介護以外について

スタッフ単独行動時の「私的行為」 どこまで認めるか?

送迎帰りのデイサービス車中 音楽はNG?

以前、利用者を自宅に送り届けて事業所に帰る途中のデイサービスの車が、窓を開けて大きな音でレゲエを流しているところを見ました。この行為を皆さんは、どう考えますか?また、皆さんの事業所ではこうした行為を禁止していますか?
「窓を開けて大音響」はどこもNGとは思いますが、「利用者もいないし、帰りぐらいは、自分の好きな音楽を流してもいい」と考えるか、「会社の車を運転している以上は業務。例え1人でも、勝手に好きな音楽をかけるのは禁止」と考えるかは、各事業者で違うのではないでしょうか。場合によっては同じ事業者でも事業所ごとにバラバラかもしれません。
デイサービスの送迎に限らず、通院介助など介護事業ではスタッフが事業所を離れて単独行動(利用者はいっしょのことが多いでしょうが)することが少なくありません。訪問系サービスでは勤務時間の殆どが単独行動でしょう。こうした際に、スタッフの行動をどこまで規制するかは意外と難しい問題と言えます。

水やお茶はOK、チョコやガムは?

1つ例を挙げてみましょう。
「デイサービスで利用者を送り終わって戻る途中でスーパーマーケットに寄って、夕食の食材の買い出しをする」のは、社用車の私的利用としておそらくどこの事業者でも禁止しているでしょう。では「送迎帰りに水分補給のためにコンビニエンスストアで水やお茶を買う」のはどうでしょうか?「スタッフの安全を考えて認めている」とした場合には、ジュースやコーヒー、飴やチョコレートなどの嗜好品の性格が強い商品の購入はどの様な扱いになるのでしょうか。「運転中に眠気を感じたので、ガムを買って食べながら帰ってきた」という行為を「業務時間内に私的な買い物をした」として注意できるかどうかは、判断が難しいのではないでしょうか。

「業務時間内は職務に専念する」ことを、どこの職場でも従業員に対して求めます。しかし、それが実際に厳格に適用されるかは、業種や職種で異なります。例えば、工場の製造ラインで働いている人や警備員などは休憩時間以外に持ち場を離れられないので私的な行動はまず不可能です。それに対して外回りの営業社員などは、カフェに行くなど比較的自由な行動が可能です。介護職は1日のスケジュールがきっちり決まっていますので、どちらかと言えば前者です。しかし、冒頭で述べた様に、業務で1人になるケースもあります。こうした際に「どこまで自由な行動を認めるか」をきっちり定めるかどうか、会社として判断する必要があるかもしれません。

「利用者のためを思って」の行動も

先日、介護事業者の社長・そこの介護スタッフと会食をしたとき、介護スタッフが「通院同行のときはユニフォームから私服に着替えている」と口にしました。社長はそのことを全く知らず、「勤務時間中は常にユニフォームを着用しなければならない」と窘めていました。しかし、当人は「ユニフォームだと、周囲の人に『ヘルパーに付き添ってもらっている』とわかってしまう。私服なら『家族と一緒』と思われるので喜ばれる」とあくまで、「利用者のためを思っての行動」を主張します。しばらく2人で議論していましたが、最終的には「自分が良かれと思っての行動でも、会社のルールを逸脱するのだから、事前に報告・相談するべき」ということで落ち着きました。
この様に、介護職の場合は「自分の欲求」よりも、「利用者のためを思って」という理由で独自の判断・行動を起こすこともあります。このため会社側で行動に制限やルールをかけると、「うちの職場は利用者本位でない」とスタッフが不平不満を持つ可能性も考えられます。独自の判断は事故などのリスクにつながる可能性などを説明し、スタッフに納得してもらうことが重要です。

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この記事を書いたコラムニスト

西岡 一紀 (ニシオカ カズノリ)

なにわ最速ライター

介護・不動産・旅行

介護系業界紙を中心に21年間新聞記者をつとめ、現在はフリーランスです。
立ち位置としてじ手は最もキャリアが長い介護系が中心で、企業のホームページ等に掲載する各種コラム、社長や社員インタビューのほか、企業のリリース作成代行、社内報の作成支援などを行っています。

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