医療と薬について

これからの高齢化社会について考える②

食と環境

高齢者の衰弱を早める要素は栄養

高齢者の体が弱り、認知機能が低下し、寝たきりになって亡くなるプロセス自体は、病気ではなく自然なことです。
だから患者さんにとって一番良い形でその状況を過ごせるように支援していくのが我々の仕事。

多職種が連携して食事のケア、リハビリの指導など日々の支援を行うことが、予防医学としてとても重要です。
当院ではPOSの訪問リハビリができるため、それらにアプローチすることができます。
(※POS=Problem-oriented system 患者の問題が患者のQOLを大切にしながら最も効果的に解決されるように、いつも全人的立場から問題を取り上げ、考え、かつ行動する一連の記録)

特に食べることは、生きるためにも、生活を楽しむためにも大切なことです。
若い人の老化スピードを左右するのは動脈硬化なのですが、高齢者の衰弱を早める要素は実は栄養状態。
ところがあるデータによると、在宅の患者さんのうち49%が低栄養状態で、40%がそのリスクが高い状態に置かれており、合計約90%の方々が栄養状態に問題があります。

それなのに歳とともに食が細くなるのは当たり前と思われ、回復可能な患者さん達が見過ごされている可能性があります。

動脈硬化とは動脈(血管)が硬くなり、老化することです。
全身の臓器は血管の塊なので、血管が老化すれば当然、臓器も老化します。

動脈硬化を進める要因は喫煙や糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満など様々で、若い人達は不摂生しないよう努力することが長生きに繋がります。
しかし高齢者の場合は既に加齢が進んでいますから、基本的に動脈硬化も進行した状態です。
ですから高齢者は不摂生しないよう気をつけるよりも、健康状態を左右する栄養状態に注意すべきです。
「食べ過ぎては駄目」「脂を摂っては駄目」「濃い味はダメ」という栄養指導から、「しっかり食べて太ってください」という指導を選択肢にいれないといけません。

高齢者医療、特に在宅医療は、生活優先です。

治療優先ではなく、生活の継続を優先するという価値観のなかで、患者さん本人が望む生活を続けるためにどうするか。
普通の成人と違って高齢者は個別性が高いので、個別性に対応しないと成果は出ません。
全ページに記したように、高齢患者さんはその精神性からなかなか本音を言えなかったり、無意識に優等生を演じたりするものです。
そういう患者さんから本当のニーズを引き出すにはコミュニケーションスキルが必要です。

なんでも医者に話していいんだと思っていただくことが大事だと思っている

対話の中から上手くニーズを引き出す。
忘れられがちな患者さん中心の医療を提供したいと考えています。
 

全人的医療

臓器だけを診て治療することも大切だが、高齢者の場合は内科だけではなく、その他すべてを網羅しないといけません。
そして、患者のバックグラウンドも考慮しないといけません。

それを私は市大総合診療センターで学びました。
これだけ総合診療が叫ばれ、スーパーローテート研修制度ができた時代にも、急性期病院では病気の治療が重んじられています。

従来の医学教育や医療制度の落とし穴。
患者を総合的に看る病院は少ないのが現状です。
また、国の制度上、早期に退院を迫られるため、科をまたいで治療する病院は少ないのも現状。

また高齢者救急はほとんど軽症か中等症。
社会的な意味合いの強い入院も多い。

国もサブアキュート患者を地域包括ケア病棟でしっかり管理するよう求めています。
当院のような、亜急性期病棟をもつ在宅療養支援病院・全人的医療を実践する病院がこれから求められてくると考えます。

当院は急性期と違い小回りの利く病院。
在宅患者が困ったときに使いやすい病院である。在宅と入院がつながっていることは大きなメリットです。

病院ではどうしても医療が優先される

老健施設での経験
患者さんの心に寄り添うケア
介護士の行うパーソンセンタードケア
(※認知症をもつ人を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行おうとする認知症ケアの一つの考え方です)
夜の居酒屋メニューとか、敬老まつり、イベント、身体拘束なし

その精神を病院でも実現したい

病棟で認知症患者と一緒に歌を歌ったこと
甲聖会にきたら、患者さんが輝く、スタッフも輝く
そんな場所にしたいと考えています。

2話に亘りお付き合いいただいてありがとうございました。

地域の皆さまに信頼される病院を目指して

理念
地域のみなさまに信頼される病院になります
かかわった人すべてを幸せに
輝いて生きる

基本方針
チーム医療
医療従事者の力を併せたチーム医療を展開し、安全で信頼される医療を提供します。

職員の幸福
職員の成長と幸福を達成するため、働きやすくやりがいのある環境を追求します。

在宅療養支援病院としての責任
地域に根ざした在宅療養支援病院として、関連機関と連携し責務を全うします。

病院経営の安定
医療法人甲聖会の一員として、経営努力をたゆまず続け社会貢献に努めます。

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この記事を書いたコラムニスト

甲斐沼成 (カイヌマシゲト)

医療法人甲聖会理事長

総合内科医

当院は、父・甲斐沼正が1978年に診療所として開院して以来40年、ここ吹田市江坂の地で地域の皆さまに育てていただき、現在に至ります。
地域社会のみなさまとの交流と、敬意をもって患者さまおー人おひとりに寄り添う医療に努め、2007年に財団法人日本医療機能評価機構より認定証を取得。2017年に在宅療養支援病院となりました。
さらに、2018年2月に「地域包括ケア病床」を開設しました。
地域包括ケア病床は、亜急性期から回復期の患者さまを自宅や施設に復帰する手助けをする病床です。
地域包括ケア病棟・療養病棟の運営に力を注ぎ、また在宅療養支援病院としての責任を果たすため日々邁進しております。

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