介護保険制度について

検証 「介護保険の見直しに関する意見案」 その①

機能が類似する介護保険サービスは整理・統合も

2024年4月の介護保険制度改正に向けた議論を進めている社会保障審議会介護保険部会は12月5日、これまでの議論をとりまとめた「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」(以下:意見案)を発表しました。
今回から4回にわたり、意見案の内容と、そこから見えてくる次期介護保険改正・報酬改定の方向性について検証します。

 意見案で掲げられた大きなテーマの1つ目が「地域包括ケアシステムの深化・推進」。これはここ数回の介護保険制度改正で必ず掲げられているテーマです。「誰もが住み慣れた地域で最後まで生活できること」を目指して介護や医療資源の整備を目指すことが地域包括ケアシステムの大きな目的でした。

 しかし、意見案では「都市部において介護ニーズの急増することが見込まれる一方で、既に高齢化のピークを迎えた地域では介護ニーズがピークアウトすることが見込まれる」と、地域の人口動態によって、今後の介護ニーズの見込みが大きく異なることを指摘しています。事実、地域によっては高齢者人口すら激減しており、「特養が半分程度しか埋まっていない」といった状況も散見されます。こうした状況を受けて「施設・サービス種別の変更なども含め、計画的にサービスを確保していく必要がある」と言及しています。

 さらに「単身・独居や高齢者のみの世帯の増加、介護ニーズが急増する大都市部の状況等を踏まえ、柔軟なサービス提供によるケアの質の向上や、家族負担の軽減に資するよう、地域の実情に合わせて、既存資源等を活用した複合的な在宅サービスの整備を進めていくことが重要である」「その際、例えば、特に都市部における居宅要介護者の様々な介護ニーズに柔軟に対応できるよう、複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの類型などを設けることも検討することが適当である」とかなり踏み込んだ表現をしています。

 これの具体的な動きといえるのが、2024年4月より「訪問+通所サービス」を新たな介護保険サービスとして創設することです。地域密着型サービスとすること以外は、名称・報酬などの細かい部分は未定ですが、介護事業者にとっては新たなビジネスチャンスとなることが考えられます。年明け以降の社会保障審議会介護給付費分科会などの議論の行方に注目しましょう。

 また、「機能が類似・重複しているサービスについては、将来的な統合・整理に向けて検討する必要がある」との一文が盛り込まれた点にも注目です。意見案では定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下:定期巡回)と夜間対応型訪問介護(以下:夜間訪問)を例に挙げています。

 定期巡回は2012年4月に創設されましたが、それに向けた審議会の議論の際にも「定期巡回があれば夜間訪問は不要になるのではないか。現状で夜間訪問の利用者数が少ないことを考えても、夜間訪問の廃止を検討すべき」との意見が委員から出ました。審議会の委員の1人が筆者に非公式にコメントしたところでは「厚生労働省に限らず、官僚は一度国の施策として開始したものを廃止することを極端に嫌がる。結果的に自分たちの施策の誤りを認める形になるから」とのことで、実際にその後10年以上夜間訪問は存続し続けました。

 しかし、今回の意見案で具体的にサービス名が挙げられた以上、将来の廃止・統合の可能性も否定できなくなりました。また、過去には審議会で「近年は『リハビリ特化型』をうたうデイサービスが増えており、『通所リハビリ』との違いが不明確になっている」との意見が出たこともあります。こちらについても今後何らかの動きがあるかもしれません。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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