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「なるべく残業して稼ぎたい」 特定技能外国人アンケートに見る「働き方のホンネ」

 ある大手人材情報サービス会社が2月24日、日本で特定技能1号として就労している外国人を対象に実施した、就労意識に関するアンケート調査の結果を発表しました。
今回は、この結果を元に、特定技能を含めた外国人人材を上手に採用・活用していくポイントについて考察します。

 この調査は2023年1月にベトナム・ミャンマー・インドネシア・ネパール・スリランカ国籍保有者を対象に実施したもので、356人が回答しています。

まず「特定技能になる際に重視したこと」(複数回答)では、「税金などを引いた手取り額」という回答が最も多く、以下「残業が多い」「家賃補助や生活用品の提供制度がある」と、「収入・お金」に関することが続きます。「仕事内容」は、「通勤が楽」の次で、全体の5番目となっています。
 このことからも、当人の意識は「少しでも多く稼ぎたい」が最優先であることが伺えます。調査を行った会社によると「残業時間が多い仕事に人気が集中する傾向がある」そうです。決して「介護をしたい」「介護に興味がある」わけではありません。身も蓋もない言い方ですが、介護事業者が好んで口にする「世の中に必要とされる仕事」「社会貢献」「想い」などというのは、正直なところ彼らにとっては「どうでもいい話」と言えます。

介護業界では、近年ICT導入などによる業務効率化が徐々に進み、求人に際して「残業ゼロ」「ワークライフバランスの充実」を大きく打ち出すところも増えています。しかし、特定技能(技能実習生もそうかもしれませんが)の募集に対しては、それは逆効果になるかもしれません。「やってもらいたい仕事が山ほどある」といった形でのアピールが重要になるのではないでしょうか。
 
 ただし、言うまでもありませんが、これは「残業代が適切に支払われる」場合です。外国人労働者に対して給与や残業代を適切に支払っていなかったとして、雇用主が訴えられたり摘発されたりするケースが散見されます。日本人労働者ならば多少のサービス残業を「仕方ない」と許容することもあるかもしれませんが、考え方がシビアな外国人労働者の場合は裁判などに訴えて来る可能性が高くなります。

 また、これとは逆に「少しでも多く稼ぎたいから」と時間外労働の上限を上回って働きたがる人が出てくることも考えられます。こちらも雇用主側が非を問われる可能性がありますので、注意が必要です。

 次に「何か困りごとがあったときに最初に相談する相手は誰か」を聞いてみたところ、1位は「登録支援機関」でした。以下、「友人」「職場の同国出身者」「親族」の順で、「日本人の上司や先輩」は5位でした。「悩み事などの微妙なニュアンスを日本語で伝えることが難しいため、日本人は相談相手になりにくい」という現実が見て取れます。この点からも、母国語で会話ができる仲間がいることが、彼らにとって非常に安心できる就労環境であるといえます。どのような雇用・就労形態でも構いませんので、現在外国人が働いている事業所は、その点を前面に出してアピールすることが特定技能人材の確保につながると言えます。

 なお、回答者の47.7%が「特定技能1号修了後も、何らかの形で日本に残りたい」と回答しています。彼らが「働きやすい・仕事をしやすい」と思える環境を整えれば、永続的な就労も期待できます。それに向けて社内体制などを整えていくことも重要です。
例えば、ある介護事業所では、日本語能力がまだ十分でない外国人スタッフ向けに、事業所内に掲示している指示や注意書きなどをピクトグラムに変更しています。こうした対応が今後求められていくのではないでしょうか。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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