介護保険制度について

検証 「介護保険の見直しに関する意見案」 その③

地域包括ケアセンターの業務見直しも

今回も12月5日に公表された社会保障審議会介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」(以下:意見案)について詳しく見ていきましょう。今回は「要介護認定・ケアマネジメント」についてです。

 まず、介護を必要とする当事者や家族にとって、介護保険サービス利用の最初の窓口になることが多いと思われる地域包括ケアセンター(以下:センター)については、「介護ニーズの増加に適切に対応するために業務量負担の軽減を図る必要性がある」と述べています。具体的には、保険給付として行う介護予防支援については、「その実施状況の把握を含め、センターの一定の関与を担保した上で、居宅介護支援事業所に介護予防支援の指定対象を拡大することが適当」としています。
 
 また、センターの主業務である総合相談業務については「居宅介護支援事業所などの地域の拠点のブランチやサブセンターとしての活用を推進するとともに、センターが行う総合相談支援業務との一体性を確保した上で市町村からの部分委託等を可能とすることが適当」としています。

 さらに人員配置については、いわゆる「3職種」の配置を原則としつつも、複数拠点で合算しての配置など柔軟性を持たせることの必要性についても言及しています。加えてセンターの業務についてはICT活用などを図って職員の負担軽減を図るべき、とも指摘しています。

また、保険者が行う要介護認定については、2021年度上半期の実績データで、申請から要介護認定まで平均で36.2日かかっているという現実を「要介護認定の遅れは利用者にも事業者にも影響を与えるものである」と問題視した上で、「保険者が要介護認定を速やかにかつ適正に行えるための仕組み」の必要性について言及しています。
 
 そのための具体的な施策としては「審査においてAIやICTを活用する」「現在、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえて実施している認定審査会のICT活用を、今後のコロナの状況に関係なく継続する」「他の保険者での審査の簡素化事例を収集・周知する」などを掲げています。
 ただし、審査の簡素化については、「公正な立場にある専門家の合議による審査を行わない場合、要介護認定の公平性・医学的妥当性を確保することが困難になる」「更新申請に関する有効期間の更なる上限拡大については、有効期間の上限を拡大した2021年度の制度改正の影響や、保険者の事務負担の軽減に資する効果を引き続き検証する必要がある」などの理由から、慎重に考える必要があるとも指摘しています。

今回の介護報酬改定では結局盛り込まれませんでしたが、「ケアプラン作成時に1割の自己負担を導入するべきかどうか」が議論されていました。このようにケアマネジメントのあり方も、報酬改定の度に大きなテーマとなっています。

 意見案では、「ケアマネジャーの質・中立性の向上が重要」との見方から、以下のような点を推進もしくは検討していくべきとしています。①オンライン化の推進など、研修を受講しやすい環境の整備、②法手外研修やOJT等による専門性の向上、③ケアプラン作成におけるAI活用。
 ケアマネジャーについては「制度スタート当初はともかく、今は医療職出身の受験者が殆どいない」「特定の介護保険サービスについてしか知識がない人が見受けられる」など、その質について疑問視をする声もあります。こうした中で、今後、制度自体に何らかのメスが入る可能性も十分に考えられます。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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