前回から、更衣の必要性についてのコラムを掲載しておりますが、今回はそんな更衣のやり方についてのコツを簡単にご説明させて頂きたいと思います。私は介護施設で働く前に、介護初任者研修の資格を取得するために講座を受講していました。その時の講師の方々は、普段施設職員として働いておられ、副業で講師をしておられる方がほとんどでした。その時に更衣関係で教えて頂いたことは、半身麻痺がある方の更衣は「脱健着患」が基本という事でした。

脱健着患

脱健着患という言葉を初めてお聞きになった方も多いのではないでしょうか。「脱健着患」とはどちらかの手足が不自由な場合、衣服を脱ぐ時は健康な健側から、着る時はケガや病気、麻痺などがある患側からという事です。麻痺や病気がある場合、更衣の動きが制限されてしまう事があり、そのために自由に動かすことが難しい患側から衣服を着て、脱ぐ時は、自由に動かすことのできる健側から行う事により、スムーズな更衣が行えるようになり、利用者も職員も安心した介護になると考えます。

更衣のコツ

施設で更衣介助をする時は、座った状態での更衣と、寝たままの状態での更衣が主流になっていると考えられます。ボタン付きか、かぶりタイプの上着により多少の違いが出てくると思われますが、
1つ目は、何よりも着替えやすい衣類を選ぶ事が大切です。サイズにゆとり、伸縮性があり、マジックテープか大きいボタンが使われている衣類であると、更衣介助をする側もされる側もお互いに余裕ができ、介助がしやすくなると思います。
2つ目は、関節を意識して介助を行う事です。上着の袖を通す時は、ひじや手首を支え、関節を安定させて腕を通すことを意識すると、袖の中で手が引っかかったりすることが減り、手首を変な方向に曲げてしまうなどの事故防止にも繋がります。
3つ目は、腕や足を支える際に握らない事です。高齢者の皮膚は薄く、軽く握ってしまっただけでもアザになったり内出血ができてしまう可能性があります。誤って握ってしまい、アザなどができてしまった場合はすぐさま上長への報告をするようにしましょう。
4つ目は無理な関節の動きをしない事。ついつい上着やズボンが脱げないからといって無理やり引っ張ってしまった事はありませんか?腕や足を無理な方向へ引っ張ってしまっていませんか?高齢者の方々は麻痺等が無いとしても、体関節の可動域は小さくなっている可能性があります。無理な更衣は骨折や、脱臼などに繋がってしまうかもしれませんので注意をして下さい。
5つ目は、時間を理由に職員がすべてをやらないようにする事です。現場が忙しいがために更衣をできる方であっても、職員が介助して全更衣したりはしていませんか?ボタンを付けられていた方ができなくなったり、自身でやらなくなったりADL(日常生活動作)の低下がみられるようになるので、できる限りご自身の力で更衣をしてもらい、できないところのお手伝いを意識して介助に入りましょう。

経験談

施設の現場にいた時のお話ですが、夜の更衣でパジャマに着替えるのが嫌だと仰る方がいらっしゃいました。スタッフの性別で判断されているわけでもなく、ただ更衣が嫌なだけの方でした。当初はなぜ更衣が嫌なのかについての会議も行ったりしておりましたが、なかなか答えにはたどり着かず、外出用の格好で過ごされていました。そんな時、ご家族様が訪問され、その事について伺ってみると、もともと家におられる時から、パジャマ姿で行動されており、外出時に外用の服に着替えて戻ってくるとすぐパジャマに着替えるとの情報を伺いました。どうも利用者の方からすると、施設で暮らしている感覚よりも旅行に来ていると思われているようで、今いる施設は家ではないからパジャマに着替えないのでは無いかとの結論に至りました。その後ご家族様からも、無理に着替えさせる必要は無いので、入浴後の更衣と温度調節をしっかりと対応してくださいとお願いされ対応するようになりました。

無理やりする事ではない

更衣をすることは大切です。けれども高齢者の方々の生活のリズムを壊してまで行う事ではありません。更衣をしないからといって命に関わることは少ないと思われます。時期に合った服装や寝具を用意し、入浴時には必ずボディーチェックを行い、確認する要点をしっかりと行えていれば、不満なく施設で暮らしていくことができるのではないのでしょうか。常識にとらわれる事無く、1人ひとりに合ったケアを行えるように、現場の職員同士協力して頑張ってください。

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この記事を書いたコラムニスト

中川友貴 (ナカガワトモタカ)

株式会社ベイシス 営業部 シニア課

2016年 住宅型有料老人ホームで介護職員とし入社。3年目からサービス提供責任者を従事後退職。
2020年 株式会社ベイシスへ入社し、シニア事業部 主任に就任。 

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