介護保険制度について

検証 「介護保険の見直しに関する意見案」 その④

都道府県が介護業務の効率化に関するワンストップ窓口を設置

今回も12月5日に公表された社会保障審議会介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」(以下:意見案)について詳しく見ていきましょう。今回は「介護事業者の生産性向上」についてです。

 厚生労働省の試算では、今後増加する介護サービスニーズに対応するには、年間で約5万3000人ずつ介護職が増えていく必要があるとされています。しかし、日本の生産年齢人口が年々減少し続けていることや、介護業界の有効求人倍率が他産業に比べて高くなっている現実などを考えると、その達成は非常に厳しいと言わざるを得ません。
 そうした中で、ICTの活用や文書削減などによる生産性の向上・業務負担の軽減が介護業界にとって大きなテーマとなっています。これらの点について、意見案では以下の様に述べています。

 介護現場の生産性向上には「ロボット・ICT機器の導入」「介護人材の確保」「タスクシフトなど業務内容自体の見直し」など様々な手法が考えられます。しかし、それらの具体的な実践方法や、実践に際しての助成といった情報は、各所に分散されてしまっています。ただでさえ介護事業所にとっては、多くの雑多な情報の中から自分たちで活用できそうなものを探し出してくるだけでも大きな負担・手間となっていました。
 
 そこで意見案では「2023年度から、都道府県主導のもと生産性向上に資する様々な支援・施策を一括して網羅的に取り扱い、適切な支援につなぐワンストップ窓口の設置など、総合的な事業者への支援に取り組むことを目指すことが適当」との一文が盛り込まれました。これにより、介護事業者が生産性の向上に取り組みやすい環境を整えていきます。
 
 また、「社内にロボットやICT機器に詳しい人がおらず、導入しても使いこなせない」という介護現場の声もよく聞かれます。これについては「導入ノウハウを有する人材の育成とともに、こうした人材による事業所への伴走型支援が必要」と言及しています。

 介護現場の非効率性の一例として「介護福祉士などの介護の専門的知識・技能を持つスタッフが、介護以外の業務も行っている」という点があげられます。こうした中で、介護現場の業務を「介護職が行うべきもの」と 
「介護職が行わなくてもいいもの」に分類し、後者は「介護助手」などと呼ばれる人たちに担当してもらおうという「タスクシェアやタスクシフト」の動きが広がっています。
 
 これについて意見案では「さらに推進していく必要性がある」とし、そのためには「同じ職場で働く構成員としての介護助手の制度上の位置付けや評価・教育のあり方も含め、サービス特性を踏まえた導入促進のための方策を引き続き検討することが適当」としています。
 
 またその確保については「社会福祉協議会やシルバー人材センターなどとも連携しながら、特定の年齢層に限らず若者も含め幅広い年齢層を念頭に置きつつ、柔軟に対応することが必要」との見解を示しています。なお、幅広い層の人に積極的に参画してもらうためには「介護助手」という名称自体についても検討していく必要がある、といった意見も議論の中では出たそうです。

 また、「介護業界は中小・零細規模の事業者が大多数であることが、ICT機器など高額の投資が進まない要因のひとつにとなっている」という指摘もあります。これを受けて意見案では「介護の経営の大規模化・協働化により、サービスの品質を担保しつつ、管理部門の共有化・効率化やアウトソーシングの活用などにより、人材や資源を有効に活用することが重要である」としています。今後、介護業界のM&Aがさらに加速する可能性があります。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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