2.5:1、2:1、1.5:1、1.2:1等施設によってバラバラです。
看護師の配置も日中1名のところもあれば、24時間1名配置、日中2名配置と様々。
「医療体制が充実」と謳っている場合は24時間看護師常駐の場合が多いです。
その他、
レクリエーションや精神的ケアを充実させるために生活相談員を多めに配置しているところ、
理学療法士や作業療法士等リハビリ専門職員を配置し、リハビリを充実させているところ等、ホームにより独自の特長がありますので、パンフレットやホームページを見て、入居者の心身状況や希望にあったサービス提供を行ってくれるホームを探しましょう。
ここに注意!!!3:1は常時3:1ではない
人員基準の中で気を付けておかなければならないのは直接処遇職員比率。
3:1と表記されていると、どの時間帯でも入居者3名に1名の職員が配置されているように思いがちですが、実際はそうではなく、職員1名の考え方は常勤で1名。
ホームの常勤の月間労働時間は176時間が一般的。つまり1日8時間勤務であれば21日働いている方を1名と考えます。
1日は24時間、1月30日と考えると、月間の総時間は24×30=720時間。
常勤職員1名で176時間ですから、実際は4名の常勤職員で月間の総時間を埋めていくことになります。
単純に計算すると、3:1の施設は、実際には12:1(1名の職員で12名の入居者のサービス提供を行う)ということになります。
2:1の施設だと実際は8:1、1.5:1の施設だと実際は6:1ということになります。
こう考えると、直接処遇職員比率は重要な判断基準になります。
3:1の施設では、モーニングケア、食事介助、イブニングケア、入浴介助、生活支援サービス(清掃、洗濯等)をこなすのに精一杯。
レクリェーションも2回/週程度、認知症の方の対応も十分には出来ないのが現状。
ただ、ホームの運営経費に占める職員の給与は50%を超えるのが現状。現在の介護保険支給額では、多めの人員配置を行うと赤字になりかねません。
ですので、一般的に多めの人員配置を行っている所は、自費の「上乗介護費用」が設定されています。
1.5:1の人員配置を行っているホームでは10万円/月程度の上乗せ介護費用を設定しています。介護の沙汰も金次第ですよね。
情報が満載!!重要事項説明書!!
夜間の人員配置も大切。40人程度の施設では夜間の配置職員が1名というところも少なくありません。
そういったホームの夜間は職員にとって戦場!!。ナースコールにも十分に対応できません。
20人に1名程度、フロアに1名程度の夜間職員を配置しているホームをお勧めします。
看護師の配置も重要。
常時何がしかの医療行為が必要な方は24時間看護師配置のホームでないと、いずれは退居しないといけません。
折角、終の棲家として選んだホームが、病気により入院後、退院を拒否される場合も多々あります。
ホームの人員配置が正確に記入されているのは「重要事項説明書」。
下記重要事項説明書例に示したホームですと、直接処遇職員比率は1.13:1(実際の配置は約4:1)、夜間も看護師1名配置なので24時間看護師常駐、リハビリ体制も理学療法士4名配置、夜間も介護職・看護職で5名配置と人員配置に優れたホームで要介護者には安心のホームではないでしょうか。
因みにこのホームの月額利用料金は要介護3の方で約42万円(税抜)。高価格帯のホームです。
住宅型有料老人ホームの人員配置を知るためには?
介護付有料老人ホームは、法的に人員配置が規定されていますので、「重要事項説明書」に配置人員がきちんと明記されています。
住宅型有料老人ホームは、「重要事項説明書」だけではよくわかりません。
サービスを上手く組み合わせて運営をしているホームは介護付有料老人ホームにサービス内容で劣ることもないのが現状。
住宅型有料老人ホームでは見学時に対応されて職員さんに以下の質問を行ってみて下さい。
・介護サービス、看護サービス、ケアプランはどこの会社のサービスが入っているか?
・直接処遇職員比率は大まかに計算するとどれくらいになるのか?
・夜間の職員体制は?
・リハビリを受けたい場合に介護保険サービス内で利用できるか?(リハビリの視点)
・看護サービスはどのように提供しているのか?介護保険サービス内で利用できるか?(看護の視点)
・他社のデイサービスは利用可能か?介護保険サービス内で週に何回程度利用できるか?(レクリエーシンの視点)
・介護保険サービスの利用限度額を超える場合、追加費用を払う必要があるか?(料金の視点)
これらの質問をしてみて、対応される職員が、
「うちは介護付有料老人ホームではないので、直接処遇職員比率は答えられない。」
「介護保険利用限度額を超える場合は、その時に協議しましょう。」
と言ったような曖昧な答えしかできないホームはNG。
サービスに自信を持っているホームの職員であれば、自信を持って、詳細を教えてくれるはずです。
終の棲家を決めるホーム選びはとても重要。
人員配置、職員の職種等をきちんと調べてからホームを選ぶことをお勧めします。