介護施設のちがい

「高齢者だけが住む建物は不自然」との声 高齢者と若者の混成コミュニティーとは

高齢化率日本一の自治体とは

日本の高齢化率(65歳以上が総人口に占める割合)は2021年9月時点で29.1%です。
では、最も高齢化率が高い自治体では何%程度だと思いますか?

答えは群馬県の南牧村で、2020年の国勢調査では高齢化率65.2%です。
局地的には高齢者しか住んでいない限界集落は日本各地にありますが、
独立したコミュニティーとしてしっかり機能するとなると、
全体のうち4割程度は高齢者以外のメンバーが必要になると言えそうです。

高齢者住宅には、当然ながら高齢者しか住んでいません。
もちろんスタッフはいますが、人員配置が手厚くても入居者6:スタッフ4という比率の物件は少数です。

そして彼らは住んでいるわけではありません。
つまり、高齢者住宅をコミュニティーとしてみた場合に「高齢者しか住んでいないというのは、非常に不自然だ」という考え方ができます。

介護業界の中には、こうした考えに基づき
「高齢者と高齢者以外が同じ建物に住む」という取り組みを行うケースが少なくありません。

サ高住と一般賃貸を同一階に

九州にある有料老人ホームは、
建物の中にファミリー向けの居室を設け、有料老人ホームに何の関係もない家族に賃貸しています。

この部屋は、ホームの中を通らず出入りできるドアの他に、
ホーム内の廊下に直接出るドアも設けられています。

つまり入居者の希望などに応じて、ホーム入居者やスタッフと日常的に交流することが可能になっています。

首都圏のサービス付き高齢者向け住宅は、一般の賃貸マンションを併設しています。
こうした場合、普通は「低層階はサ高住・高層階は一般賃貸」などとフロアで用途を分けますが、
ここではサ高住・一般賃貸の居室が混在しています。

例えば「201号室と203号室はサ高住だが、202号室は一般賃貸で若い人が住んでいる」といった具合です。

これによりサ高住入居の高齢者と一般賃貸入居者が同じエレベーターに乗ったり、
廊下ですれ違ったりすることになり、自然に挨拶を交わすなどのコミュニケーションが生まれます。

首都圏にある介護事業者が運営する賃貸アパートも、高齢者と若い人が同じ建物に住んでいます。
部屋には見守り用のセンサーを設置するなど高齢者が住みやすい仕様にしましたが
「高齢者向けの住宅」ではなく「若者が借りるスペックの物件を高齢者も借りる」という点にこだわっています。

なお、若者は「毎日高齢者に声がけをする」などコミュニティー作りに役立つ活動をすることで、
家賃が半額になるというメリットがあります。

この物件を運営する介護事業者の社長は
「こうした取り組みで、高齢者に『若い友だち』ができる。そのことが高齢者には刺激となり、結果的に介護予防や認知症予防になる」とメリットを語ります。

もちろん、若者にも、料理を教えてもらうなど高齢者の友だちができることには多くのメリットがあります。

実は、こうした「若者と高齢者のコミュニティー形成」はヨーロッパでは以前より行われていました。

フランスでは、パリなど都市の中心部に家を借りたい学生と、
そこに家を持つ独居高齢者をマッチングし、ルームシェアをさせるという仕組みがあります。

「一緒に食事をするか否か」などにより学生が負担する家賃額は異なり、
自分の生活スタイルや負担できる金額に応じて「好みの距離感」を選択できるのが特徴です。

外部との接触の多い若者やファミリーを高齢者と一緒に住まわせるのは、
コロナ禍中という点を考えると難しい面もあります。

しかし、介護に関して自助・互助の考え方が求められるなかで、
こうした新たな形のコミュニティーも増えていくことが考えられます。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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