インフルエンザシーズン到来②インフルエンザワクチンについて
「医師×福祉×経営」で感じたことを発信します、レギュラーコラムニストの柏木です。前回に引き続き、インフルエンザの話題です。
ワクチンって何?
さて、インフルエンザの話題で大きな関心を引くのがワクチンを打ったほうがいいの?問題です。
皆さんは打たれましたか?
まずは一般論のおさらいです。
インフルエンザワクチンの予防接種は、13歳以上では1回の接種とされています。
2回打つ方もおられますが、特別な医学的な理由がない限りは1回の接種で十分とされています。
これは、研究により、1回接種の人と、2回接種を受けた人のインフルエンザに対する抵抗力を研究したところ、1回と2回は同等だったというものに基づいています。
この「抵抗力」というのは、「抗体」と呼ばれる「インフルエンザウイルスをやっつける成分」のことをさします。
ワクチンというのはオーソドックスには、この抗体を作ることを目的として接種しています。
「ワクチン」をどう捉えるか?
さて、このワクチンという代物、各分野で物議を醸します。
実際に効果があるのか?費用と見合うのか?副作用と見合うのか?などなど、色々な評価軸で、それぞれの立場から賛成・反対の意見が入り乱れるのです。
これを読んでいる方の中にも、もしかしたら「ワクチンなんて打たないほうが良い」なんて意見をインターネットなどで聞いたことがあるかもしれません。
ワクチンを取り巻く状況は非常に複雑なので、ここで全てを述べることはしません。
ただ、日本で一般的に手に入るワクチンは、有効性と防ぎ得ない副作用などのデメリットを比較した時に、国民全体に対するメリットが上回ると評価されているものであるということを理解いただければと思います。
予防接種しましたか?
で、結局のところ、皆さんはワクチンを接種しましたでしょうか?
「もちろん、毎年打ってますよ!」という方もおられるでしょう。
私が外来診療をしていて、インフルエンザワクチンは基本打つ方針としている方のほうが多いと感じます。
一方、次のような意見や質問もよく聞かれます。
「今までインフルエンザにかかったことはないんですが、やっぱりワクチンを打ったほうがいいですか?」というものですね。
そして、「インフルエンザワクチンを毎年打ってるんですが、毎年インフルエンザにかかります。もう打ちたくありません。」という意見も耳にします。
ワクチンを打つことは、「可能性を下げること」
さて、こうやってみると、皆さんからは何が真実かわからなくなってしまいますよね。実は、一人一人の患者目線で言うなら、それぞれの感想はそれぞれ真実の一面を表しています。
インフルエンザワクチンの効果は、「ワクチンを接種しなかった人と比較して、インフルエンザになる割合が60%程度 低下する」とされています。
下の厚生労働省のホームページをご参照ください。
こういった数値を見る時には注意が必要です。
これは、患者を少なくとも数百人単位でワクチンを打ったグループと、打たなかったグループに分けて検証していることが通常だからです。
集団を概観すると、ワクチンを打つことはインフルエンザを発病する可能性を下げるのですね。
一方、一人一人の個別ケースとしては、ワクチンを打っても発病する方が当然います。
そして、その方にとっては、「ワクチンを打っても発病したじゃん!」が転じて、「ワクチンって意味あるの?」に飛躍してしまうのだと思います。
よほどの医学オタクでない限り、自分がインフルエンザを発病した時に、「いやいや、自分はたまたま発病したけど、集団で見た時には発病している人は減っているはず」なんて考える人は、多分いないので。
ワクチンの効果を、集団と個人に分けて考える必要があると言う点が伝わったでしょうか?
じゃあ、自分は打たなくていいやとなるかと言うと、そうではありません。
集団の中には、健康な方もおられますが、持病を持っていたり、高齢であるといった方々が含まれます。
インフルエンザにかかることで重篤な影響が出るのは、まさしく、そういった方々です。
ワクチンの効果が集団として発揮されれば、そのような方々がインフルエンザにかかる可能性も下げることが可能です。
こういった発想を「集団免疫」と呼びます。
ですので、インフルエンザワクチンを接種すると言うのは、自分の発病を防ぐと言う意味だけでなく、集団の中でインフルエンザを発病すると致命的な影響に発展する方々のためでもあるのを忘れないでください。
まとめ
今回はインフルエンザ、特にワクチンについて述べてきました。次回あたり、このインフルエンザの猛威も少し落ち着いているのを祈りつつ、次回はインフルエンザの治療薬についてお話しします。