緩和ケア病棟ってどんなところ?①
緩和ケア病棟ってどんなところ?①
「医師×福祉×経営」で感じたことを発信します、レギュラーコラムニストの柏木です。
今回から私が仕事をしていてよく聞かれる質問である、緩和ケア病棟についてお話ししたいと思います。
名称について
まず最初に、緩和ケア病棟に関連した名称について述べます。
なぜかというと、ここは非常に混乱しているからです。
もちろん、定義や実際の運用についても、色々曖昧な面がありますので、必ずしも正確に理解することを目指す必要はありません。
「緩和ケア病棟」とは、専門的な緩和ケアを提供する入院病床のことです。
当然、入院施設を有する医療機関の中に設置され、その開設には届け出が必要となります。
一般的に病院には施設要件というものが決められており、例えば、「緩和ケア病棟なら、部屋の広さはこのくらいで、専門職の配置はこのくらいの基準を満たす必要があります」といった具合のルールがあります。
そのため緩和ケア病棟はこれらの基準を満たすように設計、人員配置、運用されています。
一方、読んでおられる方からは、「ホスピス」という言葉の方が馴染み深いかもしれません。
実際、インターネットで「緩和ケア」と検索すると、様々な医療機関のホスピスのホームページが羅列されると思います。
結論から申し上げると、この「ホスピス」と「緩和ケア病棟」は多くの場合同じものを意味しています。
つまり、「ホスピス」も「緩和ケア病棟」と同様に、入院で専門的緩和ケアを提供する医療機関です。
なぜ、同じものにも関わらず、別の呼び名で呼んでいるのでしょうか?
名称が異なる経緯
これには歴史的な要因もあり、少し混乱しているようです。
もともとホスピスとは、「ホスピスケア」という言葉から来ているものです。
ホスピスケアというのは、痛みといった身体的症状のみでなく精神・心理・社会的なことなどを総合的に捉えケアを行うというものを意味します。
全人的なケアと表現されることもあります。
以前、緩和ケアについて解説した文章で示した通り、これはまさしく緩和ケアで行おうとしているものです。
なぜか日本の緩和ケア病棟は「ホスピス」という名称を使って来た経緯があり、まるでホスピスが「療養場所」のような印象を与えて来ましたが、「ホスピスケアという全人的にケアするという考え方に基づくケア」というものが正しい理解になります。
そのため、厚生労働省など医療機関の機能を定義したり、診療報酬や施設要件を議論・公表する文書にホスピスという言葉は出て来ません。緩和ケア病棟という名称が使用されています。
ただ、実際には「当院の緩和ケア病棟はホスピスと呼んでます」という施設は多いので、この細かな違いを読者の皆さんが常に意識する必要はありません。
緩和ケア病棟はどんなことをしているの?
次に、緩和ケア病棟でどのようなことをしているのかについて述べて行きます。
ここも、各施設で標準的に行っていることもあれば、施設ごとで異なる部分もあるので、あくまでも一般論として捉えてください。
①専門的な症状緩和
まず、症状が強く和らげるのが困難な症状に対する、専門的な症状緩和を行っています。
医療はどの分野も、どの医療者でも広く対応することが求められる領域と、専門性が高く専門家が対応する領域があります。
緩和ケアにおいても同様で、ある程度経験のある専門家でないと対応しにくい問題というものがあります。
緩和ケア病棟は対応に慣れた医療者が専門的に対応しているので、一般的な対応では対処困難な症状に対する対応をできる体制をとっています。
②一般的な入院施設と少し異なるケア
ここはイメージが湧きにくいかもしれません。
面会や持ち込み物の制限が少なく、一般的な入院施設よりも自分らしく過ごすことができるようにしています。
例えば、節分の豆まきといった季節ごとのイベントや、コンサートなどを行っている施設が多いです。
通常、入院というと病気の検査や治療が有線で、そこに患者・家族が合わせるという光景が一般的です。
病院のスケジュールに自分が合わせる必要があるのですね。
一方、緩和ケア病棟は、病気の治療のみでなく、病気がある中でも過ごしたい過ごし方に近づくように支援する場であることから、一般的な入院施設よりも過ごし方の自由度が高いことが通常です。
ちなみに、先ほどのようなイベントなどは、入院施設だから特別なことのように感じますが、介護施設などでは非常に多く取り組まれています。
そう言った意味では、入院施設よりも、少し介護施設や在宅に近いケアを提供しているイメージかもしれません。
結び
今回は、緩和ケア病棟の一般的なことについて、少しだけ解説しました。
次回以降、より詳しく見ていこうと思います。
暑い日が続きますが、熱中症に注意して過ごされてください。