ボクはやっと認知症のことがわかった 認知症専門医長谷川和夫先生の著書より③

「痴呆界の長嶋茂雄」。
痴呆ケアの第一人者として「長谷川式簡易知能評価スケール」を公表された認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授の長谷川和夫先生が、自身の認知症を公表され、その後に執筆された本を拝読しました。

認知症研究の第一人者が自ら認知症になられて感じたこと、考えたことを書かれています。
今回は、その内容で私自身が感銘を受け、教えられたことを3回に分けてご紹介させていただいた連続シリーズの第3回です。

社会や医療は何が出来るのか?

先生は本書の中で「地域ケア」の重要性を説かれています。
子供の数が少なくなり、高齢者が増え、家族や地域のきずなが薄れたと言われますが、地域ケアがあるかないかで安心感が大きく変わるようです。
 
先生は認知症になられて、地域ケアの重要性をあらためて感じられたよう。
自身の体験でも、自宅近くにある幹線道をわたっているときに、転んで、地域の方々に助けられた経験をご紹介され、地域全体で、認知症の方をきちんと見てくれる。
必要なときには手を差し伸べてくれる。お互いを大切に思い、ぬくもりのある絆を作って日々を暮らしていくことが地域ケアであることを身をもって感じていると書かれています。
 
認知症の研究者として、治療法がない状況における医師や医療の無力を認識され、それでも医者として何か出来ることはないかと考え、聖マリアンナ大の教授の頃、水曜会というデイケアを立上げ、認知症の患者さんとご家族に参加していただき、ご本人の心の働きを活発にするための様々な試みを語られています。
 
ご家族の支援、相談も兼ねて行われていたよう。
併せて、症状についての医学的な説明やケアの助言についても行っておられたそうです。
現在のケアマネジメントシステム、デイサービス、在宅医療の原点ですね。

オールドカルチャーとニューカルチャー

先生が尊敬するイギリスの牧師であり心理学者のトム・キットウッド氏が、「認知症は脳の恐ろしい病気だという疾患中心の見方をオールドカルチャー、全人格を総合的に捉えた暮らしにかかわるもので、認知症はケアの質により大きく変わるとする見方をニューカルチャーと呼び、医学モデルに基づく従来の捉え方を見直すべきだ」という考えを紹介され、我々は病気や障害などに目を奪われがちだが、あくまで、ます人ありきということが大切だと訴えておられます。

「その人中心」の視点を診察にいれていくためにはどうすればよいか。
試行錯誤の繰り返しであったと書かれています。

医療に携わる者は、オールドカルチャーの弊害をよく身体と心に刻んで、謙虚に診療にあたるべきだとされています。

日本人に伝えたい遺言

本書を締めくくる章として、「日本人に伝えたい遺言」と題し、先生は、次の点を訴えられています。
 
高齢期を迎えるにあたって大切なことは、「老いの準備」と「耐えること」。
また、「宗教の力」を信じることも良いのではと書かれています。
 
そして先生の今の夢は、全国の認知症ケアの指導に当たっている人たちのフォローアップ研修を行いたいそうです。
 
先生は、介護の世界のアフターケアは手薄と感じておられます。認知症の医療、介護の技術や知識は日進月歩。新しい薬も出てくるでしょう。そうした知識や技術を、面と向かって教えてもらえる場所や機会がもっとあったらよいと。それをボクはやりたい。最後のボクの仕事になるかもしれないと書いておられます。
 
認知症はいまや日本だけでなく世界中の課題です。
介護人材の確保やケアの質の向上をどうするかも大切です。
 
最後まで自分らしく生き、逝くにはどうすれば良いか。
長谷川先生は90歳を超えても考え続けておられます。
 
今回は3回に亘、先生の著書の中身をご紹介しました。
結局、先生の言葉のご紹介だけに終わり、自分なりの意見を書けませんでした。
 
皆さん、介護業界に従事されている方、ご家族に認知症の方々いらっしゃる方は、一度、本書を手に取られては如何でしょうか。

この記事を書いたライターをご紹介

荒牧誠也 (アラマキセイヤ)

コラムサイト介護の三ツ星コンシェルジュ編集長

株式会社ベイシス 取締役シニア事業部長
1964年 大阪府大阪市生まれ
1988年 関西電力㈱入社。介護事業子会社 ㈱かんでんジョイライフや医療関係子会社 ㈱かんでん在宅医療サービスの設立や運営に従事。関西電力グループのメデイカル・ヘルスケア事業の企画業務や㈱京阪ライフサポートのM&Aに従事後退職。
2017年 関西電力㈱を退社。㈱ベイシスの取締役シニア事業部長に就任。

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