親の自宅を”空き家”にしないための民事信託の活用!!!
空き家のリスクとは?
4月26日に総務省が発表した住宅・土地統計調査によりますと、2018年10月時点の全国の空き家数は846万戸。
国内の住宅総数に占める空き家率は過去最高の13.6%にのぼり、地方だけでなく、東京や大阪などでも空き家率は10%を超えています。
空き家になる原因は、
・少子高齢化の進展。総住宅数が総世帯数を上回ってきていること。
・新築志向が強いことによる中古住宅の流通量が少ないこと。
・所有者の高齢化に伴い、所有者の介護施設等への入居。
等が考えられます。
空き家を保有するリスクに関して、所有者が承知しておく必要があるのは次の2点です。
・空き家の失火、不審者の住みつき、庭の樹木による隣家への迷惑等による損害賠償責任
・固定資産税、火災保険、水道・光熱費、修繕費等の維持費の負担
空き家の取得経緯の1位は「相続」。半数以上を占めます。
田舎で暮らす親の家を相続した場合、ほぼ全てが空き家になってしまうのは自明の理。
2015年には「空家等対策特別措置法」が施行され、行政が「特定空き家等」と認めたものは、立ち入り調査や指導、勧告等を可能とし、場合により代執行や強制執行も可能とする等、空き家に対する対策を各行政が実施しています。
空き家対策のひとつとしての民事信託の活用
親御さんの持ち家を空き家にしないための最善の対策は、空き家を”相続”してしまうまでに対策を行う事。
最近注目されているのが、「民事信託」です。
実家で独居されている親が介護施設に入居する場合、愛着のある家を手放すことができず、結果的に放置してしまい、空き家となってしまう場合がほとんど。
こういう事態を防ぐために、実家の名義を「信託」という形で信頼する子供に移し、お子さんに実家を預ける形とし、信託財産の売却、管理、処分等の権利を設定。
信託における受託者であるお子さんは、親(委託者・受益者)のために実家を売却する等によって得た代金を親の介護に使用。
この場合、名義を移す際の登録免許税と名義を移した年の固定資産税は課されますが、不動産取得税や贈与税は課税されません。
名義が変わったことにより、親が認知症を発症しても、実家をリフォームし賃貸に出したり、売却することが可能となり、介護施設等の支払いに充てることが出来ます。
認知症になってしまったり亡くなると時期を自分で決めることは出来ません。
民事信託をはじめとする対策を怠れば、愛着のあるご自宅が空き家となってしまい、お子さんに財産を残すどころか、重荷を残すことになりかねません。
親は思い出のある家を手放すのは嫌がりますし、最期は自宅で迎えたいと思いがち。
でも、具体的な対策を早め早めに行うことは大切です。
そのために一番大事なのは親子間のコミュニケーション。
亡くなってからの”争族"を回避するためにも実家の「民事信託」の活用をお勧めします。
国交省資料より引用。福岡県青年司法書士協議会作成パンフ
地元の専門家の活用を
空き家を保有してしまった場合はどうすればよいのか。
家は2年間人が住まないと売却が難しくなると言われています。
対策としては、「売却する」「人に貸す」「自分たちで利用する」の3点が考えられます。
ただ、売却するにも古い建物を解体して更地にするには解体費が必要ですし、リフォームするにも費用負担が発生します。自分たちで住める場所なら良いのですが、利便性等を考えると、そう簡単に引越し出来るものではありません。
結局頼りになるのは「地元」。
地方自治体が運営する「空き家バンク」や地域の売却・賃貸に強い地元の不動産会社の活用等、空き家の処分、利活用に知見を持った専門家に、早めに相談することが重要です。
最近では、神戸市等の都心の政令指定都市でも空き家が問題となり、様々な対策を行っていますので参考にして下さい。