ボクはやっと認知症のことがわかった 認知症専門医長谷川和夫先生の著書より①

「痴呆界の長嶋茂雄」。痴呆ケアの第一人者として「長谷川式簡易知能評価スケール」を公表された認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授の長谷川和夫先生が、自身の認知症を公表され、その後に執筆された本を拝読しました。

認知症研究の第一人者が自ら認知症になられた感じたこと、考えたことを書かれています。
今回は、その内容で私自身が感銘を受け、教えられたことを3回に分けてご紹介さていただきます。

ショックだったか?

先生自身が認知症になったのでは思われたのは、自分の体験の「確かさ」がはっきりしなくなってきたからだと書かれています。
自分の行動に対しいつまでたっても確信がもてない、「確かさ」がゆらぎ、約束を忘れてしまうということが増える。そういう体験から「認知症に違いない」と思うに至られたそう。
 
「ショック」でしたかと良く聞かれるようですが、「認知症になったのはしようがない。年をとったんだから。長生きすれば誰でもなるのだからあたり前のこと。ショックじゃなかったといえば嘘になるけどなったものは仕方がない。」と思っておられるよう。
 
そして、なおも研究者として、「認知症についての正確な知識を皆さんに持っていただきたかったから。認知症の人は、悲しく、苦しく、もどかしい思いを抱えて毎日を生きているわけですから、認知症の人への接し方を皆さんに知っておいてほしい。認知症を理解して支える存在や、その仕組みが絶対に必要だと思ったから」という理由で、自身の認知症を公表されたようです。
 
長谷川先生は本書を執筆した理由を、
「これまで何百人、何千人もの患者さんを診てきた専門医であるボクが、また、「痴呆」から「認知症」への呼称変更に関する国の検討委員も務めたボクが、認知症になって何を思い、どう感じているか、当事者となってわかったことをお伝えしたいと思ってつくりました。」
と書かれています。
 
認知症研究の第一人者が、自らの認知症を公表するインパクト、訴求性を認識し、認知症について多くの人に、正確な知識を持ってもらい、社会の仕組みづくりに役立てるという強い思いを感じました。

認知症とは「暮らしの障害」

先生は、認知症の本質は「いままでの暮らしができなくなること」だと書かれています。
暮らしとは、朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べて、出かける準備をして、、、、、と言ったこと。それまであたり前に出来ていたことがうまく行えなくなる。
認知症の本質は「暮らしの障害」「生活障害」なのだそう。
 
「じつは自分も認知症なんですよ」と言える社会であることが大事。生活をともにするときの知識や技術を周囲の人が知っておいてくれたら、認知症の人にとっての生きやすさはかなり違ってくると書かれています。
 
最も重要なのは、周囲が、認知症の人をそのままの状態で受け入れてくれること。
「認知症です」と言われたら、「そうですか。でも大丈夫ですよ。こちらでもきちんと考えますから、心配ありませんよ。」と言って、その人との接し方を、それまでと同じようにすること、自分と同じ「人」であるということを第一に考えることが大事なんだそうです。
 
認知症の方を、「あちらの世界の方」と考えがちな私たちにとってとても大事な学びになりました。

認知症になってわかったこと

先生は、認知症になってわかったこととして、
「連続している。人間は生まれた時からずっと連続して生きているわけですから、認知症になったからと言って突然、人が変わるわけではなく、昨日まで生きてきた続きの自分がそこにいます。」と書かれておられます。
それから、認知症は「固定されたものではない」ということ。普通の時と連続性があるということ。朝、昼、夕、夜と状態が違うということを、自分が認知症になって初めて身をもってわかってきたそうです。
「認知症は固定したものではない。変動するものです。調子のよいときもあるし、そうでないときもある。」
周囲の皆に、「何もわからなくなってしまった人間」として一括りにしないでいただきたいと書いておられます。
 
存在を無視されたり、軽く扱われたりしたときの悲しみやせつなさは認知症の方でも同じ。何かを決めるときに、ボクたち抜きに物事を決めないでほしい。
認知症の人と接する時に、相手の言うことを良く聞いてほしい。「時間がかかるので無理」と言うのではなく、認知症の人に自分の「時間を差し上げる」という気持ちで待ってあげてほしいと訴えられています。
 
また、「役割を奪わない」、「笑いの大切さ」も訴えられています。
 
認知症の教科書等でも書かれていますが、第一人者が自身の体験を元に書かれると、かなりの説得力を持ち、理解できます。
 
また、自身が体験されたデイサービスやショートステイの感想も書かれています。
結論から言うと、サーヒス提供を行ったスタッフのスキルの高さ、人柄の温かさに感銘を受けられたよう。第一人者が褒めるのですから、今の日本の介護スタッフのスキルの高さや心根の温かさが証明されているようで、私たちの安心できますね。
 
次回は先生が開発された長谷川式スケールについてお伝えしたいと考えています。

この記事を書いたライターをご紹介

荒牧誠也 (アラマキセイヤ)

コラムサイト介護の三ツ星コンシェルジュ編集長

株式会社ベイシス 取締役シニア事業部長
1964年 大阪府大阪市生まれ
1988年 関西電力㈱入社。介護事業子会社 ㈱かんでんジョイライフや医療関係子会社 ㈱かんでん在宅医療サービスの設立や運営に従事。関西電力グループのメデイカル・ヘルスケア事業の企画業務や㈱京阪ライフサポートのM&Aに従事後退職。
2017年 関西電力㈱を退社。㈱ベイシスの取締役シニア事業部長に就任。

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