特別養護老人ホーム(いわゆる「特養」)って本当に不足しているのか?
特養整備、用地・人材が壁
7月30日の日経新聞に、「特養整備、用地・人材が壁」という大きな見出しの記事が掲載されていました。
記事の内容は以下のとおり。
「要介護度の高い高齢者を主に受け入れる特別養護老人ホーム(特養)の整備が停滞している。需要は高止まりするが、土地不足や人材確保の難しさなどから、2015~17年度の新設数は計画の7割の4万5千床にとどまった。自治体によっては将来の事業継続の難しさや保険料上昇などを懸念して整備を抑えるほか、特養以外の受け皿充実を急ぐ動きもある。」(※1)
という内容でした。
特に都心部での整備が進んでいないようで、介護報酬の引き下げや要員不足による人件費高騰で、事業者に収益悪化懸念が広がっていることも原因であるようです。
都心の不動産バブルでの地代の高騰、建設費の高騰、人材不足、加えて介護報酬の削減、、、、、。
特養経営者にとっては頭の痛いことばかり。
知り合いの社会福祉法人の理事長に話を聞いても、「国の相次ぐ制度改定に加え、投資費用増で、新たに開設するなんて考えられない」と言ってます。
このままの状況が続くと、今後、新たに特養を都心部で開設するのは本当に難しそうです。
本当に不足しているの?
でも、ここで一つの疑問があります。
本当に特養は不足しているの?
最近、自身で実施する「親の介護に関する講演会」の時に多い質問が、
「親を特養に入れたいんだけど、特養って何万人待ちなんでしょう?特養のうまい入れ方があれば教えてほしいんだけど。」ということ。
確かに、ネット上の介護データベースで見ても、どこの自治体においても、特養は満床で、待機者も多い施設では千人超え、少ない施設でも数十人という表示となっています。
この数字を見たり、マスコミの論調で、「特養不足、特養不足」と言われている報道を見て、特養入所をあきらめてしまう人も多いよう。
ケアマネさんに特養入所を打診しても、家の付近の特養に問い合わせをしてくれるようですが、「近所の特養さんは満床のようです。」との返答が多いため、「やはり特養入所は難しい」となってしまうようです。
でも、先述の理事長や、特養関係者に話を聞いてみたり、お客様に頼まれて問い合わせをしてみると、確かに満床の事業所も多いですが、待機者は数人というのが現実。
「大阪市内でも空いている事業所が多いよ。」
「今、空床がありますので、すぐに見学に来てください。」
という答えが意外に多いのも事実です。
特に、入所基準が要介護3以上になってから、この傾向が拡がりつつあるよう。
満床でも、要介護3以上の利用者ばかりだと、長期入院が多くロングステイを実施している施設も多いのが現実です。
マスコミの論調を鵜呑みにして諦めるより、まずは数多くの特養に、自身で問い合わせてみては如何でしょうか?
結構、都心部でも空いている特養がありますよ。
一番困っているのは、要介護2までの要介護者を抱えた老老介護のご家族
今の国の介護保険制度は、要介護2までは在宅で、要介護3以上は施設でと切り分けています。
しかし、現実は、老老介護で要介護2の認知症家族を抱え、日々の介護に疲れ切って助けを求めている家族が多いのが現実。
そういう家族の受け皿になっているのが、低価格型の民間施設。
サービス付高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームがその代表格です。
最近は、都心部では、むしろこちらの方が不足気味といっても過言ではありません。
国の補助金を受けて豪華な設備を備えている特養に空床が目立ち始め、低価格に抑えるために設備等があまり豪華でない民間施設が不足し始めてきている、、、、、。
何とも不可思議な現象があらわれつつあるのが現実です。
介護の世界は、公的保険の影響をもろに受けるため、3年に一度の報酬改定で大きく変わります。
一般の方が、その動きについてこれるわけもなく、結果的にミスマッチが多いのが現実です。
親の介護でお困りの場合は、まず、担当のケアマネさんや我々のような事業者に気軽に問い合わせしてみるのが一番の早道です。
※1
日本経済新聞 2018年7月30日 朝刊
「特養整備、用地・人材が壁 15~17年度、計画の7割」より引用。
記事URL:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33506530X20C18A7ML0000/