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ダブルワーク流行りで「夜勤専門」が人気に? 勤務時間工夫で主婦層の確保も可能

 特養や有料老人ホームにおける働き方のひとつとして「夜勤専門」があります。そして、この働き方を好む介護スタッフが最近増えているそうです。
 理由としては
①早番、遅番、日勤、夜勤をこなすという働き方だと、睡眠時間などの生活リズムが崩れやすく、身体への負担が大きい
②入浴介助やレクリエーションなどをしなくていい
③基本給や手当てが高い
④業務中に待機している時間が長いので、その間に資格取得などの勉強ができる、などがあります。

また「ダブルワークなど、最近流行の働き方と相性がいい」ということもあげられます。もっとも、昼間にフルタイムで働いている人は、施設夜勤との両立は時間的・体力的に難しいものがあるでしょうから、昼間はパートタイマーやフリーランスなどのようにスケジュールをある程度自分で調整できる仕事をしている人が多いようです。例えば、先日知り合った夜勤専門スタッフは、昼間はミュージシャンとして活動しているとのことでした。

 では、こうした夜勤専門スタッフを活用する場合には、職場としてどのような点に注意が必要になのでしょうか。
まず「学びの機会が少ない」ことをしっかりと認識する必要があります。コロナ禍が収束に向かう中で、以前のような対面式の集合研修や社内行事を復活させる介護事業者が徐々に増えて来ています。しかし、夜勤専門スタッフは、そうした場に出席できないことが大半です。また、業界団体などが主催する外部研修・セミナー、介護関連イベントなどへの参加も困難です。このため、介護に関する知識や技術が古いままアップデートされていない可能性があります。

また、社内行事などへの参加の機会が少ないということは、職場の理念や経営方針などが本人に十分に浸透せず、法人・事業所への帰属意識が低くなりがちです。その結果として離職率が高くなる可能性を考えなくてはなりません。夜勤専門スタッフに対しては、別途研修の機会を設ける、引継ぎやカンファレンスなどの際に意識して時間をかけてコミュニケーションをとる、などといった対応が求められます。

 また、先ほど述べたように、夜勤専門スタッフはダブルワークをしているケースが少なくありません。そして文中で紹介した人のような、昼間の仕事がアーティストなどといった場合には、金髪・長髪にしていることもあります。介護現場では「あまりに明るい髪色は禁止」というルールのところが多いかと思いますが、これをある程度柔軟に運用しないと働くことが難しい人も出てきます。しかし「夜勤専門スタッフだけ金髪可」では、ほかのスタッフから不公平との声が上がる可能性もあります。職場にとっては匙加減が難しいところではないでしょうか。

 さて「夜勤専門」というと、「育児との両立が難しく、小さな子供がいる女性は就きたがらない」というイメージがあります(このイメージ自体が「育児は女性がするもの」という先入観にとらわれていますが…)。しかし、雇用する側のアイデア次第で、比較的若い主婦層を採用することも可能になります。

 ある有料老人ホームでは、これまでの夜勤形態に加えて、「22時~翌朝7時まで(仮眠無し・休憩1時間)」という「短時間夜勤制度」を新たに設けました。この時間帯なら、職場と家が近いスタッフであれば、夜は子どもたちの食事や入浴を済ませてから出社でき、朝は学校に行くのを見送ることができます。実際に「『子どもたちだけを家に置いておく』という時間が生じない」ということで、小学校低学年ぐらいまでの子どもを持つ母親層から「夜勤専門で働きたい」という応募が増えたそうです。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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